クエスト(9)
扉を開けて『調合室』の中に入ると、宿の主人が言う通り、いやそれ以上にすごい設備がそろっていた・・・。
最初『調合室』と聞いて「学校の理科室ぐらいなもの」をイメージしていたら、そこにはよくわからない巨大な機械がずらずらと並んでいる。
まずは手始めにサポートブックに書いてある『薬草を粉状にする機械』を探していたのだが
「チシロさま、この機械、本に載ってるのと違います・・・」
サポートブックに『粉砕機』として紹介されている写真にはちょっと大きいミキサーぐらいの機械が写っているのだが、目の前の冷蔵庫ぐらいの大きさの機械にも『粉砕機』と札がかけてある。
冷蔵庫からは筒がのびていたので、試しに薬草を一本投入してみると
「ブウゥン・・・チィン」と、わずか数秒で粉末の入った袋が三つ排出された。
本の説明では「粉末にするのに30分ほど待ちましょう」って書いてあるのに・・・
一つ一つの袋を鑑定してみると
<<青の粉末(高品質)>>
効果:鎮静
<<白の粉末(高品質)>>
効果:除去
<<茶の粉末(不純物)>>
これは・・・薬草が能力別に粉末にされたということなのだろう、きっと。
「どうやらこれは、本当に最新式の機械のようですね。
サポートブックには『機械に入れると粉末状にされます』としか書いていないのですが・・・」
「そうだね・・・。 一応もう一度試してみようか」
こんどは試しに毒草を入れてみて、同じように数秒待つと
<<黒の粉末(高品質)>>
効果:付与
<<麻痺毒の粉末(高品質)>>
効果:麻痺
<<茶の粉末(不純物)>>
「やりましたね。さすがです、チシロさま! 麻痺毒の抽出に成功しました!」
うん。 自分達は特に何もしてないんだけどね。 結果オーライだね。
そんな感じで調子に乗って、他の草もどんどん粉末状にしていくのだが・・・、
やばい、楽しい。
薬草が粉砕されていく様子を見るだけでも楽しいし、普通の草からでも時折レア(っぽい)色の粉末が出てきたりしてガッツポーズをしたり、逆に高価そうな薬草からはほとんど不純物しか採れなくてマテラと一緒に笑ったり・・・。
どうやら自分はこういう地味と言うか、地道な作業が向いているらしい。
ひたすら機械に草を投入 → 袋が出てくる → 袋の種類ごとに分類しながら次の草を投入
の作業を続けて、薬粉もたまってきたので「そろそろ次の工程に入ろう」とした段階で一つ、大きな問題が発生した。