Sランク冒険者認定試験(7)
バイクに乗って数十分。 早速街から外に出ることができた自分は、そのままバイクを飛行モードに切り替えて、人気のない地域まで移動。
そして、完全に人気のない空中でバイクをカードに戻し、同時に精霊の羽を出現させる。
やっぱり、なんだかんだ人目を気にしないなら自分の羽で移動するのが一番早いし、低燃費だからね。
「マテラ、聞こえてる? こっから先は自分の足・・・というか自分の羽で移動するから、よかったら道案内を頼みたいんだけど」
<<かしこまりました、チシロさま。 目的地の方角を示すコンパスを作りましたので、こちらを利用してください>>
「ありがと! えっと、じゃあ、こっちか!」
ちなみに、フードの中の会話を聞いている感じ、マテラたちとウィスさんは仲良く慣れたようだ。
今は三人から魔術やら剣術やらについて色々講義を受けている。 同時に妖精三人の方も、ウィスさんから色々な知識を吸収しているようだ。
なんか自分だけが除け者にされてるように感じないでもないけど・・・気のせいだから! これも役割分担だから!
そして、30分ぐらい、フードの中と雑談を交えながら空を飛んでいると、目的地の村が見えてきた。
「みんな、目的地の村が見えてきたよ!」
<<オン先生、聞こえてますか? 通話魔術を使ってみたのですが・・・>>
「あ、うん。 今度はちゃんと聞こえてるよ。 ということでウィスさん。 そろそろこの辺りで一度地上に降りて、そこからはまたバイクで移動することにしようか」
<<わかりました。 流石に羽で空を飛んだまま入ると目立ちますもんね・・・>>
地上に降りて、カードからバイクを取り出していると、ウィスさんがフードの中から転送されてきた。
なんか、フードの中で休んでいただけのはずなのに疲れているように見えるのは、気のせいだろうか。
「ウィスさん、お疲れ。 あれかな、疲れているように見えるのは、フードの中での勉強に疲れたとか・・・」
「本当に・・・一時間もかからずにでこの距離を移動するなんて・・・。
これが『Sランク候補』。 さすが、『Sランクは人間やめてる』と言われるだけのことはありますね」
うん。 この羽の便利さは、自分で言うのもなんだけどすごいと思う。 というか、妖精の羽が生えてる時点でだいぶ人間やめてる感があるから、一理あるとも言える。
だけどこれも、自分が『妖精使い』として精霊力を使えるだけで、自分の力じゃなくてむしろライアやリオの力なんだけどね。
このバイクにしても、自分のバイクじゃなくてアウラから貰ったものだし。
まあ、あれかな。 自分一人の力じゃなくて、みんなに支えられて今の自分があるというか、単に仲間に恵まれたと言うか・・・。 こうして『Sランク』の受験資格を獲得できたのも、自分の成果はほとんど関係ないし・・・。
そうか、だからこそ自分も『Sランク』を目指しているのかもしれない。
自分が『Sランク』になることで、自分を支えてくれている人全員が素晴らしいことが証明される。
自分が『Sランク』に合格することこそが、みんなへの恩返しになる。
そんなことを考えながらバイクを運転していたら、無事に村の前までたどり着いた。
村の大きさは、襲名戦争で拡張される前の近場の街よりもさらに一回り小さい感じ。 さすがは『村』というだけのことはある。
家の数的に、人口は50人ぐらいだろうか。
あたりには街道以外に何もなく、奥には山々が連なっている。
「とりあえず、村の中にバイクで入るね。 止める場所がなかったらカードに戻せばいいし」
「そうですね、チシロさま。 まずは村人から事情を聴取しましょう!」