森の探検(1)
ふむ。
やっぱり、たまには一人も落ち着くなぁ・・・。
別に「マテラやライアと一緒にいるのが大変」とか、そういういうわけではないんだけど、それでもやっぱり多少はお互いに気を使う必要があるしね。
とまあ、そんなわけだから当然、話し相手もいないし目的も無い。 ただ歩く。
強いていうなら、こうして一人の時間を過ごすこと自体が目的になるだろうか。
こうして一人で歩いていると、いろいろなことに気づくことが出来る。
例えば、(当たり前といえば当たり前だが)森にはたくさんの生き物がいる。
木の枝の上に目をやると、リスっぽい生き物がいるし、木々の隙間からは狐っぽい生き物や鹿っぽい生き物も姿を見せる。
そうして徐々に動物の数が増えていって・・・。
というか、
「いや、これはさすがにおかしい・・・」
どう考えても、「マテラと一緒の時は気付かなかっただけ」では済まない数の動物が集まってきてる。
森中の生き物たちの視線もムッチャ感じる。 見てる。 ムッチャこっちを見てるよ・・・。
道の脇の森から。 森の上の木々から。 なんだったら地面の下からさえも。
しかもこの感じは『敵意』や『警戒』ではなく、かといって、単に『興味を持っている』感じでも無い。
というか、自分で言うのもあれだけど、なんか『尊敬』とか『崇拝』に近い気が・・・。
あれか? 自分がエルフだからか? 「エルフの森でエルフは動物に襲われない」だけでなく、動物に崇拝されてしまうとかなのか?
なんとなく嫌な予感がしたのだけど、気付いた時には完全に包囲されてる。
ヤベェよ。
というか、このの包囲力は『赤き農民』の人たちよりも圧倒的に優れていると認めざるを得ない・・・。
素知らぬ顔をで村に引き返そうとしたのだけど、「時すでに遅し」だったようだ。
前後左右上下を完全に包囲され、一つの強大な気配が近づいてくる。
プレッシャーでいうなら、『大型』の山龍と同等か、それ以上。
ガサガサと、藪をかき分けて現れたのは、ひときわ変わった生き物だった。
身長は2メートルほど。
茶色のもふもふした毛に、つぶらな瞳で、見た目はまさに『巨大な熊のぬいぐるみ』。
そして、そんな『かわいい』雰囲気をぶち壊しにするほど威圧感を放つ、鋭い爪と牙。
というか、どこかで見たことがあると思ったらあれだ。
アウラと最初に出会った時に、アウラを吹っ飛ばしてたやつだ。
ってことは・・・あれ? こいつ、アウラよりも無茶苦茶強いってことにならないか?
つまり、強さを不等号で表すと「山龍 < アウラ < くま(?)」ってことになるのか。
そっか。 この世界では龍より熊の方が強いのか。
そんな分析をしている間にも、のっすのっすと、くまのぬいぐるみ(?)がこちらに近づいてくる・・・。
ヤバい。 いや、敵意がないのはなんとなくわかるんだけど、あまりの強い存在感に、ビビって足がうごかない。
こういう状況に陥ってしまうと、あのつぶらな瞳もだんだん怖くなってきた。
ていうか、なんでこっちに向かって歩いてくるの? 自分になんか用があるの?
やっぱり、マテラかライアを連れてくるべきだったか?
今からでも逃げ出せば逃げ切れるか?
そんなことを考えながら身構えていると、クマは自分の目の前で立ち止まり、鋭い牙の生えた口を開いて・・・
こう言った。
「こんにちわぁ。 あたしのことぉ、覚えてますかぁ?」
『くまのぬいぐるみ』に相応しい、やたらファンシーな声だった。




