マテラ(3)
・・・実は、お客さんに依頼したい特別クエストがあるんや」
どうやら、宿の主人はチシロさまに『依頼』をしたかったようです。
「最近、森の魔獣が活性化しとるんや。
そんでその原因を調べたら森の奥にある『魔力管理システム』が不具合を起こしとるせいやと思われるんやが、魔獣も強化されとるで、誰も近づけんようなって困っとるんや」
とのこと。
どうやら依頼内容は、森の魔力を管理しているシステムのメンテナンスだそうです。
魔力を貯蔵するクリスタルの交換を行うだけなので、メンテナンス自体は誰にでもできるそうですが、魔獣が強化されたために、誰も機械に近づくことができない状況のようです。
「ですが、こう言ってはなんですが、私やチシロさまにはほとんど戦闘能力がありませんよ。
私たちに頼んでも同じ結果のように感じますが・・・」
「いや、あのお客さんは『エルフ』なんやろ? せやったら大丈夫や!
なんせ『エルフ』は『森の守護者』とも呼ばれとる。 魔獣もエルフには敬意を表してむやみに襲ったりはせんはずや!」
話を聞くと、『エルフ』の種族を持たない人がこの森で植物などの採取を行うと、まるで森を守るかのように魔獣の群れに襲われることがあるらしいです。
そのため、この宿を借りようとする客はもともと
・魔獣の群れをなんとかできるほどの強さを持っている人
・外部から薬草を大量に持ち込んだ人
・この森に長年住み、森の住民として認められた者
を除けば、あとはエルフ族ぐらいしか考えられないそうです。
「そういうことでしたら、チシロさまがお目覚めになったら私から話をしておきます。
ところで、代わりと言ってはなんですが、私に『薬の調合の仕方』を教えていただけないでしょうか」
「薬の作り方? ああ、もしかしてうちの機材の使い方がわからんかったですか?」
「いえ、それもあるのですが・・・。 できれば薬作りの基礎から全部教えていただきたいのです」
ここまできたら、隠すこともないだろうということで、宿の主人にチシロさまは転生して間もないことや、戦闘向きのステータスではないので、できれば商人系のスキルを身につけたいことも話すと、
「そういうことなら構いまへん! 早速今からでも叩き込んだる!
ただし、薬作りについて教えとる間は、わいのことを『先生』と呼ぶこと!これが条件や!」
「はい、お願いします、先生!」
宿の主人、いえ、先生は若干悪ノリ気味ですが、これから早速薬作りについて教えてくれるそうです。
調合室に向かうと、先生は各種機械の使い方や調合のコツなどを丁寧に教えていただきました。
一通り教えると「まあだいたいこんなもんや。 あとは一人でもなんとかなると思うで、いろいろ試してみ」と言って、宿の奥の部屋に戻って行きました。
おそらく夜も更けてきましたので、お休みになるのでしょう。
そこから先は一人で作業を続け、気がついたら窓から朝日が差し込むような時間になっていました。




