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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第零章

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Sランク冒険者認定試験(32)Aランク冒険者認定試験(3)

 とりあえず、『黄の農民』の人たちに引き継ぎをするまでは村を離れるわけにもいかないので、ついでに山の様子も見て回ることにした。

 とはいえ歩いて移動するほどの余裕があるわけでもないので、精霊の羽の鱗粉をウィスさんにもふりかけて二人で空を飛んで移動することにした。


「オン先生、その羽すごく便利ですよね。 それに、羽を広げたオン先生はまるで(・・・)本物の精霊みたいです」

「うん。 まあ実際は、精霊使いとして、ライアやリオの力を借りているだけみたいなんだけどね。

 でもまるで自分の力のように使いこなせるようになってきたし、もはや自分自信が精霊といっても過言ではないのかもね」

「ふふっ、オン先生。 こんな大きな、人型サイズの妖精がいるわけないじゃないですか〜」

「だよね。 わかってるって。 冗談だよ、冗談」


 ライアは自分たちの話を聞いて、首を傾げていたけれど、あれかな?

 自分が冗談でも「自分が妖精だ」みたいなことを言ったから、本気で言っているのと勘違いしたのかもしれない。

 後で時間があったら誤解を解いておいてもいいかもね。


「チシロさま、山の魔力は正常化しています。 魔獣の反応は残っていますが、反応は落ち着いているので問題なさそうですね。」

「うむ。 魔力の要素の一つである『混沌』はチシロによって調律されておるからな・・・」

「確か、僕が聞いたことある話だと、こういう『秩序』に寄った魔力を備えた獣のことを、聖なる獣っていう意味で『聖獣』って言うらしいよ」

「わたし、聖獣の伝説は何度か聞いたことがあります! 数百年前に滅びかけた国を救ったとか、世界の危機に立ち向かうパーティーを補佐したとか・・・。

 伝説とばかり思っていたんですが、実在したんですね!」


 ウィスさんが言う「伝説」とはこの世界に伝わるおとぎ話で、聖獣は世界を救う主人公だったり、その主人公を補佐する役割だったりと、登場機会が割と多いのだとか。

 実際は、聖獣とはいえ魔獣の一種に違いはないので、仲間にすることなどは難しいのだが、聖獣は魔獣並みの力を持ちながら理性的に行動をするので、仮に仲間にできたとしたら相当強力なパートナーになったことだろう。

 ちなみに、今となっては聖獣は「かつて存在したが今は絶滅した」とか「山の奥深くの秘境に存在する」のような感じで、いわば伝説的な存在として語り継がれているらしい。

 マテラの探知魔法によると、この山にはそんな聖獣がごまんといるみたいなんだけど・・・。


「つまりこの山は、聖獣の集まる聖地になるわけか・・・」

「オン先生。 この情報が漏れると、変な宗教団体や密猟者が集まることになるんじゃないですか?」

「そうだね。 なんとかうまいこと調整する必要がありそうだけど・・・、そういうことは村人や『黄の農民』の助っ人も交えてみんなで決めたほうがいい・・・のかな」

「チシロさま。 おそらくですが、基本的な方針は私たちで決めておいたほうがいいと思いますよ」

「マテラ先生の言うとおりです、オン先生。 細かいところはみんなの意見を聞くにしても、前提のところでみんなが納得する必要があるんです。

 今時点で、全員が確実に納得できるのは、この状況を作り出した私たちが出した意見だけなので、オン先生はその責任を取る必要があるんですよ!」

「えぇ〜・・・。 ちなみに、みんなはどんな対応がいいと思うの?」


 まあ確かに、全員が意見を出し合った結果まとまる気配すら見えない不毛な会議というのは、至る所で見てきた気がする。

 確かに、そういう意味で基本的な方針だけは自分たちで決めておいたほうがいい気もしてきた。


「チシロさま。 やはりこの聖獣には自然のまま過ごしてもらいたいです。 この山の情報は可能な限り秘匿すべきなのではないでしょうか」

「私も、マテラ先生に賛成です! それか、『ギルド』に伝えて『特別保護地区』に指定してもらうのもいいかもしれません!」

「うむ。 ・・・過度に保護することが自然とは、我は思わぬな。 悪意のない人間まで拒む必要はあるまい」

「そうだね、チシロくん! 逆に観光資源にしちゃうってのはどうだろう? 入場料を取ったり、聖獣クッキーみたいなお土産作ったり!」


 妖精3人+ウィスさんが「ああでもない」「こうでもない」「その案にはこんな問題が」「この案にはこんな利点が」と、好き勝手に議論を重ねている。

 それぞれが言いたいことを言っているだけで、話がまとまる気配は微塵も感じられない。 


「チシロさまは」「オン先生は」「チシロは」「チシロくんは」「「「「どの案に賛成ですか?」」」」


 なるほど。

 要するに、いきなり村人たちも交えて議論を始めてしまうと、この不毛な議論が、さらに手をつけられないような状態で繰り広げられるところだったわけだ。

 この4人はわざとやっているというか、自分が困るのを見て楽しんでいるだけな感じがあるからまだいいけれど、これが本当に「自分の利益に関わる」とかになってしまうと、引くに引けない状態になってしまうのかもしれない。

 やはり、まともな議論を行うためにはまずは全員が同じ方向を向いて話をする必要があるというわけか・・・。


「えっと、え? てか、本当に自分が決めちゃっていいの?」

「はい。 チシロさまが決めたことであれば、私たちは従いますよ」

「だったら・・・、せっかくだから自分は、『観光地にしちゃう』っていう意見に賛成かな。 一部を公開することで、大部分を立ち入り禁止にすることもできるだろうし、逆にそういうところは『特別保護地区』とかに指定してもらえれば・・・」

「うむ。 さすがはチシロである! 我もその案に賛成するぞ!」

「あ、僕も! 僕もチシロくんの案に投票するね!」

「オン先生! 素晴らしいです!! 私もオン先生の意見に大先生です!」

「チシロさま、全会一致です。 それでは村人と『黄の農民』の冒険者が集まったら、その方針で進めていくことにしましょう!」

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