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第一ラウンド

えっと。

言うまでもない事とは思いますが念の為。

本文にあらわれる数値、理論等は(全てとは言いませんがほぼほぼ)作者の妄想です。

 --------

 発: エウロパ条約機構軍月面基地司令・グラショウ

 受: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社・宇宙服開発室長・タカチホ

 件名: 高機動強化宇宙服機能要件


 タカチホ室長


 この度、御社に対し新規宇宙服の開発依頼を検討している。要件は以下の通り。


 〜略〜


 機動性能について

 1. 推力重量比 3以上を有する事

 2. 動作時間 10,000秒以上を有する事

 3. 上記性能を実現する上で、運動性能を阻害しない事(非機能要件)


 運動性能について

 1. 着用者のあらゆる動作を可能な限り阻害しない事(非機能要件)

 2. 着用者のあらゆる動作に可能な限り瞬時に追従する事(非機能要件)


 〜略〜


 御社の忌憚のない意見をお聞かせ願いたい。


 グラショウ


 --------

 発: タカチホ技術研究所L4ケニヒスベルグコロニー支社宇宙服開発室長・タカチホ

 受: エウロパ条約機構軍月面基地司令・グラショウ

 件名: 高機動強化宇宙服機能要件についての一次回答


 グラショウ月面基地司令


 提示された機能要件に基く弊社スタッフの分析結果をお伝えいたします。


 〜略〜


 機動性能について

 1. 機動性能要件 1について

 推力重量比 3という要件は 1重量キログラムあたり 3(ニュートン)の推力を必要とします。1重量キログラムはおおよそ 10N(もう少し正確には 9.8N)に相当しますので、1キログラムあたりに換算すると おおよそ30Nとなます。

 現行の宇宙服は 120キログラム以上あり、他の要件(運動性能や対環境性能等)に付随して質量は、推進機構を除いても 300キログラムを超えると想定されます。

 従って必要とされる推力は 9,000N以上となります。

 一方推進機構は運動性能要件により宇宙服に懸架できる面積、数平方メートル以内でなければなりません。

 これより、推進機が発生させなければならない推力密度は 10,000N毎平方メートル程度となります。

 現状これを満す推進機構は


 ・化学ロケット(液体水素・液体酸素の燃焼)

 ・電熱推進(DCアークジェット)

 ・電磁推進(MPDアークジェット)


 となります。


 2. 機動性能要件 2について

 重力加速度をg、流量毎秒mキログラムの推進剤を推力に変えるとして、要件 1を書き換えます。


 推力重量比 = 推力÷(総質量×g) = (推力÷mg)×(m÷総質量) = 3


 これより


 比推力 = 推力÷mg = 3×総質量÷m


 推進剤の質量は総質量の一部なので 10,000秒の動作時間を得るためには比推力 30,000秒以上の推進機構が必要とされます。これを満たす可能を有するものは上で挙げたものの内


 ・電磁推進(MPDアークジェット)


 となります。


 3. 機動性能要件 3について

 この要件を満たすためには、でき得る限り推進機構および推進剤にかかる容積をコンパクトにまとめなければなりません。そのためには高効率の推進力が得られる推進剤を用いる必要があります。

 上に挙げた推進機構で高効率の推進力を得る推進剤は水素とされています。

 液体水素の密度は 70.8 キログラム毎立方メートルとなります。推進機構懸架面積を 70センチメートル× 1.4メートル≒1平方メートルとしますと、70キログラムの推進剤を搭載すると厚みは最低で 1メートルとなります。

 この時 10,000秒の動作時間を得る流量は 7グラム毎秒。この流量で 10,000N毎平方メートル以上の推力密度を得るには


 10,000N÷0.007キログラム毎秒≒1,428,571メートル毎秒


以上の排気速度が必要となります。これにかかるエネルギーは最小で


 流量×排気速度×排気速度÷2 ≒7.1ギガNメートル毎秒 = 7.1ギガ(ワット)


となります。現在、これ程の大電力を発生する宇宙服に搭載可能な電源・電池は知られておりません。

 また、よりコンパクトに、推進剤にかかる厚みを減らせば流量も減るため排気速度を上昇させなければなりません。その分投入電力は上昇します。


 〜略〜


 以上の分析結果を参考に、本件の機能要件につきましてはご再考いただければ幸いに存じます。


 タカチホ


補足

・DCアークジェット

推進剤を大電流でプラズマ化し、気体力学的効果により高速噴射。その反動で推力を得る

・MPDアークジェット

推進剤を大電流でプラズマ化し、ローレンツ力で加速・高速噴射。その反動で推力を得る

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