街(12)
ホテルの最上階までは階段でもエレベーターでもなく『転移魔術』で移動した。
マテラなんかは「箇所を固定しているとは言え、この距離を一度の転移で繋げるとは・・・」なんて驚いていたけど、自分には魔術のことは全くわからないので一体何がどうすごいのかはわからない。
マテラが言ったことをまとめると「なんかもう、とにかくすごい」らしい。
せっかく最上階の部屋を借りたので、部屋から外の景色も見てみたのだけど、マテラも自分も景色とかにはあまり興味がなかったので、「わー、綺麗ですね、チシロさま!」「そうだね。 でもマテラの方がもっと綺麗だよ!」「そんな、チシロさま・・・テレちゃいますー」「「・・・・・さて、勉強するか(しますか)」」みたいな茶番を一通り挟んだだけで終わってしまった。
ただ、最上階の特典は景色だけではなく、部屋にその備えつきの机やベッドも一般の部屋よりも高価なものだとわかる。
だって、特に家具に詳しい訳でもない自分でも、ベッドに腰掛けた瞬間「あ、このベッド、高級なやつだ」って一瞬で分かったもん!
なんというか、『良いベッド』っていうのは、もちろん「寝心地が良い」のは当然として、それだけではない何かがある気がする。
「腰掛けただけで睡魔が襲ってくるようなベッドでは、二流・・・。 時に主人に対して叱咤激励するぐらいの気概がなくてはならぬのだ!」
・・・自分は一体、何を言っているんだ。 わけがわからなくなってきた。
ということで、『Aランク試験』の問題を解いて見ることにした。
マテラが買った問題集は『難易度順』や『頻出順』など様々な方法で並び替えができたので、ひとまず『頻出順』で『最頻出』に設定されている問題を数問解いてみた。
しばらく問題を解き続け、4回目ぐらいの『次ページ』ボタンを押したタイミングで不意にマテラが声をかけてきた。
「チシロさま、このまま練習問題を解き続けてもキリがないですし、チシロさまにも疲れが見えますので、今日はもう終わりにして、本格的な勉強は明日からにしませんか?」
「おっと・・・、確かに、気づいたらもう外も真っ暗だ。
まだまだ問題集に終わりは見えないけれど、確かに『徹夜で勉強しても効率は悪い』ってよく言うしね」
勉強に集中していたからか、知らない間に結構な時間が経っていたようだ。
こなした問題数は20問ぐらいだろうか。
全部で500ページ以上あって今はまだ5ページ目だから、本当にまだ「終わりが見えない」どころか「スタートラインに立ったばかり」なのかもしれないけど。
「そこでなのですが、チシロさま! 明日は一度、実際の試験と同じ感じで過去問題を解いてみませんか?
『今の実力を知る』ためにも必要ですし、今後勉強を続けていく上でも『勉強する前の点数』がわかるとやりがいにつながると思うんです!」
「そうだね。
それに、早いうちから本番の空気に慣れておくことも大事だろうしね」