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4月16・17・18日
春宵の酒場で一人酒すする、誰か来んかなあ、だあれも来るな(石田比呂志)
上品なフモウルの中に漂ふそこはかとない悲しみ。「人間とて金と同じで寂しがり屋ですから集まるところに集まる」も上手い。石田比呂志先生は軽妙に、しかし鋭く世の中を皮肉る独自の境地を確立なさつた。
菜の花といふ平凡を愛しけり(富安風生)
新年度、まだ仕事が本格化しない。たまに鉄道に乗ると桜は盛りを過ぎたが菜の花の黄色は河原などで美しい。富安風生は高浜虚子の高弟であり、戦前から戦後にかけて政府の高官でもあり、悠々とした作風を確立した。
たんぽぽや日はいつまでも大空に(中村汀女)
また仕事先の話だが、桜の花びらが降りしきる公園を散策したら、大ぶりのたんぽぽが元気に咲いてゐた。美しい。たんぽぽは薔薇やひまはりにはなれない。しかしたんぽぽにはたんぽぽの幸福せがある。