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街(五日目)(1)

 結局昨日はその後、シェフの作った夕食をいただいた後、疲れたのですぐに寝ることにした。

 ベッドに入るまでは「受かっていたら嬉しいな」とか「逆に、もし落ちてたら気丈に振る舞えば良いのか?」とか考えると気分が高揚して「興奮して寝付けないかも」と思っていたけど疲れていたからだろうか。 ベッドの上で横になって、気づいたら朝になっていた。


 そして今朝、窓から差し込む太陽の光で目を冷まし、しばらく何も考えずに「ぼーっ」としていると、壁にかけられたローブのフードからマテラが飛び出した。


「おはようございます、チシロさま。 早速なのですが『良い知らせ』と『どうでも良い知らせ』の二つがあります。 どちらを先に聞きますか?」

「『どうでも良い知らせ』!? 『悪い知らせ』とかじゃなくて?」

「そうですね。 単純に『良い知らせ』とも言えませんが、かといって『悪い知らせ』というわけでもないので。

 では『どうでも良い』方から話しますね」


 というか、タイミング的にどう考えても片方は試験の結果の話だよな?

 もしかして『どうでも良い』っていうのは「落ちたけど気にしないでください」みたいな、マテラなりの励ましなのかもしれない・・・。

 となると、こちらは覚悟して聞いたほうがいいだろう。



「えっと・・・、昨晩アウラ(雑巾)から『事務員(ギルメン)の募集は一旦中止して下さい』というメッセージが届きました。

 メッセージには『そこそこ良さそうな人が見つかった』とも書いてあったのですが、全くもって自分勝手ですよね。

 チシロさまが昨日、声をかけそびれていたからよかったものの、そうじゃなかったらどうするつもりだったんですかねぇ」

「・・・そっちか。 まぁ、なるほど。 後で「了解しました」みたいなメッセージを返しておかないとね。

 こっちもアウラのためにやってたことなんだし、これで『人探しをする必要はなくなる』っ考えれば、それはそれで良いんだけどね」


 ただ、せっかく仕事を与えられたのに、成果を出す前に仕事を取り上げられたせいで、消化不良気味なところはある。

 だけど、本来の目的である『事務員の募集』という点では達成できたようなので、ここで文句を言うのはお門違いなのだろう。

 結局、マテラが言うように『悪い知らせ』ではないし、かといって自分たちにとってはそこまで『良い知らせ』という訳でもない。

 つまり一言で表すと『どうでも良い知らせ』ということになるのか?


 というか、『どうでも良い知らせ』の方がギルメンの話(この内容)ということは、もしかして『良い知らせ』の方は・・・?


「そしてチシロさま、『良い知らせ』なのですが、今朝方ステータスカードに『Aランク冒険者試験の合格通知』というメッセージが届きました!

 メッセージはまだ開封していないのですが、タイトルから判断するに『合格』ということで間違いはなさそうです!」

「よっしゃー!! マテラ、早速、メッセージの内容を確認しよう!

 午前試験が何点だったのかも気になるところだし!」

「はい、それではメッセージ内容を表示しますね。 えいっ」


<<以下の者には『Aランク』に相応しい実力、知識があると判断されたため、『Aランク冒険者』に認定し、同時に『星』を一つ進呈します>>

 ○本名:チシロ・クガネ・ミト

 ○所属ギルド:『黄金』(サブマスター)

 ○午前試験結果:合格(実績を鑑みて不足分の点数を補填)

 ○午後試験結果:合格(チーム総合順位第4位)


 おお、やっぱり合格・・・ん? なんだこれ。


 改めてステータスカードを確認すると、自分の名前の隣に☆印が一つついていた。

 この星印は『Aランク冒険者の証』とも呼ばれていて、『Aランク冒険者』になった時にひとつもらえるほか、確か『Aランク相当』のクエストをクリアした時にも一つずつもらえるはずなんだけど、今重要なのはそこじゃなくて。


「ねえマテラ、ここの『実績』って、なんのこと?」

「さあ? もしかしたら、この前の『山龍討伐』クエストに参加したことか、もしかしたら『黄金』に所属していることでしょうか・・・」


 なんだろう、釈然としないというか。

 もしかして、シロヒメさんという有名人(?)と知り合いだったおかげとか?

 こちらはそんなつもりでシロヒメさんに話しかけた訳じゃないんだけど・・・。


「チシロさま、どうやら『実績を鑑みて』云々の文言は、『ギルド』側が使う常套手段で、主に『あと一問で合格』という人にその『あと一問』分の点数をサービスするものらしいです」

「へえ、じゃあ一応『ギリギリ不合格』の点数は取れたってことか。

 これは素直に喜んでいいのか? うーん、試験結果(こっち)別の理由(こっち)でまた、腑に落ちないと言うか・・・」

「チシロさま、昨日シェフや執事AI(おじいさん)から聞いた話なのですが、大抵の受験者は初めて午前試験では問題の半分も正答できないことが多いらしいです。

 それを考えればチシロさまは、初めての受験で合格点ギリギリまで得点できたのはすごいことですし、それになんだかんだ言って『運も実力のうち』ですよ!」

「そうかなぁ・・・、まあ、そうかもなぁ・・・。 そういう事でいっか」

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