クエスト(5)
「チシロさま、先ほどの草の調査が終わりました」
5分ほど待っていると、マテラの調査も終わったらしい。
フードから顔だけ出しながら伝えてくれた調査結果によると「さっき回収した草は薬草ではなく、山菜でした」ということらしい。
「山菜・・・? って、どういうこと?」
「調べたところ、特に『傷を癒す』とか『魔力を回復する』などの効果はなかったのですが、栄養価は高く毒もないので、食用としては使えそうです。
ようするに普通の『食べられる野草』、つまりは『山菜』でした」
「なるほど? でも、やっぱり『山菜』じゃあ買い取りはしてもらえないんだよね・・・」
たしか、薬草採集のクエストで買い取ってもらえるのはあくまでも『薬草』で『山菜』の買い取りクエストはなかったはず。
これは、そのうち自分で食べるしかないか。
「それにしても、そもそもマテラはどうやって草の種類を調べたの?」
「それがですね、どうやら私には『解析魔法』も使えるようなのです。
いえ、私も原理はよくわからないのですが『なんとなく出来る気がしたのでやってみたら出来た』と言いますか・・・」
「ですが、私自身の『鑑定魔法』はまだ不安定で、出来ることなら落ち着いた環境で集中して作業をしたいです。
そこで、私はフードの中でひたすら鑑定魔法を使いますので、チシロさまはフードの中にそれっぽい草をどんどん放り投げていってください」
「分業制ってことね。 了解! それじゃあ早速作業を始めるけど、草なら何でも良いんだよね?」
「そうですね・・・。 出来るだけいろいろな種類の草をこまめに集めた方が良いかもしれませんが、まあ最初のうちは適当で良いです」
「よしわかった。 じゃあひとまずその流れで進めることにしよう!」
そこから、地味な作業が一時間ほど続いた。
ひたすら草を、ちぎってはフードに投げ込み、ちぎってはフードに投げ込み・・・。
幸いなことに、森を歩いていてもモンスターと出会うこともなく、順調に草は集まっていったのだけど、さすがにだんだん飽きてきたというか、腰が痛くなってきたというか・・・。
最初のうちは気合いを入れて草を集めまくっていたけど、最終的には森を適当に散歩しながら、たまに気になった草を回収して、それ以外はまあ何というか、ただの散歩のような感じだった気もする。
まあ、何事にもほどほどが一番と言うことで。
「チシロさま、日も暮れてきましたし、今日はここまでにしましょうか。
ここから少し歩いた場所に小さな村があるそうなので、今日はそこで休むことにしませんか?」