夏休み
夜空に妖しく浮かぶ繊月に人影が重なった。
二つの人影が交差したかと思うと、夜空を穢す巨大な影が次々と燃え上がり、或いは幻のように消え去った。
『こちら黒島。豊島区に例のティーポット二体が出現して小型モンスター多数放出。警邏中の北区担当ギルドと合流して対処に当たっている。 …どちらか来られるか?』
「こちら大淵。俺が行く。レイス、ここは任せた」
月を背に無線に応じた大淵が風神騎槍を逆手に構え、大都会の夜空に飛び出した。
第二次東京防衛からおよそ三ヶ月が経っていた。スペリオールの儀式は不完全ながらも成立してしまい、大淵小隊は上位者との戦いの中核となって戦わねばならぬ存在となっていた。
戦い自体は単調なものだった。
魔導書に描かれた魔法陣のカウントダウンに従って空中に現れる魔法陣。 そこから現れる巨大な敵性体である上位者を大淵とレイスのツートップが速やかに処理し、特定の敵…「ティーポット」が溢れさせるタコマスクを主とした模造モンスターを警察・自衛隊・他ギルド、そして大淵小隊のメンバーで対処する。
カリュー、マオ、リザベルは上位者に対して大淵らの次に有効な戦力だった。その次に斎城とアリッサが続く。
その為、大淵とレイスだけで対処しきれない程の物量で上位者が攻めてきた場合には彼女らをバックアップとして上位者の対応に当たらせる事も考えたが、幸いにもそこまでのリスクを冒すことなく現時点では対応できていた。
それはレイスの圧倒的な戦闘能力のお陰と言わざるを得なかった。
大都会の闇を疾駆して、友軍のサーチライトに照らし出された魔法陣と二体のポット、そして今、巨大な蜘蛛…タランテラをさらに巨大化した黒い巨蜘蛛が五体実体化した所だった。
(クソッ、落下に間に合わないか…? 五体全ては無理だ…!)
ヒュージタランテラが着地するであろう箇所…スクランブル交差点は避難が進んでいた。
敵を射角に収めたのを確認し、大淵は徐々に下がっていく高度の中で背にホールドしていた澪月の弓を取って番え、立て続けに三度射た。
下から撃ち上げられたヒュージタランテラが三体、次々と夜空の彼方へと押しやられ、遥か彼方で光芒となって消えた。
着地し、次の足場とするビルを見定めて再び跳んだ。跳びながらポット二体に射かけてこれも排除し、空中から最後の二体のタランテラ目掛けて降下していく。間合いに入ったのを確認して地上に降り立ったタランテラに向けて紫電を振りかざした。
――強化。
紫電の纏う雷光が赤黒く禍々しい物へと変わる。その電を放出して攻撃するのではなく、刀に閉じ込めたまま振り下ろす。
ヒュージタランテラの頭上から一閃。
何の手応えも無かった、と錯覚した時には紫電が深々と路面に喰い込んでいた。
背後を見上げるとヒュージタランテラが今になって両断され、巨体が分かれて崩れ落ちた。
…まずい、もう一体が住宅地に近づきすぎた。 今から倒してもタランテラ自体が周囲の建物に倒れ込みそうだ…。
しかし熾煉を使えば火災を発生させる危険も捨てきれない。地上に降りてしまった相手は紫電で倒した方が安全だと思ったのだが…
だが待てよ…?今のこの剣の軽さと切れ味なら…
地を蹴って住宅街の中に立つヒュージタランテラに向かった。
吐きかけられた黒い酸を掌で受け…剥奪。 同時に紫電に電磁を纏わせた。そのまま巨蜘蛛を滅多切りにする。
スライサーに掛けられた肉のように巨蜘蛛の体が細かく分解されていく。
家屋に肉片や黒い体液が降り注いで穢すが、家屋自体を大きく傷つける事は無かった。ましてや、中に隠れている人間に危害は無い筈だ。
『最後の上位者を倒しました。 東京一帯に新たな反応ありません。上位者の殲滅を確認しました!』
拠点から戦場全体の監視とサポートを行う星村から通信が入った。
大淵は手頃な鉄筋コンクリートの建物の屋上に着地し、膝をついて一息ついた。
『こちら黒島。各部隊から鎮圧完了との報告。 こちらも鎮圧した。 …これで32回目の勝利、だな』
黒島の声には疲労と落胆の色があった。 …地上部隊は戦死する味方や、戦闘に巻き込まれる民間人を目の当たりにしなければならない。
ふと視線に気付いて顔を上げると、向かいのマンションの中から十一、二歳ほどの少年がカーテンの隙間からこちらを茫然としながら見ていた。
疲れた顔を苦笑に変え、軽く手を上げて応じ、再び立ち上がって夜空へと飛び立った。
…戦い自体は単調でも、戦いの度に少なからず犠牲者を強いられていた。戦死する戦闘員と、ステータスに守られない無防備な民間人だ。
幾ら大淵とレイスが他の誰にも真似できない異次元の速度と力で対応しても、戦場となった東京の全員を守り切る事は出来なかった。 戦いの度に、誰かにとってのかけがえの無い命が失われていく。
それが顔も名も知らぬ相手であろうと、大淵達はそれぞれ自責の念に駆られた。
…できもしない事、取り返しのつかない事に責任を感じても仕方ない…とも思う。
(こういう事か…)
この世界で目覚めた初日、香山に謝られた事を思い出していた。 或いはリーデの町で食人鬼化した味方を殺めた時。
…こんな事が延々と続いては、上位者にやられる前にこちらの精神が参ってしまう。
三十二回を超える戦闘を終えた。
三ヶ月の間に三十二回…実に三日に一度のペースで受ける巨大敵性体からの襲撃…当然、東京の経済活動は以前と全く同じまま、という訳にはいかなくなっていた。
「東京《《一時》》疎開」が流行り、東京に拠点を構えずとも経済活動が可能な者や事業者、そして充分な資産を持つ者は一早く東京を離れていった。
一時というのは、この上位者による襲撃が限定的なものである、という大前提の上で成り立つ為であった。その大前提を支えるのは例の魔導書が示す上位者の出現兆候の観測と、大淵の前にだけ現れる謎の悪魔の「予言」だった。 …とても国民的な理解を得るには乏しい根拠であり、特に謎の悪魔に至っては論外だった。
かといってこの上位者の出現がいつ、どこで、いつまで発生するとも分からないものとなればその混乱は日本経済のみならず世界を巻き込んだ大規模な混乱になってしまう。そこで、上位者はあくまで第33ゲート周辺…東京一帯にのみ現れる敵性存在で、その出現兆候は観測可能であり、発生期間は限定的なものであることが予測されている、と、《《大淵小隊の調査結果》》として政府発表する事になった。
既に大々的に有名になっている大淵小隊のブランドを出す事でその根拠は曖昧でも、彼らの実力がそれをカバーしてくれていた。
飛翔して逃げようとする黒竜を瞬時に消滅させる大淵の姿や、空中で燃え尽きて灰になる巨大蜘蛛の姿を報じた事で、彼らならこの事態を鎮圧してくれるのではないか、という期待と信頼が形成されていた。
拠点の三階オフィスに戻ると、先に戻っていた皆が疲れ切った様子で机に突っ伏している。
平然として見えるのは尾倉と、戦闘に直接参加していない星村、そして魔族であり人間とは生理の違うマオとリザベル、カリューだけで、あの斎城やアリッサまでもが机にへばりついている。
…皆に無理をさせ過ぎた。
同じ回数、ただのモンスターと平原で戦うのとは訳が違う。自らの命も危険に晒しながら、民間人を保護し…時には守り切れない犠牲者を見せられながら心身をすり減らして行く。
だが、「後は俺に任せて休んでくれ」とは言えなかった。
自分とレイスは大型上位者に対抗するのに手一杯で、地上の手当てまで完璧にこなせるほどのスーパーマンでは無かった。 …彼らを休ませれば、彼らが守って来た膨大な人数分、被害は増える。
なら都民を避難させればいい、と言っても、誰も彼もがこの地を離れられる訳では無かった。確かに一時疎開によって東京の街並みは前よりも人通りが少なくはなった。だが、無人化した訳では無いし、自分達や自衛隊、警察、消防、その他ギルド戦士が東京を守る間、その自分達の生活面をサポートしてくれる人間は残らねばならない。
エッセンシャルワーカーなどという言葉が近年になって注目されたが、一人の人間が活動する為にはその数倍の人間の助けが無ければ生きていく事さえできないのだ。
ましてや、日本最大の超人口密集地である東京を無人化する事など、この世の終わりでも無ければ不可能だ。
つまり、人命を尊重するならこの戦いが終わるまで彼ら彼女らには自分に付き合わせざるを得ない。
…なにより、休めと言おうが来るなと命令しようがいう事を聞かないのは、既に実証済みだった。 自分達が出動しなければ何が起きるか分かっているのだ。
デスクの各所に置かれた当分補給用の菓子の減りも早い。香山のヒールによる疲労回復も全員が受けているが、それにも限界がある。
自分に続いてレイスが戻って来た。追い越しざまに自分と目を合わせて頷くが、レイスにも疲労は微塵も見えない。
「…よう、大淵、レイス。この通り全員ダウンだ」
黒島がデスクから顔を起こした。それでようやく気付いた香山たちも顔をこちらに向けた。
「ムッ、私達はダウンなどしていないぞ」
大淵がマオの頭を抑えつけた。
「お、お疲れ様です、大輔くん」
「お疲れ様、隊長さん」
「皆お疲れ。 だが、休むならベッドで休んだ方が良い」
「大輔きゅんが帰ってくるのをここで待っていたかったの!」
黒島がまた気色の悪い仕草と猫撫で声を上げた。
斎城が鋭く横目で黒島を睨むが、立つのも億劫らしく、成敗しに向かう気配は無かった。
「そうか、黒島は元気が有り余っていて結構結構。ついでに館内のトイレ掃除でもやってもらおうか?」
「い、いやぁ、大淵の顔を見たら安心して一気に疲れが…部屋で休むぜっ」
「まぁそう遠慮するな、座っていろよ。 …星村、魔導書の方はどうだ? 次の出現予想は?」
魔導書の解析、出現パターンの解析は星村に任せていた。
「はい!これまでは平均して三日に一度のペースでしたが、今回はどういう訳か長いですね。一週間後の九日ですね。それまでは皆さんゆっくりできそうです」
やっと少しは長い休みを取れる…皆、肉体の疲労というよりも精神、神経の疲労の方が深刻だった。
「やっとかよ。なぁ、大淵、トイレ掃除も良いがどこかへ気晴らしに行かねーか?三ヶ月、いつ誰が死んでもおかしくなかった仕事をこなしたんだぜ? その間にせめて一泊二日くらい休んでも誰にも文句言われる筋合いは無いし、罰は当たらねーだろ?」
本当に皆、良くやってくれた。活躍もそうだが、何より誰一人欠けずに戦い抜いてくれて、それが何より自分にとっては救いだった。
「ああ、皆、よく頑張ってくれた。 …トイレ掃除は変更だ。行先の選定と手配を頼む、黒島」
「アイサー。 …つってももう目星は付いているんだがね。海水浴場にも寄るつもりだ。皆さん水着の用意をよろしく。それと帰りに寄り道したい。仕事に関わる用事もついでに済ませたいんでな。なぁ、星村?」
星村がこくこくと頷いた。
「なるほど、星村絡みの用事か。分かった、段取りは全て任せる」
大淵は解散を宣言して、皆に自室で休むように促して退室した。
その腕を小さな、ひんやりとした手が掴む。
「ダイス、水着とやらを買いに行くぞ」
「ん? ああ、そう言えば俺の荷物にも水着は無かったな」
当然、リザベルやカリュー、レイスも持っていないだろう。…後で誘って、明日、都内でまだ勇敢にも店を開けてくれている場所があれば探してみるか。
「お前の愛蔵書らしきあの雑誌の女達が着ていたのが水着だろう? ダイスも同じ物を着るのか?」
「アレは黒島が勝手に置いたんだ…! それと基本的に男はああいう水着は着ない」
「あら、着ちゃいけないって法は無いじゃない? 試してみたら?」
追い越しざまに斎城が余計な冷やかしを入れて来る。
「勘弁してくれ…砂浜を吐瀉物の花だらけにさせたくない。 …ああいうのは斎城達に任せるよ」
「だって、桜さん♪」
「え、えぇっ!?」
「天気予報では晴れらしいな!最高の海日和になるだろう。ビーチバレーでもするか!」
「おぉ、ウチもやる!ミッチーもやるよな?」
「…ああ」
「おーい、大淵、リノーシュさんたちにも声かけた方が良いんじゃ無いか?」
黒島がどこかに電話を掛けながら大淵を呼び止めた。
「いや、あいつらだって忙しいだろう。 また日を改めて…」
「自分達だけ声も掛けてくれなかった、なんてリノーシュさんや可愛い教え子達に恨まれても知らないぜ~? …あ、もしもし、こちら大淵小隊の黒島ですが…」
「…」
確かにダメ元で声を掛けておくのとダメだろうと決めつけて声を掛けないのとでは全く違う。 時計を見上げ、まだ八時を回った所だという事に気付いて足早に結晶石のある休憩所に向かった。
一時疎開などという言葉が存在する有事下とはいえ、都内有数の歴史あるデパートは意地を見せつけるように一部テナントを除いて通常営業していた。 それでも万一に備えて警備員や店内のスタッフを平時…上位者が現れる前よりも増員し、いざという時には来店客を迅速に避難誘導できるように対策を施していた。
国もこうした状況下でも安全対策を実施しつつ営業する企業を支援する取り組みを素早く構築していた。
…この世界でも厄介な疫病が流行り、その苦い経験が役立っているらしい。
政治の現場に身を置く立場にもなって、補償すればいい、などとばかり気軽に言う者も居るが、大抵はその財源に関しては極めて根拠薄弱だったりする。国とて無限に金がある訳でも、幾分かは無駄な金もあるだろうがそれも思う程莫大なものでもない。
一つの店が営業を停止したとして、その損失を補償するとなるととんでもない金額になる。…とても全ての店、全ての損失金額を補償する事などできる訳がない。生産者が減る分、補償するための財源…税収も減るのだ。
極論を言えば、国民全員が平和に過ごす為には、多少のリスクがあっても平常通り消費と生産、それを繋ぐ物流が続いてくれるのが理想なのだ。
三ヶ月前、別の複合商業施設の時と比べても人の数は減っていたが、それでも買い物客で賑わっていた。 上位者との戦闘が頻発するようになって最初の一ヶ月は非常用品やアウトドア用品、食料品などが飛ぶように売れて品薄状態が続いたが、今は極端な品薄は起きていないようだ。
それは上位者が東京23区内の中で処理されているからだ。初期に陰謀論者が煽り立てたように都外への侵出を自分達を含めた東京都防衛隊が許していないからだ。
大淵はマオに手を引かれながらエスカレーターに乗り、閉店したままのレストランや、シャッターが下りた宝石店を横目に、それでも営業している衣料売り場へと向かった。
「こっちの世界での買い物は初めてだけど、君達の世界は賑やかでいいね。モノが溢れている。それもきめ細やかで、自分の欲しい物が見つかりそうなワクワク感がたまらないよ」
大淵の一段下に立つリノーシュがエスカレーターの縁からフロア内の各テナントを見渡しながら楽しげに言った。
「これでも人、品物どちらも平時より三割減って所だよ。上位者に大暴れさせてたら、その分人も物も無くなっていくんだろうな。 …平和を守るって、御大層な文句だと思っていたが結構身近な事なのかもな。 守るのが難しいってのは変わりないが」
「戦い、守らずに得られる平和なんて無い。奴隷として与えられる平和ならあるがな。 …俺が知る限り、平和にはその二つしかない」
最後尾でエスカレーターの縁にもたれ掛かるレイスが事も無げに言った。
大淵は無言で頷いた。
戦いや平和を別の言葉に置き換えてみれば大抵の事に当てはまるだろう。
戦闘狂としてのレイスのイメージが強い為、彼が言うと説得力に欠ける気もするが、逆に修羅の如く強敵を求めて死線を潜り抜け切って来たからこその言葉の重みもレイスから感じられた。 …何より、彼自身が魔物から彼の世界の人々を守るための神造兵器とやらだったのだから。
(もっとも俺は敗れ、彼の大陸の人々は滅ぼされたがな)
レイスの思念が直接脳に付け加えてきた。 大淵の思考を読めるマオも大淵を介してそのレイスの自嘲気味な皮肉を聞いて、憂鬱そうに顔を俯かせた。
(終わった事だ。 こうして俺達は同じ場所に立っていて、此の世界と彼の世界、両方の人々や魔物全ての為に力を合わせている。 それが今だ)
五階にある、特に大きな衣料品売り場に着いた。
レイスと大淵はそう種類も無い紳士用水着を選んで買って済ませると、マオを連れて再び水着選びに付き合った。 リノーシュらは先に選び始めているが…カリューのサイズに合うものなど置いてあるだろうか?
と、心配しながら向かうと、店員が身長二メートル超えのカリューに面食らいながらも、すぐににこやかな営業スマイルを取り戻して親切に対応してくれている。
(よかった…あとはプロにお任せしよう)
「ダイス、アレにする」
マオに手を引かれて顔を上げると、随分と布面積の少ない、際どいセンスの水着があった。
これはまた…
「…ダメだ。 それに、さすがにお前のサイズは無いよ」
「むっ、成熟化して着ればよかろう!」
「ほら、あっちの方が種類もあるし可愛らしいと思うぞ。タオルや帽子なんかも組み合わせてカリスマ的に着こなしてみせろ」
「むむっ。 …いいだろう。私のセンスを見せてやる」
子供向け水着コーナーで真剣に商品を吟味するマオを見守りながら、大淵は自身の買い物袋をベンチに置いて腰を下ろした。
「先生、お荷物お持ち致します」
メノムが大淵の後ろに立っていた。向こうの世界から着てきた中世西欧風の私服も事前に香山や斎城からアドバイスされたこちらのオーソドックスな衣服に着替え、その赤い髪以外は街中でも目立たぬ姿に変わっていた。リノーシュらも全員、現代風の私服に着替えている。
「俺の水着だけだ。持つほどのモンじゃないさ。 それより、リノーシュの護衛は良いのか?」
「ニホンは基本的に平和で治安が良いですから。二人ずつ交代で、固まりすぎずに護衛しています。あまり私達が取り囲むと却って浮いてしまいますし… それに私、最近先生みたいに敵の気配や殺気が何となくわかるようになってきたんですよ!」
「そうか、しっかり精進しているようで感心感心。 俺もうかうかして追い越されないように気を付けないとな」
「…先生はもう、私じゃとても追いつかない場所に居ます」
「…まぁ、こんな芸当できなくたって、やれることはいくらでもあるさ。その調子で頑張ってくれ、メノム」
「はいっ!」
「…そう言えばレイスは?」
「その、後は明日まで自分の好きなように行動する、と…」
「あいつ…」
「ダイスー!決めたぞ!ここでは披露してやらんからな。海まで楽しみに待っておれ!」
「ああ、楽しみにしているよ」
「リザベルのも私が決めてやったのだぞ!」
魔王の後ろに付き従うリザベルの表情は…変身後の色白な肌を差し引いても青ざめているようにみえるが… …まぁ、店に売っているものだし、大丈夫か。
「大輔、そっちは終わったかい? 屋上になにやら珍妙なモンスターが居るとクロエが言っているんだけど」
リノーシュが要領を得ない顔で話しかけてきた。
「…上位者やタコマスクにしても気配など全く感じないが。メノムはどうだ?」
「いえ、全く」
「…まさか、100円で動くアレか…? 」
「い、居たんです!あの自動階段の行きつく果ての階の透明な扉の先に!珍妙な黒と白のアルパンベアーらしきものや豪奢なゴーレムらしきものが!」
「…そうか、よし。 クロエ、そのモンスターを成敗して使役する方法を教えてやる。お前らも来い」
大淵は何枚かの百円玉を財布の中に数えて立ち上がった。
…昼食までまだ時間はある。 少し遊んでいくか。
茨城のとある海岸。
照り付ける太陽の下、ライトベージュの砂浜が広がっていた。
シーズン中ではあったが、上位者による東京襲撃を懸念してか、本来の人混みは無く、まばらに十数人規模のグループが穏やかなビーチで思い思いにマリンレジャーを満喫していた。
そこへ、一層異様な集団が入り込んでくる。二十人の集団は遠慮がちに砂浜の隅…人々から離れるように最も人気の無い場所へと陣取ってパラソルやレジャーシートを設置した。
黒島の沖縄土産の一つであるかりゆしシャツを羽織り、ハーフパンツ姿の大淵が缶ビールを片手に皆の前に立って、世にもいい加減な敬礼をして見せた。。
「あー、全員注目。この三か月間、良くやってくれた。 …戦闘もそうだが、誰一人大怪我をすることも、欠ける事も無く乗り越えてくれた事を心から嬉しく思う。今日一日は戦いを忘れて、溺れない事だけ注意して思い切り羽を伸ばしてくれ。夕方まで完全自由時間である。 以上、解散」
大淵は早速ビールを呷った。
「なお各種ドリンクは呆れるほど確保してある。各員セルフサービスで楽しんでくれ。ただし、アルコールを飲んだら深い場所には行かないように」
言い終えるとパラソルの下に置いたビーチチェアにゆったりと身を預ける。
…大淵のそのふざけ半分でリラックスした姿でさえ、いくら砕けた格好をしても隠し切れない歴戦の猛者としての雰囲気を醸し出していた
サングラスなど掛ければどこかの危険な組織のエースだろう、と小隊員の殆どが同じ考えに至っていた。
「サー!質問であります!」
「聞こうか、黒島三等兵」
「本日は無礼講でありますか?」
「…俺が目覚めてから、我が隊が無礼講じゃない日が一日でもあったかね?」
「…聞いたな、アリッサ伍長?やれッ」
「ソレジャ、とりあえずお約束デスから埋めマスか♪」
「やれー♪」
いつの間にか整列から抜け出していたアリッサとリノーシュに抱えられて引きずられる。抵抗する間も無く尾倉が無言で立ち上がり、レジャーシートを手繰ると、その下には予め隠し掘っていたと思われる手頃な墓穴があった。
「これは反逆だぞ!? 尾倉、お前もか?」
「…国王命令だ、悪く思うな」
なすすべなく砂に埋められ、大淵は潮風を受けながら入道雲の聳える水平線を眺めた。
広大な水平線の下…砂浜では、黒島らがビーチバレーのコートを設置して、ブレメルーダ組と大淵小隊、そしてカリュー、リザベルら魔人組をステータスと身長が可能な限りアベレージできるように組分けしている。砂浜の先には海水浴客を見守るように白い灯台が高い台の上に佇んでいる。
「よっこらせっ」
右腕を砂から引き抜き、ビールが温くなる前にテーブルの上から取ろうとした所を何者かに先を越されて奪い取られた。
「無様だな、ダイスよ。輩からも裏切られ、こうしてウミガメの卵のように砂場に埋められるとは」
黒を基調としたワンピース水着に大人びた高級感あるタオルを羽織り、麦わら帽子を被り、生意気にサングラスまでかけたマオが勝ち誇ったように大淵を見下ろした。
飲みかけの缶ビールを躊躇いもせずに美味そうに飲み干して行く。
「…堂々と飲めとは言わんが、クーラーボックスに新品が幾らでも冷えているだろ。自分で取って来いよ」
「お前から横取りするのが愉しいのだ。 それよりどうだ、我がファッションセンスは?」
「ぶっちぎり120点でございます。 だから俺に新しいビールを取って下さいませ、魔王様。缶酎ハイでもいい。 ALC.0と書かれた奴以外ならなんでも」
「うむ、褒美に取ってきてやろう!待っておれ」
「せ、先生、お助けに参りました!」
セパレーツタイプの水着に薄手のパーカーやジャージを羽織ったメノム、ラナ、パルムがやって来た。
「おう、来てくれたか。適当に彫り出してくれ。 …尾倉の奴、張り切りやがってかなりしっかりと埋めてくれたからな」
「…こちらの世界では海に来たら、皆こんな恐ろしい事をするのですか…?」
パルムが右腕と頭以外完全に埋められた大淵を見下ろしてこわごわと尋ねた。
「悪意は無い。 お約束…あー、気心を知り合った相手にやるちょっとした伝統的な悪戯だ」
三人娘の救助によって砂の重みが減り、大淵はズルズルと砂から這い出た。
「…で、こうやって助けてもらうまでがワンセットのおふざけなのさ。ありがとさん。お前らはビーチバレー、やらんのか?」
「…球戯はどうも苦手でして」
メノムが見る先には、ボールを捉え損ねて砂に尻餅を付くクロエと、それをカバーしてトスを上げる川村、更にネット際で見事なスパイクを叩き込んでポイントを稼ぐリノーシュの姿があった。斎城程では無いにせよ高めの身長と高い身体能力、敵側の狙いを先読みした動きでプロ顔負けの機敏な活躍をしている。
「…あいつには敵わんな。」
「陛下は本当に凄いお方ですから…異国の文化だろうと何でも吸収してしまうので、苦手なものなんてすぐに無くなってしまいます」
「そう言われると探してみたくなるな」
定番の《《G》》なんてどうだろうか…いや、あいつの事だ…ゴキブリの生態を調べ上げて、摘み上げながら「古代から成功してきた種の一つだね」などと解説し始めそうだ。
尾倉のスパイクを、カリューが棒立ちのまま顔面でブロックしている。 居るだけで鉄壁である。 水着は結局、逞しい腹筋を隠す気も無い最大サイズのセパレートにしたらしい。尾倉のスパイクを顔面に受けて呵々と笑っている。弾かれたボールを、身を投げ出したリノーシュが腕で弾いて放り上げる。
ハーフタイプのダイビングスーツに身を包んで、凛々しさが増したように見える。
「でも、陛下はダイス先生とご親友になられてから、よく笑われるようになりました。 …以前のように臣民を安心させるための笑顔とも違う、心からの笑顔を」
「…道化だか親友だか分からないが悪戯好きで参るな。 アイツは…うぉっ!?」
首筋に冷たい物を押しあてられて大淵は悲鳴を上げた。
「持ってきてやったぞ! む、お前達も取って来るが良い。良く冷えておるぞ」
「は、はぁ…」
マオと乾杯して新しいビールを呷った。
「どうだ、こっちの海は?」
マオに訊ねると、マオは頷いた。
「うむ。良い。 …紅い空とそれに照らされた海は美しいが、アレはあの世界の、人を滅ぼして一帯の領域が魔族だけになった証だ。美しくとも、もう見たくない。 海と空は青い方が良い」
「…だな。少し海に入ってみるか?」
「うむ。行くぞ」
マオと連れ立って波打ち際に向かった。 日光浴中に自分同様、射方と星村によってダイナマイトボディ仕様にされながら砂に埋められて何か喚いている浮田をスルーして進む。 …レイスの姿が見えないと思ったが、いつの間にか護岸の消波ブロックの上に座って新品の釣り竿でルアーを泳がせている。
「アイツ…なんだかんだ一番適応してるな…」
「ふむ。勇者とは代々器用で何かしら芸事に秀でていたというからな。 もっとも、それで生計を立てて暮らした勇者は居ないが」
(アイツはアイツなりに変わろうとしているんだな)
俺はどうだろうか。
この世界に来て…仕方なかったとはいえ、この世界の大淵大輔に成り代わって…仲間達はそれを知っても尚、自分を受け入れてくれた。
…この上位者との戦いを無事に終わらせれば、そんな自分を受け入れてくれた仲間達に報いる事になるだろう。
「…フン。言っている傍からお前が戦いを考えてどうする、《《バカタレ》》め」
「…ごもっともだが。 なんだ、俺の口真似か?」
「そうだ、似てるだろう?」
ニィッ、としたり顔で見上げるマオの頭をわしわしと麦わら帽子ごと撫でた。
「あっ、こいつめ…! くらえ!」
海水を思い切りかけられ、大淵はいい加減な悲鳴を上げながら逃げ惑う。
斎城らがこちらへ向かってくるのが見えた。
斎城は大胆な黒のビキニだが、薄いロングカーディガンを羽織っている。カーディガンから覗く、雪のように白い手足が眩しい。
(うーむ、さすがだ…)
アリッサはお約束と言わんばかりに星条旗ビキニだが…胸元の火傷の生々しさに思わず息を呑んだ。
(あれが…)
リディーネで聞いたアリッサの身の上話を思い出し、大淵は努めていつも通りに…やや緩んだ顔に戻した。 …それでも敢えて見せるというのは、彼女なりに忌まわしい過去と決別した証なのだろう。
桜はシックなワンピースタイプ。それでも恥ずかしそうに斎城の影に隠れているのが桜らしい。
(可愛いな…)
「面白そうなことやってるー。ねぇ、浅瀬でドッチボールしようよ」
「桜、カモン!皆で大淵を海の《《モズク》》にするのデス」
「…藻屑、ですかね?だ、ダメですよ藻屑にしちゃ…!」
「射方さーん、星村さーん、加勢してくれない?」
「ブレメルーダの三バ…三人衆、来てくれ! …元・師範命令である!」
テーブルに集まって何か飲んでいた三人娘が聞きつけ、飲んでいた缶を飲み干すとゴミ袋に片付け、忠犬のように駆けつけてきた。
「た、ただいま参上いたしました…! …けど、何をすれば?」
「あの白くて柔らかいボールを投げ合う。しっかりキャッチすれば投げ返せる。取り損なったり当てられたりしたら失格だ。そしたら相手の背後10歩後ろに待機。流れ弾が飛んで来たら生き残っている相手に投げつけるか、生き残っている味方にボールを託すことができる。 マオも分かったか?」
四人はこくこくと頷いた。
…こうして、中学以来のドッヂボールに興じた。 …最初は興じたつもりだったのだが、全体的に運動神経の良い者が揃ってしまったために勝負が白熱してしまい、結構な時間を真剣に遊ぶことになった。
昼には近くの専用エリアでバーベキューをするのだが、皆がそれぞれ準備しているとそこへ戻って来たレイスが尾倉の元に行き、クーラーボックスから大量のアジを調理台の上に並べ、皆を驚かせた。
「…夢中になって釣り過ぎた。皆に食わせてくれるか?」
「…刺身や干物も良いが、それらは旅館で食えるだろう。 フライにするか」
尾倉が自前の庖丁セットを開きながら口元を緩めた。
照明を減らして薄暗くなった旅館の談話室。
動かなくなって久しいであろう…かつて喫茶店などでゲーム代でありながらテーブルも兼ねていたレトロゲーム台を眺めながら、大淵は一人缶酎ハイを啜った。
良い温泉に浸かって、仲間達とどんちゃん騒ぎをしながら旅館の料理と美酒に舌鼓を打ち、皆酔い潰れるか大人しくそれぞれの部屋で眠っている。
――幸せだ
ずっとこんな時間が続けば、と思ってしまう。
だが彼ら彼女らの存在が眩しすぎた。 …自分には勿体ない程に。
気配を感じたが、誰の者かはすぐに分かる。大淵は振り返らずに相手を待った。
「…あ、まだ飲んでるんですね」
半分咎めるような声。
「どうする? 取り上げるか、それとも仕方なく付き合ってくれるか?」
「…じゃあ、一本だけ」
「ありがたい」
横にずれて場所を空けると、隣に浴衣姿の桜が座った。テーブル…例の筐体の上に置かれた、冷えて結露を流す缶酎ハイを一つ取り、プシュ、と封を開けた。
「楽しかったな」
「はい。 …次に皆で遊ぶ時には、戦いも終わってますね」
星村の解析結果によれば、五日後に現れるその魔法陣が最後だという。星村の調査結果だ、確実だろう。
「あと一回、だな。…本当なら全部の敵を倒してから盛大に祝う方がいいのかと思ったんだが、あんまり戦い続きで皆も俺も参ってたからな。丁度よく時間が空いたから、確実に勝つために一回息抜きを入れたんだが」
「大正解だったと思います。 …皆はしゃぎ気味だったのがそういう事なんだと思います」
「まっ、俺としてはお嬢さんたちの麗しい水着姿を拝めたのが何よりの大正解だったがね。特に桜が…」
殊更軽薄に言うと、太腿をつねられた。
「あいででッ」
「大輔君には似合わないです、そういうキャラ」
桜が笑いながら缶を傾けた。
「そうか、本音なんだがなぁ」
ふと、桜が置いたスマートフォンからぶら下がる…秋田の旅館で手に入れた茶トラのマスコットに気付いた。
「まだ持ってくれてるんだな。 気に入ってもらえて良かった。ソイツも喜んでるだろう」
「ふふ、私の宝物ですから」
不意に、自分の肩に桜が頭を預けてきた。
シャンプーの匂いだろうか、甘い香りが大淵を誘った。
「…」
理性を相手に逡巡した末に…その腰に手を回した。
「大淵!テメー、昨日はどこで酔い潰れてたんだよ!?折角お前の部屋で上映会しようと思ってたのによ!」
移動の貸し切りサロンバスの中で黒島からの尋問に遭った。
「…懲りない奴だ… あー、ロビーの辺りで寝ぼけてたり夜風に当たっていたかな」
チラと横目で見ると、遥か離れた席で桜が斎城、アリッサに囲まれて何やら興味津々に問い詰められている。 …耐えろ、桜。
「ところで、今日はどこに寄り道するんだ?」
「ふん…まぁ、取り調べは後日にしてやる。 …さてクイズ!茨城の名物と言えば!?」
真っ先にノッたアリッサが元気よく手を上げる。
「ハイハーイ! 水戸ナットー!」
「正解! ほい、水戸納豆」
いつの間に用意していたのか、クーラーボックスごと水戸納豆をプレゼントする黒島。 まったく、仕事もそうだが妙な事にも準備に余念がない奴だ…
「ヤター♪」
「他には? 納豆だけじゃないだろう?」
「あー、軍鶏とか?」
「…常陸牛」
「あんこう!」
怪力三人衆が次々答え、景品が重なっていく。
「食い物ばっかじゃねーか、お前らの解答!? あっ、ちなみに全員分あるから、拠点に帰ったら渡すぜ。 …おい、我らが隊長殿、ここは一つビシッと決めてくれよ?」
「人面犬か?」
車内にエアコンのソレとは違う寒気が漂う前に大淵は続けた。
「…と、言うのは冗談で……つくば…技術研究機関か」
「正解! いやぁ、人面犬って言ってくれたら大淵にこの、わんこスーツを今日一日着てもらうつもりだったんだがなぁ。 星村が新型のメイルアーマーを設計して、その研究開発に協力してくれる機関が見つかってな。俺達があちらの世界で冒険している間もこちらで制作を続けてくれていたんだが…ついに試作が完成した。試作と言っても実質先行量産配備だそうだ。既に国の方でも次期制式メイルアーマーとして発注が決まっている。コイツが今回の旅のメインとなるお土産、だな」
黒島が説明を終えるや否や、サロンバスといつの間にか追随していた二台の中型輸送トラックが、ゲートを開けられた研究所構内へと進入していく。
挨拶もそこそこに、古田と名乗った研究員は純白の美しい花弁を思わせるメイルアーマーを提示した。
「こちらが新型メイルアーマー・イベリスです。星村女史の設計思想である、女性に合わせた生体工学を取り入れた女性用メイルアーマーです。防御力は23式をも上回りつつ、アーマーを着ているとは思えない軽さと低ストレス性が売りです。そのミソはバイオセンサー搭載による、各部位のオートアジャスト機能で、これによりストレスを感じる各部位を瞬時に自動調節し…」
別の研究員、小鹿がもう一方のメイルアーマーを紹介した。
「こちらが23式、及び23式改の後継となる、ルドベキアです。 彼の世界で星村女史がサンプリングした素材の中であらゆる合成を繰り返し、今までにない高い防護性を持つマテリアルの生成に成功しました。 現時点で独尊を除いて世界最高の防御力を達成しております。 やはりワイヤーアンカーシステムは扱いが難しい為オミットされていますが、イベリス・ルドベキア共にジャンプ補正能力が強化されており、これによりちょっとしたビルに上るくらいの高機動性は確保されています。 市街戦において戦術の幅と選択肢が広がるでしょう。 どうぞ皆さん、各サイズが用意されておりますので、ご自分にフィットする一着をお選び下さい」
隊員達、そしてリノーシュ達の分も用意されており、皆がそれぞれメイルアーマーを試着し始めた。
「大淵さんはこっちです! 大淵さんのはメイルアーマーじゃ無いんですけど…」
星村に手を引かれ、別のフロアへと連れて行かれた。
気を取り直した古田が先についており、部屋の中央へと向かった。
「これは…」
純白の奇妙な物体が置かれていた。 …どことなく、人を乗せるための手足を置き、袖を通すような構造が見受けられる。 何とも形容しがたい形をしているが、純白を基調としながらウルトラマリンブルーとライトイエローに引かれたラインが鮮やかで美しい。
「射干です。 …元々、独尊をさらに高機動・空中戦に特化させつつ射撃機能も強化させる、射干独尊計画として私が構想していたんですが、射干の方が私の手には全く負えなくて。結局独尊しか間に合わなかった上、上位者が現れるまでは必要ないかと思われかけて、廃棄するかどうかという所まで考えていたんですが…空中に現れる上位者相手に、きっとこれが役に立つのでは無いかと…。 独尊の装着が大前提ですし、私の設計では航空力学の点できっとまだ粗があるかも知れません。 でも、そこは大淵さんの特殊強化で補ってもらえれば何とかなるのではないかと思って…」
大淵は勧められて、空間から取り出した独尊を着込み、その射干を独尊の上から装着してみた。
「…ありがとう、星村。きっと役に立ってくれるよ」




