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何処

あっという間に夏休みが終わってしまった。

パパは何事も無かったかの様に毎日仕事に行き家では相変わらずで、リーナの事なんか忘れてしまったかの様だった。

でも、それが本当なのかもしれない。

だってパパはそうやって今まで過ごしてきたのだから。

誰にも言えない事をやり遂げ次のミッションにつく、色々な人と出会い危険な目に遭っても何とか切り抜けてきたのだから。

でも、何も知らなかった私は違う。

リーナと出会い。

パパの事、そしてママの事を知ってしまった。

パパはこれからも独りで歩き続けるのかな、私に好きな人が出来て結婚してパパと離れても。

そんな事を考えると胸が締め付けられて涙が出てくる。


「菜々海、大丈夫? リーナさんが帰ってしまってからずっとそんなでしょ」

「だって、パパが」

「はぁ~ パパさんには難関かなぁ」

「そんな事ないもん。パパは凄く格好良いんだから」

「会いに行けばいいじゃん」

「可奈、実はね事情があってリーナが何処に住んでいるか知らないの」

「えっ、でも」

「パパは多分……知らないかも」

それは推測にしか過ぎないけれど早苗さんの話ではパパはリーナが何処かの令嬢としか知らされていない。

それに裏の仕事では不用意に対象者に踏み込まずミッションをコンプリートさせるだけ。

今回ならリーナを2週間保護して依頼人に空港で引き渡して終わり、結果から言うと1週間だったけど。

感情なんて何処にも無く。

冷徹に完璧にクリアーすれば良い。

ただそれだけ?

本当に?

私はそんなの絶対に嫌だ。

何だか怒りが沸々と湧き上がってくる。

「もうすぐ秋の連休なのにね。何がシルバーウィークよ、まるで年寄みたいじゃない」

「私、パパに自分の気持ちをぶつけて実力行使に出る」

「菜々海が本気になったらパパさんが可哀想だよ」

「駄目、もう引き下がれないもん」

パパが今日は定時で帰ってくるって朝言っていた。

何からぶちまけようかと頭の中を整理しながら急いで家に向かう。


ドアを開けるとパパの革靴がある、勢いに任せてパパを呼ぶ。

「パパ、何処にいるの!」

「ただいまじゃないの?」

2階からパパの声がして階段を駆け上がってパパの部屋のドアを勢いよく開けた。

「パパ!」

「どうしたのそんな顔をして」

「へぇ、何をしているの?」

パパは自分の部屋で出かける準備をしている。

それも1泊や2泊じゃないのは一見して判る、今までもこんな事があった。

パパがしばらく家を空ける時と同じ準備だ。

一瞬で頭が真っ白になった。

「何処に行くの?」

「菜々海も準備して少し寒い地方だからそれなりにね」

「う、うん。判った」

「明日の朝は早いから急いでね」

パパの言葉に押し出されるように私は自分の部屋に向い準備を始める。

何だか勢いを根こそぎ削がれてしまった。

「パパ、電車なの?」

「飛行機だよ」

ため息を付きながらも手を止めない。

2泊以上なら3泊以上の荷物を持たない。

飛行機なら必ずサンダルかスリッパを持つ。

荷物は出来るだけコンパクトに。

旅行する時のパッキングはパパ仕込みだ。

寒い所に行くならやっぱりダウンジャケットだよね。

かさ張る様に思うかもしれないけれど圧縮袋を使えばコンパクトになる。

逆に言えば圧縮袋を上手に使えばかさ張る衣類も持ち出せると言う事、まぁ多少その分重くなることは覚悟の上だけど。

でも、何処に行くんだろう。

その日の夕食は冷蔵庫の片づけも兼ねて有り合わせの物で簡単に済ませた。



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