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4月25・26・27日
花鳥もみな行きかひてむば玉の夜の間に今日の夏は来にけり(紀貫之)
少し気が早いが、少し夏めいた日が続く。もちろん、また冷え込む日や、雨の日があるだらうが、夏へと向かつていく。紀貫之もこんな艶つぽい歌を残してゐる。隠れた佳品。
春雨の檜にまじる翌檜(飯田龍太)
夏日から一転、今日は雨でひんやりした。しかし季節は夏へ夏へと向かい、植物は育つのを感じる。掲出句の飯田龍太は蛇忽の息子。近現代俳句の大御所の一人である。爽やかな作品。
思ひたつ鳥は古巣も頼むらむ馴れぬる花のあとの夕暮(寂蓮)
秋の夕暮れで名高い寂蓮だが、春の夕暮れも優美に仕上げてゐる。崇徳院の春の終はりの歌の本歌どりと思はれる。今日は快晴。仕事場まで歩く道、つつじの花があふれてゐた。晩春の風情。