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どうやら、どうしようもないらしい。

 転生者の『チシロ・ミト』様

 大変申し訳ありません。

 ただいま、担当者が席を外しております。

 しばらくお待ちください。


 なお、お待ちいただく間はコンソールから操作していただき、わかる範囲で転生の手続きを進めていただいても構いません。

 担当者が戻る前に手続きを完了させた場合でも、転生後に改めて連絡をいたします。



 あぁ。

 そうか、なるほど。

 要するに、自分は死んだわけだ。

 ・・・なんとなく、思い出してきた。


 あの日は、いつもと変わらない平日で

 いつものように満員の通勤電車に乗っていたら、電車が急停車し、前方の車両と後方の車両から爆発音が聞こえてきた。

 音が響くたびに、揺れや悲鳴が大きくなっていき、ふと足元を見るとそこに置いてあった怪しげなカバンが光を放つ・・・。

 そこから先の記憶は思い出せないが、どうやら自分は、爆発テロかなにかに巻き込まれたのか。

 仮にあれが爆弾だったなら、その真上に立っていた自分の身体は悲惨なことになっていたのだろう。

 まあ、幸いなことに、痛みとか苦しみとかの記憶は残っていないのだけど。



 ということは、ここは死後の世界というやつだろうか。 それとも神様の世界とか?

 担当者がどうとか書いてあるが、テロで死者が一気に出てしまったから対応が追いつかないってことなんだろうか。


 ・・・まあ、しかたがないか。

 死んでしまったものは、しかたがない。

 ここは留守番メッセージでも言っていた通り、とりあえず一人で進めてみることにしよう。

 そう思ってとりあえず、目の前に浮いている、半透明のプレートのような画面を見てみることにする。


<<転生システム>>

<<①転生にあたって、以下の優待システムを選択できます。>>

 ・獲得(物、スキルなどを次の世界で獲得できます)

 ・持ち越し(物、スキルなどを次の世界に持ち越しできます)

 ・覚醒(物、スキルなどを覚醒させることができます)

<<残り回数:10>>


 ・・・いやまて。 説明が足りなくないか?

 なんだ?これは。 あれか? 異世界で無双するためのアイテムを選べってことか? なんだ? こういう場合、何を選べば正解なんだ?

 ・・・・・。

 まあいいや。 ココはいったん保留で。

 左下にはグレーアウトされた『戻る』ボタンもあることだし、次に進んでも後から選び直しは出来るだろう。

 ひとまず、全体を見るためにも次の画面に進みたいのだが、よく見ると右下の『進む』ボタンもグレーアウトされている。当然、そのまま押してもなにも反応しない。

 と言うことは、何も設定しない状態で次に進むことはできないと、いうことか。


 ・・・そうだなぁ。

 せっかくだから、祖父と祖母からもらった、お守りでも設定しておくか。

 そう思うと、画面上の『獲得』の下に『お守り』の項目が現れた。

 「なんて気の利くシステムなんだ・・・」そう呟きつつ、『お守り』をタップすると、「進む」ボタンが灰色から赤色に変化した。ボタンを押して次の画面に進むと、また別のメッセージが表示される。


<<②転生するにあたって、種族を選択できます。>>

 ・エルフ・ドワーフ・ホビット・・・・

 ・勇者種・魔王種・奴隷種

 ・魔族・妖怪・王族

 ・(略)・・・

 ・モンスター・機械族・おまかせ


 ・・・いや、なんだこれ。

 何? つまりこれ、自分は生まれ変わったら人間以外にもなれるってことなのか?

 そもそも、選択肢に『人間』はないのだろうか。

 そう思うと、一番左上に『人間族』が追加された。

「なるほど」

 お守りが追加された時もそうだったが、基本的には「こっちがこうしたい」ってことを思うことが前提のシステムで、要するに、思いつく種族だったら何にでもなれるってことみたいだ。


 しかし、ただ人間を選ぶのは味気ないし、かといって何が良いのかもわからない・・・ここは、いったんお任せでいいや。

 そう思って『おまかせ』を選択し、『進む』ボタンをタップするとまた、次の画面に切り替わる。


<<③転生にあたって、ステータスを調整できます。>>

 ← 体力(1) → ← 知力(1) → ← 視力(1) → ← 運動神経(1) → ← 運動性能(1) →

 ←攻撃力(1) → ←防御力(1) → ← 知識力(1)→ ← 計算力(1) → ・・・


 なるほど、わからん。

 見るに堪えないシステムというものが存在するならば、これはまさにその代表だろう。

 並び順はめちゃくちゃで、似たような項目がいくつもある。

 しかも画面の右端にはスクロールバーが表示されていて、米粒ほどの大きさのつまみがポツリと乗っている。

 これだけ無茶苦茶にいろいろな項目が詰め込まれた画面が、数十ページに及ぶということなのだろう。

「これを作った人は、もう少しUIとかUXとかを学習してほしい・・・」

 まあ、がらんとした空間には聴衆もいないので、文句を言うのはほどほどにして、どんな項目があるのかだけでも見ておくことにしよう。


「・・・ん? 『想力』って、なんだ?」

 適当にさらさらと画面をスライドしていると、スクロールバーが真ん中にきたあたりで、見慣れない項目を見つけた。『想力』とは聞いたことがないが、よくあるゲームの『魔力』のようなものだろうか?

 だけど、確か上の方に『魔力』も『魔法力』もあったような・・・。


 まあいいや。 選択肢については気にするだけ無駄なようだ。ひとまず試しに、汎用性のありそうな『運動能力』に割り振ってみよう。

 そう思って『運動能力』欄の右矢印を一度タップしてみる。

 すると、運動能力の横の数値が『1』から『5』に増えた。

 と、同時に『運動神経』『スタミナ』の欄の数値も『1』から『3』に増えている。

 他の項目も『1』から『2』に成長しているものはあったが、さすがに減っているのはなかった。


 推察するに、どうやら一つの項目にポイントを割り振ると、類似した項目も同時に伸びているようだ。


 試しに、もう一度『運動能力』欄の右矢印をタップすると

 運動能力:『5』→『12』

 運動神経:『3』→『4』

 スタミナ:『3』→『7』

 全体的にステータスは伸びたけど逆に増え方の法則がわからん・・・。


「ん? あれ?」

 気のせいだろうか。画面上の数値が変わると同時に何やら体が軽くなったように感じる。

 試しに軽くジャンプしてみると・・・1メートルぐらい、身体がふわっと浮き上がる。

 ・・・おそらくだが、画面で切り替えたステータスはすぐに反映されるのだろう。

「そうだ」

 ・・・ふと、思いついた。


 この画面には、例えばさっきの『想力』みたいに、そもそもどのような能力なのかすらわからない力が、色々書かれている。

 そういう力について(最終的なステータスに反映させるのかどうかはさておいて)、どんなことができる能力なのかを知っておくのは、いいんじゃなかろうか。そうしたら、もし他の人が使っているのに出くわしたとき、情報的優位に立てる可能性もある。

 こんなことに気づくとは、今日の自分は冴えてるなぁ。


 ということで、試しに『想力』欄の右矢印をタップすると

 想力:『1』→『2』

 どうやら想力は想力だけで孤立した存在らしく、ざっと見た感じ、他の項目には影響がなかったようだ。

 そして、1から2になった程度の差だからなのか、感覚的には何も感じない。


 それではと思い、想力の右矢印を連続タップして

 想力:『2』→『3』→『4』→『5』→『6』→『7』→『8』→『9』→『10』

 ひとまず10まで上げてみるも、やはり何も感じない。


「これはあれだ。多分、元の世界になかった概念だから、違いを感じ取ろうと思ったら極端に振らないとダメってことだな」

 ここは思い切って、カンストするまで連打してみよう。

 想力:『10』→『11』→・・・→『97』→『98』

 想力の右矢印を連打していたのだが、『98』に達した時点で変化がなくなった。


 初期値が1だったので、+97まで割り振ることが出来たことになるのか。

 ん? まてよ?

 そういえば今のところ『想力+97』以外に、『運動能力』にも+2を割り振っているはずだ。

 せっかくなので『想力』に全振りしてみようと思い、『運動能力』欄の左矢印をタップして、

 運動能力:『12』→『5」→『1』

 運動神経:『4』→『3」→『1』

 スタミナ:『7』→『3」→『1』


 『運動能力』を初期値に戻し、代わりに『想力』欄の右矢印をタップして『想力』を増強する。

 想力:『98』→『99』

 すると今度は、ポイントが1余っているはずなのに、想力は99で止まった。

 ということは『想力』のカンストは99(+98)で、これ以上は伸ばせないということなのだろう。


 ・・・しかし、『想力』に極振りをしてみたのだが、これといった変化は感じない。

「うーん?」

 やはり、わかりやすい能力と、わかりにくい能力があるってこと・・・なのだろう。

 まあ、『想力』とか、ほかの能力については転生後にでも調べればいいとして、今は普通に役立つステータスにしておくことにしよう。


「・・・さて。遊びはこれくらいにして、真面目にステータスを考えますか」

 誰もいないとわかっていても、恥ずかしさをごまかすように呟きながら、

 まずはひとまずリセットするために想力の左矢印をタッ・・・プ?

 やさしさ:『1』→『30』

 想力:『99』→『100』


 どうやら、間違って一つ隣の、『やさしさ』の項目を増やしてしまったらしい。

(やさしさの伸び方がやばい。そして、ちゃっかりカンスト越えする想力。これは一体何なんだ・・・)

 ま、まあいい。システムの使いにくさについてはいろいろと文句を言いたいが、とにかく一度ステータスを元に戻そう。

 そんなことを考えながら、『想力』の左矢印をタップすると

<<ERROR : 想定外の値が入力されました。値を確認してください(入力値:100)>>


 うわぁ、ポップアップでエラーメッセージが出てきた・・・。

 ならば、と思って『やさしさ』の左矢印をタップしても

<<ERROR : 想定外の値が入力されました。値を確認してください(入力値:100)>>

 全く同じメッセージが表示される。

 他の項目は、触ってみても反応がない。

 しかたない。ステータスは一旦あきらめて、前の画面に戻ろう。

 そう思って『戻る』ボタンをタップすると

<<ERROR : 想定外の値が入力されました。値を確認してください(入力値:100)>>


 ・・・ああ、なるほど。

 戻ることすらできないとは・・・。これでもし、進むボタンも押せなかったら、本格的に詰みの状態になるわけだが・・・

「どうせ、反応しないんだろ・・・」

 そんなことを考えて、『進む』ボタンに触れてみると・・・

<<以上で、転生の手続きを終了します。お疲れ様でした>>


 画面が切り替わり、視界が白く染まっていく・・・。

 ・・・え?

 なんてこった。

 なんてこった。なんてこった。なんてこった。なんてこった。なんてこった。


 チシロ=ミト(水音 千代)

 転生特典:お守り

 種族:おまかせ

 やさしさ:『30』想力:『100』


 想力って、なんだよ・・・優しさが、何の役に立つんだよ・・・!

 そんな思いを無碍に、自分の意識は遠のいていく。

 ・・・転生前からこんなにやる気を削がれた転生者が他にいるだろうか。

初めましての方は初めまして。

読み返し勢の方はお久しぶり?


作者のみもももです。

ご存じの方もいるかもしれませんが、当作品はこの後書きを書いている時点で600話以上あります。

なので、スムーズに読んでいただくためにも、ブックマークしておくことをおすすめします。

(しかも、ブックマークすると作者が喜びます)


あと、50話ぐらい読んだ時点で、評価することを思い出してもらえるとうれしいです。

50話も読んだぐらいだから、楽しめたってことですよね。きっと貴方の評価は

「★★★★★」のはず。

素直な評価をお待ちしています(圧)

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― 新着の感想 ―
これからの生活が掛かっているんだから、必死になって考えて選択してほしかった。
[一言] 出落ちかもしれんが面白いw
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