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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第一話

本編開始です。

 痛い……痛たた……ちょ!マジで痛すぎるんですけど!


 なんだか理解できない痛みに襲われて、ぬかるんだ地面の上を転げまわるしか出来ないんですけどー!


 何これ?本当に何これ?どういうこと?い、痛ー!


 どれくらい転がっていたのか、七転八倒なんてレベルじゃないですよ。数時間だったのか、数秒だったのか。体験したことのない痛みが徐々に引いていくと、涙、鼻水、涎、汗まみれで地面で大の字になって、どんよりとした厚い雲に覆われた空を見上げていたのです。


 粗い呼吸を落ち着かせようと、胸を何度も激しく上下させているのは理解できるけど、コントロールなんてできないですよ。


 脳みそに酸素が充満すると、少しずつ記憶が鮮明になっていきました。


 どうやら、僕の魂は世界を超えさせられて、この肉体に入ったみたい。感覚的に分かるけど、この肉体の前の持ち主も、ちょっと前まで死んでいたようです。この戦争に参加していたけど『精霊魔法』の一撃が運悪く直撃。そのまま吹き飛ばされて頭から落下して死んだみたいなのです。


 肉体の記憶と、魂の感覚で、僕の現状は把握できたけどさ……だから、周囲は焼け野原の荒れ地なんだね。まさに戦場跡って感じですね。


 周囲には、まだ煙が立ち込めているけどさ。周りに人の気配はなし。生き物の気配もなし。


 さっきの痛みは、肉体に魂を定着させ、肉体を修復させる痛みだったんだろうね。だから、魂の記憶に従いつつ、肉体の記憶も合わさって、今の僕が生まれたと……誰だか知らないけど中途半端なことを。


 あっちの世界の記憶を完全に持って来れていたら知識チートだったかもだし、もっと強そうな肉体に魂が定着していれば肉体チートにもなれたかもだけど、新人兵士の肉体に、穴抜け記憶が合わさってもねぇ。まぁ、肉体の記憶から、こちら世界の事は、少しは理解できたし、言葉や文字の読み書きも問題ないのが僥倖かな?


 一応、南部帝国に辺境の蛮族が攻め込んできたので領地防衛戦に参加した、貧しい周辺農村から出兵してきたのが、この肉体の記憶なんだけどね。村では一番の力持ちだけどさ、頭の回転が凄く鈍すぎて、騙され気味だったみたいです。


 力仕事では役に立っていたみたいだけど、村を治める地方の帝国貴族領が配布した徴兵に親の説得で……支度金は親元に全額……うん、綺麗事は言わないよ。口減らしされたよね、これって。


 その後、兵士として最低限の訓練と学習。なるほど、この時に文字を教わっているんだね。前の体の持ち主は理解してなかったみたいだけど、覚えていたみたい。あれ?この頭、ある意味では天才だったんじゃないのかな?色々な事を鮮明に記憶しているんですけど。


 まっ、いっか。死んだらそれまでだし。


 で、兵士としての訓練で「スキル」を覚えた訳なのですが、「スキル」って要は一種の魔法なのですよ。


 『精霊魔法』と『肉体魔法』の二種類が、この世界では一般的な魔法みたいなのです。もちろん広い世界には例外も存在すると思うですけどね。


 僕の前の肉体を殺したのが『精霊魔法』。


 この世界に居る精霊と契約し、その属性にそった不可思議な現象を起こすって感じで、僕の知っている一般的な魔法のイメージは、こっちですね。攻撃に使用した場合、威力は強力だけど、発動までには時間が掛かって、魔力の消費も多いためあまり乱発できない、とかの欠点があるのかな?


 それに対して『肉体魔法』は、消費は少なくて、魔力の自己回復量と消費量が釣り合って常時発動できるけど使用者個人に対してのみ効果があるってイメージ。


 15歳前後で成人するこの世界では、その年齢前後に覚えるのって一般的に思われているみたい。それに、どんなに才能があり努力しても、生涯で四つも覚えられたら恩の字らしい事実。


 それが生物としての限界で、大概は職に応じたスキルを習得するみたいです。だから徒弟制度は、どの国でもしっかりとしているのですね。


 別にスキルはなくても、戦えたりするみたいだけど、少しでも有利に戦いたいって誰でも思うよね。だから若い新兵に兵士として役に立つスキルを教えようと、実戦的な訓練をするのは理解できるよ。戦闘スキル覚えた兵士が一人でも増えれば儲けものだよね。


 そんな、教育を施されたはずの新兵だった僕のスキルなのですが……


『剣術』

『状態異常耐性』

『気配察知』


 ……の3つ。


 普通は兵士って槍だと思ったら、ここでも前の肉体の持ち主、周囲に騙されて、地方領主の息子の剣の相手=的にされていたみたいだね。


 だから覚えたのが『剣術』と『状態異常耐性』って泣けてくるんですけど。


 おまけにさ、他の新兵の訓練のためって理由でさ、獲物役として追いかけ回された結果覚えたのが『気配察知』って、さっきはそれで生き物の気配を感じられたようだけど……これは完全な虐めですよね。


 あれれ?村では何も習得してないって、本当に悲しすぎるんですけど、僕。


 農作業関係で一つは持っているのが農民だろうと農奴だろうと同じはずなんだけど。成人する前に徴兵されたみたいだし、村では馬鹿にされて見下されていたのです。


 ちょっと自虐的すぎる思いに囚われそうになったよ。


 なるほど。享年15歳は、魂と同じ……あっ!彼女いないのも童貞なのも一緒……そんな共通点はいらないのです。


 普通、新兵って先輩とかがさ……うん、扱い考えたら無理ですよね。そんな親切な人の記憶がまったくないのです。


 本気で悲しくなってきたけど、いつまでも寝ているわけにはいかないし、近くの街に向かいましょうかね。帝国が勝っていたら、無事だろうし、生き残ったら兵士として報酬金が出るはずなのですよ。


 さらに一度でも戦争に参加すれば、兵役から解放されて、帝国の自由民にしてもらえる制度もあるみたいだし、それも活用しないとね。また戦争で捨て駒にされるのだけは回避しないと。


 でも、この規約、記憶に残っている書類の隅っこに小さくしか書かれていなかったんだよね。僕の魂が肉体に定着する時に、混乱しないようにだと思うけど鮮明に思い出せてよかった。かなり詐欺っぽい書類だと思うし、普通は分からないまま、一生を平兵士として使い潰される可能性が高すぎます。


 怖い世界に来ちゃたんですね。


 うん、無理だけどさ、早くも帰りたくなってきました。

拙い文章ですが、ゆっくり更新していきます。

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