幕間1(1)
「仕方ないので、この宿を仮拠点にします。 ああぁ、なんでこんなことに・・・」
「チシロさん、雑巾がボロ雑巾になって落ち込んでいます、励ましてやってください」
「マテラ、できればアウラのことを『雑巾』って呼ぶのをやめてほしいんだが」
「いえ、なんか、少しでも気を許すとつけ上がりそうで・・・」
「マテラちゃ〜ん、慰めて〜」
「ほら〜。 もうヤダ〜」
アウラが過剰な反応をすると、マテラはフードの中に引っ込んでしまった。
「さて、チシロさん、もしよかったらなんですけど、せっかくなので『ギルドクエスト』を受注してみませんか?」
「『ギルドクエスト』? それは、普通のクエストとは何か違うんですか?」
「そうですね・・・。 まず、一番大きな違いとして、ギルドクエストは『ギルドカードを通して』でしか受注ができません。 難易度が高いものも多いのですが、その分だけ報酬もいいです。
あと、『ギルドクエスト』を完了すると、『ギルドポイント』がもらえます」
「ポイント?」
「『ギルドポイント』というのは、簡単に言えば『ギルドランク』を決めるためのポイントです。
ポイントだけでランクが決まるわけではないのですが、『ギルドランク』を上げる条件や維持する条件にポイントは深く関わっています」
「それって、例えば年間で何ポイント稼げなければ、即降格とかもあり得るってこと? うちのギルドは大丈夫なの?」
「『黄金』の維持については、私の個人的なポイントを『ギルドポイント』に変換したので、ひとまずは大丈夫です。
ですが、それもあと3か月ほどで限界がきます」
個人的なポイントとは、個人的にクエストを完了したときにもらえるポイントで、『ギルドポイント』に変換することも可能らしい。
『ギルドクエスト』の一覧は『ギルドカード』の機能で確認することができ、クエストの受注も『ギルドカード』からできるという。
いずれにせよ、いずれは『ギルドクエスト』を避けて通るわけにも行かないということで、まずは「お試し」として一つ、簡単な『ギルドクエスト』を受注することにした。




