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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第零章

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転生生活二日目(3)

「チシロさま、落ち着いてください。 ほら、魔獣が引き返していきます。

 どうやら、宿の主人が言っていた『エルフなら大丈夫』というのは、本当だったようです」


 マテラに言われて魔獣の方を見ると、追っていた獲物にすら興味を失ったように、背を向けて森の奥へと戻っていく。

「この森でのエルフの立ち位置って一体・・・」

「そんなことよりチシロさま、このボロ雑巾どうします?」


 マテラが「ボロ雑巾」と言っているのは傷だらけになって吹っ飛んできたこの人のことだろう。

 よく見るとまだ若い、見た目は中学生か高校生ぐらいの少女だった。


「ボロ雑巾て・・・。 まあ、このまま放っておいて死なれでもしたら嫌だし、なんとかしたいけど・・・」

「では、試作した回復薬を試してみてもいいですか? どの程度効果があるのか試してみたいのです」

「試してみてダメそうだったら、宿に連れ帰ることにしようか」

「はい。 では、そこそこ出来の良かった回復薬の実験を始めます・・・」


 そう言ってマテラは、フードの中から青白く輝く薬を取り出した。

 少女の口に薬を流し込むと、身体中が薄く発光し、傷が見る間に消えていく。


「「すげぇ」」

 思わずマテラとハモってしまったが、いや、すごい。

 確かにすごい。 この世界に来て一番『異世界っぽい』と感じたかも知れない。

 自分も驚いているし、なにより薬を使ったマテラ自身もかなり驚いている。


「チシロさま、この薬、やばいです。 致命傷が一瞬で消えました!?」

「すげぇすげぇ! マテラ、これからこの薬を作って売るだけで生活できたりしない?」

「それも十分可能かと・・・。 ならば大量生産・・・いえ、ここはあえて流通量を減らして価格を・・・。

 これからは市場調査も必要で・・・」


「うっ・・・ん?」

 体から発光が消えると同時に、少女が目をさました。


「大丈夫ですか? 傷は治ったように見えますが、他に悪いところはありませんか」

「!? あ、あなたは? 妖精さん、あなたが私を助けてくれたのですか?」

「私はマテラ。 チシロさまのおまも・・・」

「マテラさんね。 あなたが私を助けてくれたのね。

 私は『アウラ』。 このご恩は決して忘れないわ!」

「え、ええ。 ですが、恩を売るなら私よりも、こちらのチシロさ・・・」

「ああ、マテラさん、いいえ、マテラさま! このアウラ、これからの一生をあなたに捧げます!」

「い、いえ、様付けなんてしなくていいですよ。 それに捧げるなら私ではなく・・・」

「それなら、『マテラちゃん』って、呼んでもいい? ああ、なんてかわいいの、マテラちゃんは」

「いえ、ですから・・・」


 お守り(マテラ)少女アウラで話題が盛り上がって(噛み合ってはいない)、話に割り込む隙が無い・・・。


 女子力って怖ぇ〜。

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