Sランク冒険者認定試験(86)赤銅革命(4)
ウィスさんが自分の弟子で、マシロは自分ではなくキューちゃんの弟子であることを伝えると、なんとか事情を理解してもらえたようだ。
ちなみに自分が説明している間、拠点側ではライアがスライドショーで相関図を表示してくれていたらしい。
登場人物が4人しかいないのに相関図を使わないと理解してもらえなかったのは、自分の説明力不足だけが原因ではない・・・と思いたいところなんだけど。
「まあ、自分たちそれぞれの関係はどうでもいいとして・・・そろそろ本題に入りたいんだけど」
『チッシー! ライアに言われた通り『赤銅』について調査したら、怪しい噂がボロボロ出てきました、デース!』
『オンさん、私もソーダさんと一緒にお金の流れを調べてたんですけど、『赤銅』名義で武器を買い揃えていたり、用途不明のお金が他ギルドに流れていたりしました。 どうやら『革命』の準備を進めているという話は全く根拠がないというわけでもなさそうです』
ソーダさんとメリアさんが事前に調べてくれた情報でも、どうやら『赤銅』がきな臭いことになっていること自体は間違いないみたいだ。
別にシェフのことを疑っていたわけじゃあないんだけど、もしかしたら思い込みや勘違いの可能性もあったからね。
『そういえばメリアさん、ちょうどあれが使えるんじゃない?』
『ギルマス、あれはまだ調整中です。 いきなり実戦投入は・・・』
「いや、アウラ、メリアさん。 『あれ』ってなんのこと?」
『だからこそだよ! 今回は実験的にチシロさんとマテラちゃんに使ってもらうことにしてさ!』
『なるほど、それなら確かに。 もう少し慎重にいきたいと思ってましたが、これ以上の機会はないかもですね!』
「いや、だから・・・?」
だから『あれ』ってなんだよ!?
と、声を大にしてツッコミを入れたいけど、タイミングを見極めないとまたスルーされそう・・・。
『ヴァシー、メリっち! チッシーが困惑しているデス! ちゃんと説明したほうがいいと思うデース!』
『ああそうですね。 メリアさん、簡単に説明してもらってもいいですか?』
『はい、ギルマス。 えっと、オンさん、キューさん。 実は『黄金』は今、極秘裏に進めている計画がいくつかあるのですが、そのうちの一つに『諜報部隊を設立する』というものがあるんです。
私とソーダさんの伝手を使って無名な冒険者を集めて、今はソーダさんとギルマスが直々に鍛え上げているところです』
『そうだよ! 冒険者ランクは『ランク無し』だし、魔獣相手の訓練はあまりしなかったけど、対人戦の実力とか隠密行動の腕前とかは『Aランク相当』まで鍛えておいたよ!』
『チッシーは今回、その『諜報部隊』を好きに使ってくれてもいいデース。 絶対に役に立つはずデース!』
自分たちがあちこち旅して回っているうちに、『黄金』の拠点ではいろいろな計画が動いていたらしい。
この『諜報機関』もそうした計画の一つで、将来的には『黄金』専属みたいな形にするのではなく、フリーの情報調査機関として独立させて、『黄金』以外の中小ギルドにも活用してもらう計画などもあるらしい。
こうすることで何か問題が起きた時でも『黄金』に直接害が及ぶのを防げるし、ダブルスパイとして他ギルドへの潜入も行いやすくなるのだとか。
『現在、人員は10名いますので、オンさんとキューさんにそれぞれ5人ずつ割り当てます。 近いうちに接触させるので好きに使ってください』
「ありがとうでち! オンちゃん、なんかそれっぽくなってきたでち!!」
「わかりました、うまく協力できるように気をつけますね。 あと、キューちゃん、それっぽいっていうか自分たちはこれから『革命』に関わるわけだから。 多分最初から『ぽい』っていうか『そのもの』って感じなんだけどね・・・」
でもまあ確かに、自分も今まではゲーム感覚だったところに現実感が出てきたような感じもする。
キューちゃんに呆れたツッコミを入れてる場合じゃないな。 自分も気を引き締めないと!