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黄金戦争(58)襲名戦争・個人対戦(二日目)(幕間)(2)

 自分はテンキにある程度自分の状況を話しながら「『赤銅』のSランク冒険者の情報を聞きたい」と話すと、テンキは「なるほど、このお祭り騒ぎは『黄金』(お前ら)が原因だったか」と納得していた。

 テンキはもともとこの辺りを拠点に活動していた冒険者だったのだが、短期間のうちに街が急速に発展して困惑していたらしい。

 今やこの辺りの人口は数百倍以上に膨れ上がっていて、元からこの辺りにいた人を基本的に置き去りにして発展しているのだろう。

 それはそれで問題がある気もするけど・・・。


「それで、次の自分の対戦相手はこの人なんだけど・・・何か情報持ってる?」

「ふむふむ・・・えっ、この名前!? チシロ。 知ってるもなにもたぶん、この人は俺の師匠にあたる人だ。 ・・・最近会ってなかったが、よその戦争に手を出すとか、何をやっているのやら」

「やっぱり知って・・・師匠!? 何その、かっこいい響きは」

「ああ。 『赤銅』では、冒険者志望の人に対して『師弟制度』というのを導入していてな。

 あの頃はまだ俺が『ランクなし』で、師匠も確か『Aランク』ぐらいだったんだが・・・そうか、師匠はすでにSSランクを目指す位置にまでたどり着いていたのか・・・。 これは俺も、負けてられないな!」


 そうか。

 まさか、次の対戦相手は実は知り合いの師匠だったとは。 世の中は案外狭いものだなぁ。


「それで、テンキ。 次の対戦でこの人と戦うことになってるんだけど、どんな戦い方する人なのかって情報は・・・流石に教えてはくれないよね。

 でもせっかくだから、どんな人なのかは教えてよ!」

「ああ、別にいいぜ。 そうだなぁ、師匠は転生者である俺にこの世界の基本的なルールは教えてくれたが、戦闘技術については基本的なことしか教えてくれなかったがな。

 見た目は完全に幼女なんだが、そんな見た目とは裏腹にゴリラかクマかよってぐらいにバカみたいな力を持ってて、魔力も使わずに岩を握りつぶして粉砕していたなぁ・・・。 で、しかも師匠は割とおっちょこちょいなところがあって、そうそう。

 確かあれは俺が初めて師匠のクエストについて行った時、師匠はクエストを達成したのに報酬を受け取らずに帰ろうとするから俺は、どうして報酬を受け取らないんですか? って聞いたんだが、なんて答えたと思う? 俺はてっきり、あの人たちは貧しいですから。 とか、そんな気遣いのセリフでも聞けるのかと思ったら師匠は、ああすいません、忘れてました。 って言ったんだぜ? しかもその、面倒な受け取り手続きは全部弟子()に丸投げで、しっかり報酬だけは差し引いていく。 全く、自分勝手な人だぜ・・・」

「なるほど・・・」


 ところで、テンキさんの後ろから殺気を感じるのは気のせい・・・ではないな。 なんか嫌な予感がしてきた。


「テンキ、そろそろやめといた方が・・・」

「いや、まだだね! そもそも師匠は面倒なことがあれば部下やら弟子やらになんでも押し付けるし、嫌なことがあれば口じゃなくて手が先に動くし、しかも全て『修行の一環』の一言で済まそうとする。

 いいかチシロ、あの人は普段は優秀な冒険者に見えるかもしれないが、それは猫をかぶっているだけだからな? 騙されるんじゃねぇぞ!」


 いかん、やばい。 後ろの殺気がどんどん膨れ上がってくる。

 そこにいたのは、ツインテールを逆立てた小学生ぐらいの幼女。 見た目は子供だが、殺気の強さから相当な実力者・・・それこそSランク級の強さだと一目でわかる。

 多分この子が、自分の次の対戦相手にして、テンキの師匠・・・なんだろうなぁ。 そしてテンキが今まで言っていた悪口は全部、聞かれているんだろうなぁ。


「要するにまとめると、師匠は・・・」

「テンキちゃん? 久しぶりにあなたの声を聞いたと思ったら、面白そうな話をしていますねぇ・・・」

「・・・チシロ、つかぬ事を聞くが、このちびっこは、いつから・・・ここに?」

「さぁさ、テンキちゃん。 続けてくれて構いませんよ? その、あなたの師匠さんという人は、要するにまとめるとどういう人、なんですか?」

「・・・要するにまとめると師匠は、そんな欠点はいくつかあるけど、それでも俺のことをここまで育ててくれた師匠だからな。

 いやあ、それにしても師匠、数年前から全く姿が変わってないっすね! いつまでも若々しくて・・・」

「人が気にしていることを・・・死ね!」


 テンキの師匠は、消えたかと錯覚するほどの高速で移動してテンキの腹に一発グーパンを叩き込んだ。

 魔力が発動した痕跡は見られないのに、幼女から繰り出されたとは思えないほどの衝撃音が店内に響き渡ったから、テンキの言っていたことが正しいことを証明しているようだ。

 そして、何事もなかったかのように笑顔でこちらに振り向いた。 隣で腹を抑えて悶絶しているテンキを完全に無視して・・・。

 ああ、そうか。 笑顔って、ここまで人に恐怖を与えられるんだなぁ。


「こんにちは、はじめまして。 あなたはテンキちゃんの友達ですか? 私はこれの師匠、『赤銅』のヘイロー・クリン・アカガネです。

 以後、お見知り置きを・・・」

「ああ、はい。 自分は『黄金』の・・・クガネチシロです。 こちらこそよろしく」

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