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Sランク冒険者認定試験(57)Sランク冒険者『裏』試験(20)

 とりあえず雲の上にいては地上の様子も確認できないので、妖精の羽を使ってストンと真下に降りることにした。

 一気に高度を上げたり下げたりすると気圧の問題とか発生するかと思ったけど、そのあたりは『精霊力』がなんとかしてくれているみたいだ。

 前に深海に潜った時もそうだったんだけど、精霊力が万能すぎる・・・。


「あ、あれってさっきの道場があるビルだよね・・・」

(そうですね、チシロさま。 どうやらチシロさまはほぼ真上に3000メートルほどワープしていたみたいです・・・)

(チシロくん、そこまでビビらなくてもいいのに・・・)

(うむ。 あの攻撃を食らっておれば結界に50%程度のダメージはあったであろうが、同時に反撃のチャンスでもあったのだがな。

 ・・・まあ終わったことを考えても仕方ないのであるが)


 ライアの言う通り終わったことを考えても仕方がないのだけど、それでも自分があの時最小限の距離をワープして、そのまま反撃をしていれば普通に勝てていたかも知れない。

 でも言い訳になるんだけど、だって空間を断裂するぐらいの一撃が真後ろから迫ってきてるんだよ!?

 これでビビるなって言うのは無理でしょ。

 いやそれにしても、3000メートルも飛んでいたのか。

 長距離を瞬間移動した影響なのか、精霊力をかなり消耗してしまったようだ。

 羽を使ってふわふわ浮遊するのは平気なんだけど、精霊力を使って移動しようとすると筋肉痛のような痛みが・・・。

 今はほぼ重力に任せて地上に向かって移動しているんだけど、それでも風が吹いたりして姿勢制御が必要になるたびに身体中に痺れが走る。


(チシロさま、大丈夫ですか?)

「いや、やばい。 精霊力の羽が解除されそうなぐらい・・・」

(うむ。 魔力による飛行に切り替えた方が良いかも知れぬな)

(チシロさま、魔水と魔法陣を用意しますね)

(チシロくん、とりあえず『空気抵抗上昇』の魔術を発動したよ。 これでとりあえず羽を解除しても大丈夫かも)

「ありがと・・・ふぅ」


 リオがフードの中から発動してくれた『空気抵抗上昇』の魔術はその名の通り、自分に対してかかる空気抵抗を上昇させる魔術らしい。

 要するにパラシュートと同じ役割なのだろう。 精霊力の羽を解除すると重力に従って自分の体が落下を始めるけれど、空気抵抗によって一定以上の速度までは上昇しない。

 少しずつ空気抵抗を上昇させたり逆に空気抵抗を減らして急降下したりを繰り返して5分ぐらいたつと、地上が近づいてきたのでそこからはライアの『飛行魔術』に切り替えて、そのまま道場の入り口に着地する。


「・・・いったいどうなってやがるんだ!?」

「・・・オンセンセ〜イ、ど〜こですか〜〜?」


 道場の中からは「オンクガネはどこに消えた!?」とか「まさかこれが『妖精隠し』か!?」とか自分が消えたことについて騒いでいるみたいだ。

 安心させるためにもさっさと中に入ることにしよう。

 ガチャリ・・・。


「みんな、お待たせ・・・」

「オン先生!? どうして外から!? ・・・いったい何があったんですか!?」

「うん。 ごめん、なんかちょっと調整をミスって・・・。 場外負けになっちゃったみたい。

 ルフールさんも、勝負を投げ出す感じになっちゃって、ごめんなさい」

「ああ、それはまあ・・・。 俺の攻撃で消滅させちまったのかと思ってビビったが・・・無事なようで良かったぜ。

 どうする? 結界を復活させてさっきの続きをやってもいいんだが?」

「ああいえ、全身筋肉痛になってしまったので・・・続きをやるってのは無理そうです」

「そうか・・・。 まあ、そもそも杖使い達(お前ら)にとっては消化試合だったわけだから無理強いはしないがな。 弟子達も、杖使いの実力については理解したから、今後はちょっかいを出すようなこともないだろうから、安心してくれ」

「そうじゃのオン先生、お疲れ様じゃ。 わしの代わりに敵の大将と戦ってくれてすまんかったの。 実はこれはオン先生の実力を図る目的もあったのじゃが・・・予想以上じゃったの」

「え、ということは『裏』試験は・・・?」

「ん。 ・・・ん? 『裏』試験とは、何のことじゃ? 単にわしは、初めて聞くなの杖使いじゃったから実力を知りたかっただけなのじゃが」

「え? じゃあ、試験官はルフールさん? ルフールさん、これって『Sランク』の『裏』試験なんじゃないんですか!?」

「いや・・・、俺が『Sランク』の試験を受けたのは数年前だが、その時は『裏』試験なんてなかったぞ? 今はそんな面倒な制度があるのか?」

「え、でもなんか、『Sランク』を目指すなら逃げるなみたいなこと言ってなかった?」

「いやそれは・・・」「あくまで一般的な話として・・・じゃな」


 ・・・まあ結局のところ自分は勝負に負けたのだから、むしろ都合が良かったということにしておこう。

 プラスにはならなかったけど、マイナスにもならなかったのだから。

 それにもともと、別に試合をすること自体がそこまで嫌だったわけでもないしね。


「まあ、そういうわけじゃ。 お主ら剣使いは悪いが、明日からは別の場所を使ってくれ」

「無論こちらも元からそのつもりだ。 なあに、少し郊外に行けば土地自体は余っているし、できれば行商人から『ヴァシランド・カード』でも仕入れたいところだが・・・」

(チシロさま。 確か、道場のカードならありましたよ?)

(うむ。 アウラのではなく、ソーダの作ったものであるゆえ、正確には『ヴァシランド・カード』ではないがな・・・)

(まあ『サウダージ・カード』も『ヴァシランド・カード』も性質はほとんど変わらないんだけどね)

「ルフールさん、道場のカードならあるそうです。 良かったら使ってください!」

「お、そうか。 そういえば『ヴァシランド・カード』の発行元は『黄金』だったな! ・・・譲ってくれるのか? そいつは助かるぜ!」

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