転生生活1日目(2)
「え、ええ。 噂の? か、どうかは知りませんが・・・。実は自分は、つい先ほど転生してきたばかりなのですが・・・」
「ってことは、ああ、やっぱり。お前が『転生エラー』か!」
自分が事情を説明すると、彼は一人で何か納得してしまったみたいだ。
それにしても、『転生エラー』って・・・。
まあ、確かにエラーメッセージは出ていたけれど、まさか噂になるほどのことだったとは思わなかった。
「あの・・・転生エラーって何ですか?」
「それはもちろんおまえのことだが・・・その前に、まずは自己紹介をしよう。俺は火門 天鬼。職業は見ての通り、森で狩りをする冒険者だ。おまえは?」
「自分は水音 千代です。よろしく、テンキさん。・・・それで、転生エラーって?」
テンキさんは、自分に向かって輝く猟銃を見せつけながら、冒険者だと名乗った。
どうやらこの異世界は、冒険者という職業が存在し、そしてかれらは森で狩りをしたりもするらしい。
「実はついさっき、街で『転生がうまくいっていない人を探せ!』ってなクエストが発行されててな。転生に失敗したなんて話、今まで前例がなかったから、冒険者の中では今、その話題で持ちきりなんだ。
やったな! 転生そうそう有名人になれたじゃないか!」
テンキさんから詳しく話を聞くと、街では今、正しい場所に転生できなかった自分を探し出すクエストが発行されていて、一部では『転生エラー』として話題になっているらしい。
保護してくれるのはありがたいけど、こんなことで有名人になれるのは全く嬉しくない。
あれだ。子供の頃にデパートの放送で、自分の名前が流されたときも、こんな気持ちになった気がする・・・。
「それにしても、俺もこの世界に転生して5年が経つが、森の中に転生されるって話は初めて聞いたぜ」
「へえ、そうなんですね・・・って、え?」
今彼は、転生して5年目と言った? ってことは、
「テンキさん。つまり、あなたも転生者っていうことですか?」
「ああ。チシロの世界がどうかは知らねえが、この世界で転生者は、そこまで珍しい存在じゃあねえぜ。だからこそ、転生者に対するサポートも充実してるし、おかげで俺みたいな戦闘バカでも十分に暮らしていける。
そうだな・・・。とりあえず街までいけばなんとかなるな。よし、街までは俺が案内してやるから、ついてきな!」
「あ、はい」
そう言ってテンキさんは、森の中をずんずんと進み始めるので、自分は慌ててそれについていく。
歩きながら聞いたテンキさんの説明だと、この世界に来た転生者は、まずはどこかの街で、この世界の説明やサポートを受けることになっているらしい。
普通なら、街の中のちゃんとした場所が転生地点になるはずで、自分のように森の中からスタートするのは前例がないらしい。まあ、心当たりと言ったらあのシステムがバグったことぐらいしか思いつかないけど・・・。