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寝汗

作者: halzey

熱帯夜だった。じっとりと汗ばんだTシャツが気持ち悪くて目が覚めた。

昼も夜もずっと着ているから汗を吸ってしまって不潔だ。だが、誰に見せる訳でもない外見の優先度は限りなく低かった。水でも飲むかと立ち上がり、台所の蛇口を捻る。流れ出る水流に直接口をつけようと腰を曲げて顔を捻ったときだった。何気なく向けた視線は窓の外のあるものに止まった。

人がいた。暗くてよく見えなかったが顔の部分だけが薄ぼんやりと見える。向こうもこちらを見ている?

もっとよく見ようと顔をあげて視線を逸らした瞬間にそれはいなくなっていた。

ぼんやりと浮かぶ疑問。なんで?なんで。ここは4階なのに。と、その疑問の輪郭がはっきりしてくるにつれて恐怖の感情が浮かんだ。

ドク、ドク、と自分の鼓動が妙にうるさい。汗ばんで体に張り付いたTシャツが冷たかった。

気のせいだと半ば自分に言い聞かせるようにして、蛇口を閉める。安心できる材料が欲しくてもう一度窓の外に視線を向ける。目を凝らしてみたが、アパートの庭先にある木の枝以外は何も見えない。安心からかため息がでる。

再び布団に横になるも、先ほどの事が頭をよぎって寝付けない。

さっきの人影は2人だった。表情までは分からなかったが、こちらをじっと見つめる人と、うつむいて下を向いている2人だ。

気のせいに違いないと思いつつも、このまま眠れないのも嫌なので、もう一度確かめてみる。

そして、思わず吹き出してしまった。木の枝葉の加減で人の形に見えるのだ。

幽霊の正体見たり枯れ尾花とはまさにこのことだ。何度確かめてみても人がこちらを向いているように見える。

もう一回水飲むかと蛇口を捻り口をつけようとして、もう一度窓の外を見る。

一人しかいない。


流れる水もそのままに布団を被って耳を塞ぐ。

今は蛇口を閉めることよりも寝汗のしみたTシャツが気持ち悪いことよりも、布団の周りをすたすたスタスタ歩く何者かがどこかに行ってくれることを願うばかりだ。


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