クエスト(10)
問題というのは単純で、
「チシロさま、大変です!
次の工程で何をすればいいのか、さっぱりわかりません」
ということだった。
調合室の中にはそれはもう、様々な機械が置いてあるが、肝心の『製薬機』が置いてない。
いや、物自体はたぶんあるんだろうけど、サポートブックの見た目とは違いすぎて、どれがどれだかわからない。
いやいや、もしかしたらこの『製薬機』と書かれた立て札の奥にあるのがそうなのかもしれないけれど、で、だから?
サポートブックには、こんなにも細かく分類された薬粉をどう調合したら良いのかも、この複雑そうな意味わかんない機械を操作する方法も書いてない。
書いてあるのはただ一言「前工程で作った薬の粉を、投入口に入れてスイッチを押します」だけ。
・・・投入口って、どれ? スイッチって、どれ!?
「まさかこんなところに罠があったとは。最新機械・・・恐るべし・・・」
宿の主人に聞けば使い方もわかるのかもしれないが、今は村の人と雑談をしているみたいで話しかけにくい。
しかもどうやら盛り上がってしまっているようで、話はすぐには終わりそうにないし・・・。
「チシロさま、調合室で考えていても何も思いつきませんし、一旦部屋に戻って休みませんか?」
マテラの提案通り、調合室を軽く片付けて、自室に戻って休むことにした。
「疲れたから、少しの間横になるね。 宿の主人が来たら、起こして・・・」バタッ
ベッドに入ると、今日の疲れが怒涛のごとく睡魔として襲いかかってきた。
(そういえば、部屋の鍵ってしめたっけ・・・)
(宿の主人に「調合室は今日はもういいです」って伝えた方がいいかな・・・)
(今後の調合の進め方も、主人に聞いておかなきゃ・・・)
いろいろな考えが頭の中をよぎるけど、体の方が疲れていていうことを聞かない。
(まあいいや。 明日できることは、明日やろう。 今日はもう寝よう)
他に客もいないから鍵は別に締めて無くてもまあ大丈夫・・・だろう。
宿の主人も、自分達が調合室にいないのを見たら「あきらめたのだろう」と察してくれるだろう。
調合の進め方は・・・それこそ明日でいいや!
そう思って、意識を手放して、ようやく転生生活の1日目が終わりを迎えたのだった。