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幽霊兄ちゃんのゴーストライフ  作者: ハーフィ
第一章 幽霊化
1/3

僕、死亡

はじめまして。ハーフィです。初めて投稿する作品なので、感想よろしくお願いします。

昔、とある神社で聞いた話だったが霊、というのは


振り返ってみればいろいろと悔いの残る人生だった。


死んでから後悔しても無意味だと言うのは分かりきっていたことだというのに。

僕が生まれたのは『普通』がピンポイントで当てはまる一家からだった。


大切な物は失ってから分かる。


陳腐な表現だが言い得て妙だ。もう無くなってしまったモノは手に入れられないというのに。

例え、気付いたとしても手遅れなのに。



僕が高校1年の頃

お父さんと、お母さんは、死んだ。

その日はお母さんの小言についイラっとして心にもない暴言を吐いてしまった日だった。ショックを受けたお母さんを慰めようと、お父さんは二人きりでデートに行った。



聞いた話によれば、赤信号で停車中の両親の車が酔っ払い運転していたトラックに衝突されたという。


当然即死。


もし、僕があんなことを言わなければ・・・。

僕が病院に向かって両親の死体を見た時、意外と綺麗だったのがせめてもの救いだろう。




それからは、僕と妹の二人きりになった。


ああ、本当はもっと早く言わなくてはならなかったけれど僕には妹がいる。


二歳年下の、優秀で、皆から愛される、妹。あらゆることに取り組んでは、あっという間に上達してしまう。


はっきり言って家族では僕が一番いらなかっただろう。


だが、そんな妹はこんな僕を兄として慕ってくれた。


よく慰められたり、ちょっといい事すると喜んでくれたりした。

生まれてくる順番が違えば、面倒見の良い姉となっただろう。

僕が思うに、家族の中では一番多く触れ合った肉親だろう。


そんな妹は部活で出かけていたのでドライブには行けなかったのだ。


そして、連絡を聞いて病院に向かったのだった。

その妹は、親の遺体を見て目が腫れるほど泣いていた。真珠のような水滴が床に落ちるのを、俯いていてそれが視界に入っていた僕はよく覚えている。


結局、だれが死のうと時間と言うものは平等に与えられ―――――

特に語るべきものもない時を無作為に過ごし、僕は高校2年生になった。

妹は中学3年生。


両親を失ってから、僕、好島正鷹このじま まさたかはたった一人の妹、好島里香このじま りかと暮らしていた。




その日も嫌な授業を終えてさっさと帰ろうかと思っていた。校門を出ると、妹が待ち伏せしていたのだ。


「お兄ちゃん!今日は一緒に帰ろう!」


こういうことはよくある。里香と帰るときは途中で何か買ったり、遊んだりすることが主だ。


「今日は部活お休み?」


「うん!今日は先生が会議があって」


「ふーん、じゃ、今日はどこ行こうか」


里香も両親の死を克服し、笑顔を見せている。


僕もこういう日常が無自覚ながら気に入っていた頃だった。



いつもの日常と違ってしまったのは僕達がファミレスから出てきたときだった。




「きゃあああああああああ!!」


悲鳴と喧騒が沸き起こる。人々が逃げまどう中、袋を担いだ一人の男性が包丁を構えて走っていたのだ。


「どけ!どけ、どけどけ邪魔だああああ!」


なんだあれは。銀行強盗か何かか。僕達はつい足を止めてその男を見ていた。


すると、何を思ったか強盗はこちらに向かって走ってきた。


「え・・・」


強盗はまっすぐ里香の方に向かってくる。里香は恐怖のためか硬直していた。


包丁は里香の胸に伸びていく。




僕の感覚はいい気に引き延ばされ、記憶の中で両親の死を思い出していた。

触れてもただ、冷たい感触しか返さなかった二人。





僕の手は里香を突き飛ばしていた。



直後に襲ってくる鋭く、冷たい感覚。


胸には銀色に輝く物。そして、あふれ出る真っ赤な液体。


痛い・・・のか?


痛みがあるのかどうかもわからない。道路に倒れる衝撃もさほど感じない。



ただ、漠然と分かる。僕は死ぬんだな、と。


「お、おに、っ、お兄ちゃん!!!」


真っ青になった里香が駆け寄ってくる。


すぐに涙が盛り上がって零れ落ちた。


「やだよっ・・・!死んじゃやだよ・・・!なんでっ、なんで!!一人にしないで!!!」


あ、僕のためにないてくれてるのか。


なんだ、ほんとは僕の事嫌いなのかと思ってたのに。こんな僕の事。僕のせいでお父さんとお母さんは死んでしまったのに。


僕なんかのために。


両親が死んだときも、涙を流さなかった僕なんかのために。




でも、これで両親の所に行けるかも。


せめて、そこからやり直してみようかな。まずは、謝ってみよう。そして、今度は幸せな家庭にするんだ―――。


ごめん、里香。置いていっちゃって。ちゃんと兄としての役割を果たせなかった。


意識が薄れてきた。


里香の顔が暗闇に閉ざされる――――。













僕の足元には一人の少年。そしてそれにすがりついて泣く少女。


なんだこれ、天国か?地獄か?僕は地獄に行きそうだけど。なんか妙な感じがするぞ。


って、あれは里香?


じゃ、これは―――


僕の死体!?


え、マジで!?


待て、これは死語の世界に行くのにタイムラグがあるのでは?


・・・違うみたいだ。


「おいおいおい」


僕は天を仰ぐ。



僕はどうやら幽霊になってしまったようだ。




どうでしたか?おもしろかったらこちらも幸いです。

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