転生生活1日目(1)
眼が覚めると、そこは森だった。
どうやら、転生は無事に(?)成功したらしい。
ここはどこ? 私は誰? いや、マジで。
違和感を感じると思ったら、転生前に着ていた服が消えていて、代わりに村人っぽい粗野な服装の上に、魔導師っぽいローブという、いかにも『RPGの初期装備』といえるような格好になっているようだ。
そして当然、周りを見渡してもチュートリアルなど存在しない。ゲームではないのだから、当たり前か。
「こういう場合、ひとまず街でも探すのが定番なのだろうけど・・・」
山で無闇に歩き回ると逆に遭難の可能性が高まると聞いたことがあるけど、よく考えたら自分はそもそも、すでに世界レベルで遭難してるようなものだから・・・。
「ははははは・・・、いや、笑えねえ」
これは、人生2度目のエンディングも近い気がするなぁ。
しかし、そう思って何もせずに待っていても、それだけで状況が改善するとは思えない。
今はとにかく、あたりを歩き回って探索してみることにしよう。
そうして歩く事、約3分・・・
「川だ・・・」
そういえば「文明というのは基本的に川沿いに発展する」と歴史の授業で聞いたような気がする。
という事は、川を下っていけば街にたどり着く可能性が高いんじゃないだろうか。
半ば祈るようにして川を下っていくと、目の前に大きな塊が寝転がっているのを見つけた。
「熊だ・・・」
よく見ると、それは巨大な熊だった。・・・この熊、寝てるのではなくて、死んでるのか?
傷跡は見当たらないが、この熊の下には真新しい血の跡がある。そして、かすかに残る火薬の匂い。
ガサガサガサ
熊をじっと観察していると、森の奥から茂みをかき分けて、何かがこちらに向かって来た。
異世界ということは、モンスターのようなものが出てくる可能性もある。が、仮に相手が最弱レベルの敵だとしても、戦闘系ステータスが全て1の自分では勝ち目がない・・・。
最悪の場合、いつでも逃げられるようにと身構ながら待つと、現れたのは猟銃を握る青年だった。
「そいつは俺の獲物だ!離れろ!」
青年はキラッキラに輝く銃を自分の方に向けながら、自分に話しかけているようだ。
見たこともない土地に来たので不安ではあったけど、とりあえず言葉は通じるみたいだ。ならば、と警戒心を解くべくと、両手を上に上げながら必死で叫ぶ。
「す、すみません! そんなつもりじゃなかったんです。なんというか、そう。・・・道に迷って?」
・・・曖昧な言葉しか出ない自分のコミュ力を笑いたくば笑えばいい。
というか、異世界でも両手を挙げるジェスチャーは通じるのだろうか。
びびりまくって変な行動をとっている自分に向かって、銃を構える青年はこう言った。
「お前、もしかして噂の転生者か?」