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ある妻の独り言

作者: タカノ

初投稿です。


ファンタジーもどき

コメディもどき


もどき短編です。

わたしの旦那さんは美人さんです。


さらさらの黒髪。

透き通るような白さの(しかも張りのある)、ニキビもシミもない肌。

つやつやプルンな唇。

切れ長の瞳は髪と同じ漆黒。

一見するとクールビューティーとゆーやつですが、右目の下にある泣き黒子が色っぽい。


但し、あくまでも女性的ではなく、男性的な美人さんなのです。


そんな旦那さんのお仕事は、旦那さん曰わく子守り、だそうです。

旦那さん、子供好きなのでしょうか。とてもそうとは思えませんが。未だにきっちり男性用避妊薬を服用してますし。

それに、わたしだったら旦那さんみたいな美人さんにお守りされるのは遠慮したいですけど。

美人さんは観賞用ですよ。自分より美人さんな旦那さんだなんて。

わたし、被虐趣味はないんですけどね~。


旦那さんは朝からがっつりご飯を食べるので、わたしの朝は忙しいです。

起こすのも、細心の注意を払わなければ、わたしが食べられます。

嫌いじゃないので、たまにわざと食べられますが。


夜は夜でラブラブします。

とっくに新婚期は過ぎましたが。

基本的にスキンシップ過多の旦那さんに慣らされました。

今日も帰ってきた旦那さんの抱き人形となっております。

夜ご飯は旦那さんの膝の上で、お互いにあーん、です。

食べにくいんですけどね。わたし、早食いなので旦那さんのペースが遅すぎるのもイラッとします。

でも一度拒否したら本気で泣かれたので、諦めました。

今では一口50回噛んでます。

健康的だと思うようにしています。

たまに、というか頻繁に、ご機嫌な旦那さんの顔面に蹴りを入れたくなりますが。

わたし、体柔らかいですから、座った状態で蹴りも踵落としも回し蹴りも出来ますよ。


ご飯が終わったら、夫婦の時間です。

子供はまだいませんので、お互いに好きな時にお誘いをかけます。

かわすのも乗るのも気分次第。

わたしのお誘いは成功率100%ですが、旦那さんのお誘いはほぼ100%かわしております。

友人から性格悪いと言われますが、美人さんの切ない顔は好物です。

やり過ぎるとかなり激しい反撃を食らいますので、加減の難しさも燃えます。


ですが、今日はなんとなくやめておいた方がいいような感じです。

旦那さんは思いっきりその気のようですが、わたしはこういう勘を大切にしているのでお断りをします。

わたし自身に関係していないようですが、なーんかヤな感じ、というやつです。

その場合、殆ど旦那さん関連になるので、しつこくお誘いしてくる旦那さんに何とか離れてもらいたいのですが。

や、巻き込まれるのはイヤじゃないですか。




………イヤって言ったのに。




がっつり食われました。

旦那さんは美人さんですが、中身は肉食獣です。

動けません。

喉もカラカラです。

明日は筋肉痛でしょうか。

いくらわたしの体が柔らかくても、あんな体位は無茶でしょう。

いずれきっちり報復させて頂きます。


旦那さんはものすっごいご機嫌さんで、スキップしそうな勢いです。

美人さんのご機嫌笑顔はとっても眼福ですが、何となく納得出来ません。

いそいそとわたしの体を綺麗にしてくれるのは有り難いですが、なんとなーくヤな感じ、というのはまだ続いています。

何なんでしょう。


わたしがぼんやりと考えていると、旦那さんは上機嫌のまま寝室を出て行きました。

真っ裸で。


男の人は真っ裸でも恥ずかしくないのでしょうか。

あんなに美人さんの旦那さんなのに、事後は裸族です。

平気でぶらんぶらんなアレだとか晒して寝室を出て行きます。たまに臨戦態勢バッチコイ状態の時もあります。

一応、我が家には使用人がいるのですが。

いつかセクハラで訴えられるかも、とヒヤヒヤしています。

一度旦那さんがセクハラされたら気をつけるようになるでしょうか。

せめてローブを羽織る位はしてほしいものです。


真っ裸の旦那さんがコップと水差しを持って戻って来ました。

カラカラと氷の音がわたしを誘います。

旦那さんはベッドサイドの低い棚をテーブル代わりにすると、少し肌寒く感じたのかローブを羽織りました。

これで少し安心です。

下手に真っ裸の旦那さんを見ると、再び襲いかかってきますから。


氷で冷やした水を注いだ旦那さんが、動くにはまだ時間がかかりそうなわたしを起こしてくれます。

わたしの体にきちんとシーツを巻き付け、しっかりと筋肉のついた腕が安定感ばっちりです。

唇にコップを当て、ゆっくり流し込まれる水は美味しくて。

飲み干したわたしは満足の溜息を零しながら、内心で首を傾げていました。


なーんかヤな感じ、はまだ続いているのです。

けれどわたしの身にも旦那さんの身にも、なーんにも起こっていません。

わたしの勘が外れるなんて。

余計に不安を感じてしまいます。


旦那さんはわたしを再びベッドに寝かせると、風呂に入ってくると言って寝室から出て行きました。

アレ?と思ったのですが、下手に質問すれば襲われます。

行ってらっしゃい、と言えば、ものすごーく残念そうな顔をされたので、スルー万歳。

旦那さんが戻ってくる前にさっさと寝てしまった方が良さそうです。

いえ、まだ目がさえてますからムリですが。


しかし、あのなーんかヤな感じというやつは何だったのでしょう。

自分に降りかかるのであればもう少し具体的にイメージを感じるのですが。

今も感じているのですが、どうにももどかしいですね。


お風呂に入ってきた旦那さんが戻って来ました。

水も滴る美人さんです。

少し気だるい感じが色っぽいですね。

眼福です。


と。


空気の積み重なるような、透明な音。


あら、あらあらあら。

これって召喚陣の構築音ではないですか。

ふむふむ。

召喚対象は男性。魔力容量も最低ランクが指定してあります。ランク以下の男性は対象から外れるようです。

ほほう。対象者は【勇者】として召喚、ですか。

旦那さん、勇者ですって。


ぶはっ。

腹筋崩壊しそうです。


これがあのなーんかヤな感じ、の理由だったようです。

ちなみに旦那さんはこれっぽっちも気付いていません。

魔術や魔力操作はわたしの方が優れてますから。


旦那さんが勇者、ですか。

ぐふっ。

いけない、いけない。旦那さんが不思議そうにわたしを見ています。

バレたら旦那さんのリアクションが楽しめないではないですか。

我慢です、わたし。


あ、そろそろ構築が完了しそうです。

ふわんと金色の光が舞い始め、旦那さんが驚いた顔で周囲を見回します。

どうやらやっと召喚陣と気付いたようですが、もう遅いですね。

キラキラし始めた空間から逃げだそうとしていますが、逃げ切るには遅く。


ああ、旦那さんが泣きそうですねー。

あ、今泣き出しました。

可愛いです。号泣しないでしょうか。

此方へ必死に腕を伸ばしていますが、わたし、さっきまでのあれやこれやで動けませんー。


はい、さーん、にーぃ、いーち。

行ってらっしゃ~い。


消える寸前の旦那さんは、それはそれはイイ泣き顔を見せてくださいました。

これで心置きなく爆笑出来ます。





腹筋が鍛えられました。





能力が戦闘方面に特化している旦那さんですから、自力での帰還は不可能です。

無駄の多すぎる陣の構成とお粗末な魔力の寄せ集めを視れば、還すのもムリそうですね。

因みに、初めて見た異性へ好意を持つよう構成されていた部分は消しました。

どうせ恋愛感情を利用して留める為のものです。必要ありませんから。


わたし、浮気は許しません。


さて、ゆっくり休んで体調を万全にしたら、お迎えです。

ええ、慣れたものですよ。

なにしろ旦那さんが召喚されるのはこれで三桁超えです。

召喚というのは代理戦争みたいなものなので、戦闘能力特化タイプの旦那さんはもってもてなのです。

美人さんなのに。

一見、魔法使いタイプなのに。

徒手空拳から戦闘兵器までなんでも扱えますよ。


意外と本人はあの美人さんなお顔がコンプレックスだそうです。

まあ、わたしの好きな男性のタイプが筋骨隆々のマッチョなタイプで、顔も厳つい方が好きだから、ですけど。

タイプじゃなくても結婚したのですから、わたしの気持ちも察して欲しいのですが。

ちゃんと夫婦性活だって送ってますのにね。


まあ、そんなとこが可愛いんですが。


旦那さんを可愛いと言えるのは、姉さん女房の特権です。

なにしろ、旦那さんのオムツも変えましたし、ミルクも飲ませてあげましたからね~。


さて、そろそろ寝ましょう。


そういえば旦那さん、ローブ一枚でしたね。

性別を間違えられる事はないでしょうが、下着も無しなんて、召喚直前の行動が推察されそうで恥ずかしいですね。

迎えに行ったら姿を隠してちょっと様子見しましょう。


いえ、旦那さんの様子を見て笑おうだなんて思ってませんよ?

襲われて慌てふためく姿を観察しようだなんて、思ってもいません。

旦那さん、美人さんですからそーゆー趣味の人に大人気、だなんて知りませんとも。


くふっ。


さて、寝ましょう。


おやすみなさい。


読んで頂き、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと不思議で、謎も残りますが、面白かったです。 楽しみました。 一種独特の味がありますよねぇ。
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