黄金戦争(41)(黄金攻撃作戦)(5)
これが、『黄金の妖精:クガネチシロ』の本領発揮・・・。 強いっ!!!
俺は今まで、何人もの化け物を見てきた。
一番身近な化け物は、俺のギルドの親ギルドである『黒鉄』の幹部であるクロヒメ様。
また、その姉妹であるという噂も流れているシロヒメ様とも手合わせをしたことがあるが、あれもまた同様に化け物だった。
そして今相手をしているクガネチシロ。 あれもまた、そういった『人外の強さ』を持った側の生き物なのだろう。
現時点では、なんとか互角に戦うことができている。
この瞬間だけを他人の視点で見たら、もしかしたらひたすら攻めまくっている俺の方が優勢だと判断する人もいるかもしれない。
・・・だが、その実態は全く違う。
俺自身ですら制御しきれていないような力任せの乱撃を、クガネチシロは一つ一つ丁寧に捌ききり、さらには確実に反撃を返せる隙を窺っているようにも見える。
いずれにせよこのままでは、どう考えても俺の攻撃がこの防御を通り抜けられるようなヴィジョンが浮かばない・・・。
「ダァッ! ダァッ!! ダァアアアアアア!!!」
「よっ。 ほっ! ・・・ほいっ!!」
こちらは全力攻撃で体力を常に消費しているのに対し、クガネチシロは一度深呼吸を挟むだけで体力が全回復しているようにも見える。
この防御を貫くためには、まさしく「息をつく暇もない」ぐらいの攻撃を浴びせ続ける必要があるのだが、そのためには俺と同等以上の実力を持った人間が最低でもあと二人は欲しい。
・・・ダメか。 きっとここらが潮時だな。
『Δ496』は限界突破の影響でだいぶダメージを受けてしまったが、このまま戦い続けて崩壊するよりはましだろう。
ここは一度、距離をとって・・・。
「まて、クガネチシロ! 話がある。 いや、提案・・・頼みが、ある!」
「え? チシロってオンちゃん・・・ああ、私のことでちか。 それで、話って、なんでち?」
「降伏を、したい。 勝手に仕掛けておいて勝手に降伏など都合のいい話だとはわかっている。 だが、戦ってみてわかった。 俺に、いや、俺たちにはどうやら勝ちの目すらないようだ。 だから俺たちを、見逃してほしい!」
「えぇっ! 戦いはまだまだこれからだったのに、でち!?」
「戦いはこれから・・・俺にはそうは感じられなかったがな。 とにかく、今後俺らは『襲名戦争』に手を出さないと誓う。 森の外で噂を流して、戦争参加者たちがビビって突入できないように協力してもいい。
だから一旦、この戦いは終わりにしないか?」
「まあ、こっちとしては、拠点さえ守れればなんでもいいでちが。 ライアはどう思うでち?」
「うむ。 まあ、良いのではないか? 仮にこの拠点の情報を漏らされたところで、そもそも大した問題ではあるまい・・・」
「なるほどでち。 ・・・というわけで、ブレドだっけ? 帰っていいでちよ」
・・・なるほど。 悔しいがやはり、クガネチシロにとって俺は所詮『どこにでもいる一人の戦士』に過ぎないわけか。
悔しいが、確かにそこには実力差がある以上、仕方がない。
むしろ、歴史に名を残すレベルの偉人に、有名になる途上の段階で知り合いになれたことは幸運だったのかもしれない。
よし! 気持ちを切り替えて、クガネチシロとの約束どおり『結界を抜けた先、拠点の前には、クガネチシロという化け物みたいに強い奴がいる』って噂を流すことにしよう!
俺自身の武勲を高めるために、クガネチシロの化け物具合に多少、色をつけるぐらいは・・・許されるよな!