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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第六話

日付を何度も間違えそうになるので、0時更新から、23時更新に変更しました。

 二人で乾いた服を着て、ポーチは仲良く山分け。騎士の長剣(ロングソード)は鞘ごと僕の剣帯に、短剣(ダガー)はエルヴィーラが護身用に持つことになりました。


 背負い袋を装備して、街までの旅を再開なのです。お互いにサイズがおかしいけど、今は、贅沢は言えないよね。それにお金も山分けしたので、街までの我慢なのです。


 ちなみにお金の分け方は、金貨を僕が、それ以外をエルヴィーラがって感じで話が纏まりました。まぁ、僕は戦場で手に入れた銅貨を持っていたしね。


 男たちの荷物を漁りに戻る事はしていません。そこまで時間をロスしたくなっかったのと、後、エルヴィーラも戻るのには否定的だったからですね。気持ちは分かるし、特に困る事にならないだろうって思うからさ、僕が来た獣道を戻って街道を、今は二人で並んで歩いています。


 こうして隣に立つと、エルヴィーラの方が少しだけ身長高い気するんだよね。170センチぐらいあると思うよ。美人でスタイル良くってさ、色々と得してそうだけど、話を聞くと、そうでもないみたい。世の中、そんなものなのかもね。


 まぁ、年齢を聞いたら、さすがに驚いたけどさ……なにせ215歳と、200歳も年上でした。ファンタジーです。まぁ、種族的に長寿で人間の十倍だって覚えてればいいらしいから、21歳ぐらいってことだよね。外見とも合っているので、そっちで認識する事にしました。


 こうした他愛のない話をして歩いていると、見えてきました大きな石造りの城壁が。


 あれが、この南部帝国でも最南端の城塞都市にして目標の街「ストーンヘッド」です。総人口が万単位ともいわれる大きな都市。3重の城壁が囲っています。一番外周の大きな城壁には東大南北に大きな門が見えて、各門の先に今進んでいる街道と同規模の道が続いていたよ。


 僕は、もっと小さな地方領主のところで兵として鍛錬していたので、この街に来るのは初めてです。


「へぇ、大きな街なんだね。エルヴィーラは来たことあるの?」


 初めて見る大都市に、目を大きくして隣を歩くエルヴィーラに聞いてみました。ここまで一緒に旅をしているんだし、美人だし、僕の方が友好的になるのは仕方ないよね。


「えぇ、何度かはあるわ。傭兵として仕事柄、色々な場所を旅してたからね」


 田舎者で世間知らずだって正直に言ってあるから、優しく微笑みながら丁寧に教えてくれたんだよね。感謝なのです。


 説明によると、外からの人間や旅人は基本的に一番外の外周にしか入れないみたい。真ん中の区画は街の人の区画で、手続きして許可を貰っている商人さんなんかは入れるけど、中心部分の街の支配者たる貴族さまの一族が住む区画には、招かれでもしない限り入れないんだって。要はお城ってことですね。


 こんな作りだからかな。外周部が一番活気があるけど、治安もよろしくないらしいです。でも本当に、治安が最悪なのは、南側城壁の外に広がるスラム地区らしいです。


 あれ?その近く通るよね、僕たち。なにせ南の街道から来ているんだからさ。これは日が沈む前に、南の城門まで進まないとだよ。すっかり夕方だしね。僕もみすぼらしい恰好だし、美人のエルヴィーラと二人だと目立っちゃうしね、どうしてもさ。


 少し速度を上げて二人で城門に来た頃には、日が沈みきる際どいタイミングでした。


 いつもどうしていたのか、エルヴィーラに聞いたらさ、人の多いところじゃ、フード付きのマントを羽織って、姿を晒さないように旅していたんだって。納得です。


 歩いているだけで「気配察知」に凄い勢いで反応あったしね。


 城門が締まる前に滑り込めたので、右の門番の詰め所に向かいました。門が大きいからさ、反対の左の方にも詰め所があって、各詰め所には十人以上の兵士さんが常駐しているっぽいのです。


 そこで、門番をしていた若い兵士さんに、この国の兵士として戦争に参加したけど、部隊が全滅しつつも、なんとか逃げ延びてきたけどと、嘘と本当、半々で説明したら、心配されちゃったよ。新兵だって言ったしね。


 エルヴィーラについては、途中で知り合った傭兵を臨時で雇う形で護衛して貰ったって説明しました。敵側だったなんて言えないよね。それにダークエルフの傭兵って、南部じゃ普通らしいんだよね。


 もっとも、女性は珍しいみたいだけど……兵士さん、視線がエッチなのです。いえ、気持ちは分かるのですけどね。


 一応は、兵士として嘘ついてないか、指先を傷つけてちょっと出た血を、何かのマジックアイテムだと思う水晶に触れさせて確認する作業があったけど、ある意味感動しましたですよ。


 これで身の証を立てられたので、さっくりと兵士を辞める手続きもして貰いました。いや、当初の予定通りだったけど、よく知っていたなって驚かれました。やっぱり知らない人が多いみたいです。


 もっと嫌みな言われ方をするかと身構えていたのですが、親切な若い兵士さん、初の実戦で部隊が全滅したら、兵士も嫌になるだろうとか、理解の色を見せてくれたです。いやぁ、本当に親切なのですよ。おまけに、戦争に参加して生き残ったってことで、雀の涙ほどですが報奨金も出す手続きしてくれました。


 半分は、街に入るためのお金や税金として取られたけど、銀貨15枚が手元に残っただけでも幸運なんのです。普通、戦争なんて数年に一度ほどしかないので、生き残った兵士のボーナスみたいなものだよね、感覚的にだよ。


 これで衣服や装備を買ったり、宿に泊まるぐらいはできそうなのです。街に入る頃には、すっかり日が沈みきっていたので、親切な兵士さんに教えて貰った宿に今日は二人で向かう事にしました。


「親切な兵隊さんだったね。下心ありありだろうけどさ」


 歩きながら、隣を歩くエルヴィーラに話してみると苦笑されました。不躾な視線に晒された張本人だし、気持ちは分かるけどさ。


「まぁね。比較的大きな街だから、自分の知っている宿に泊めさせて近づく切っ掛けに……って、ところでしょうね」


 うん、僕もそう思うよ。若い兵士さん、仕事中にはさすがに口説くなんてできないだろうし、だったら好感を上げるように振舞って、じっくりと……視線が隠せなかったけどね。別に悪い事じゃないから、素直に僕は好意に甘えますね。


 明日、エルヴィーラが宿替えていても、僕の責任じゃないし気楽なのです。


 小さく笑って同意するように頷くと、紹介された宿に到着しました。まぁ、外見は普通の木造二階建ての家みたいだったけど、奥に広い宿みたいだね。


 二人で宿に入ると受付のおじさんに部屋は別々に……と、思ったら、え?一室しかないの?


 まぁ、この時間だし、兵士さんの紹介ってことで一部屋だけ準備してくれたみたいだから、他の宿も、この時間からじゃ怪しいよね。それに、せっかくベッドで休めるんだから、ぜいたくは言えないかな。


 エルヴィーラの方を見てみると、仕方ないと小さく肩を竦められたので、一緒の部屋に泊まることになりましたです。

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