表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/694

山龍討伐二日目(蛇足)(お祭り編)(3)

「チシロよ、今しがたアウラより、『話があるので拠点に来てください』という伝言を受けた」


 お祭り会場を歩いて回っていると、ライアを通してアウラから伝言が届いたので、拠点に戻る事にした。


 流石にこの人混みの中を『歩いて戻る』というわけにもいかないので、飛行魔法を使って移動していたのだが、その途中でテンキさんとも合流した。


 テンキさんの両腕にはすでに大量の紙袋が吊るされていて、口には何かの肉が刺さった串を咥えている。

 どうやらテンキさんの方もすでに、「人手が余っている」ということで見回り業務から解放されてお祭りを満喫していたようだ。


「やあテンキさん。 さっきぶりにしては荷物が増えましたね」

「ああチシロさんですか。 チシロさんもアウラさんから呼び出されたのですか?」

「ええ、はい。 ということはやはり、テンキさんもですか。 一体何の用事なんでしょうね」

「いや、俺の方も特に何も聞いていないので・・・。 ただ、文面を読む限りあまり急いだ感じでもなさそうですし、のんびり行きましょう」


 テンキさんも、アウラから呼び出しを受けたので拠点に向かっているところらしい。

 自分の場合はライアを通して伝言がきたけれど、テンキさんの場合はステータスカードの機能を使ってメッセージが届いたようだ。


 その後数分間空中を移動すると、何事もなく拠点にたどり着いた。

 地上を移動していた時は数メートル移動するのに数分以上かかったのに、上空を移動すればあっという間だよ・・・。


 まあでも、『関係者以外飛行禁止』のルールを定めているからこそスムーズに移動ができるわけで、これがもし無制限に飛行可能だともう無茶苦茶になりそうな気もする。

 やっぱり、たとえ『飛行魔法』で自由に空を飛べる世界でも、結局「人間は二次元上を移動しているぐらいがちょうど良い」ということなのだろう。



 拠点の中に入ると「チシロさんと、テンキさんですね。 アウラさんは会議室でお待ちです」と案内をされたので会議室に向かうと、そこではアウラが一人で大量の書類と格闘していた。

 そういえばディーノさんも同じような状況だったな・・・。 なんて思っていると、アウラさんはこちらに気がついたのか、書類作業の山を一度片付けながら「チシロさん、テンキさん、待ってました」と声をかけてきた。


「アウラ、呼び出しって一体何があったの? というか、手伝えることがあるなら言ってくれれば手伝ってたのに・・・」

「そうですよ、水くさいです。 俺もチシロさんも、そうとは知らずに祭りを楽しんでましたが、言ってくれれば飛んで駆けつけたのに・・・」


「いえ、チシロさんとテンキさんの気遣いはありがたいですが、書類仕事自体は大したことないですし、『ギルドマスター』にしかできない仕事が大半なので、お二人にできることはあまりありません。

 呼び出したのもそのことではなくて、『今後どうするか』という話をしておきたかったからです。

 その、祭りを楽しんでいる最中に呼び出してしまったのは申し訳なく思うのですが・・・」


 アウラは、テンキさんが両腕に抱えている大量の紙袋を見ながら申し訳なさそうに言っているが、本気で言っているわけではないのだろう。

 それに実際のところ、自分の場合は荷物を全てフードの中にしまっているだけで、マテラとライアが結構買い物していた気もするんだけどね。


「それで、今後の話なのですが、私は一足先に『黄金』の拠点に戻りたいと思っています。

 ラビさんも準備が出来次第『ギルド』の拠点に戻るようですし、ガストフは私と一緒に戻るらしいです。

 あとついでなのですが、シロヒメさんとクロヒメさんからは『用事ができたので先に戻る』という伝言も預かりました。

 チシロさんとテンキさんはどうしますか?」


 アウラが言うには、なんだかんだ『山龍の討伐』は終わったけれど、その後の書類作業をするのには『黄金』の拠点で作業をした方が効率がいいらしい。

 ただ、その作業のほとんどは『ギルドマスター』にしかできない仕事らしく、自分は祭りを楽しんでから戻ってきても特に問題ない。


 自分たちが「残って祭りを楽しむ」ことにした場合、帰る手段として拠点の座標の指定された精霊車を用意してくれるらしいので


「マテラ、ライア。 どうしよう、まだ祭りを楽しみたい?」

「いえチシロさま、私はどちらでも良いです。 チシロさまの判断に任せます」

「うむ。 ・・・いや、我はどちらかと言うとチシロの『ギルドの拠点』とやらに早く向かいたい。

 チシロが良ければ、このまま祭りを切り上げて戻った方が我としてはありがたいのだが」


 ふむ。 ライアが意見を言うとは、なんか新鮮と言うか、若干意外な気もするけれど、そりゃそうか。

 ライアだって自分の考えぐらいあるわな。


「そう言うことなので、自分たちはアウラについて拠点に戻ることにします。

 テンキさんはどうしますか?」

「いや俺は、もう少し祭りを楽しんでいくことにするよ。

 せっかくのお祭りだし、今回の仕事で大金も手に入りそうだしな」


 そういうわけで、アウラはテンキさんに『赤胴』の拠点の座標が指定された精霊車のカードを渡し、自分たちは『黄金』の拠点に戻ることにした。


 作業中だったアウラの書類は一旦全て自分のフードの中にしまいこみ、山を降りたところまでは飛行魔法で移動すると、アウラの精霊車が見えてきた。

 精霊車に乗り込むと、すでにガストフさんは運転席で待機していたようで、早速『黄金』の拠点に向かって出発する。



 たった数日の間に色々なことがあった気がするけれど、これにて自分にとって初めてのクエストは無事完了したことになる。


 いきなり別世界に飛ばされて、戸惑うことも多かった気もするけれど、なんだかんだうまくやって行けそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ