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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
ファーストイベント★きらきら★♪ときめき恋の夏合宿編♪ ♥〜ドキドキが止まらないっ〜♥

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74話 震える海。そして

確かにこの日、

彼女たちは、不思議な冒険を得て、生きて帰ってきた。


潮は血を洗い、夜は名を秘し、運命は一度は、彼女たちを英雄として記した。


そして。


彼女たちは、普通に学校に呼び出され、容赦なく、クソほど怒られた。


雷鳴。

そして神罰。

それはそれで、とても理不尽で、とても日常で、あまりにも逃げ場がなかった。


だが、学校側の言い分は、あまりに確かだった。



まずカリキュラムを勢いでぶっちぎったこと。


危険を省みず、許可もないままダンジョンに突入したこと。


ダンジョンを壊滅的に破壊したこと。


そして日を跨いでも連絡もなく、帰らなかったこと。

教員の心臓を何度も止めかけた。



どう言い逃れても完全にコンプラ違反であった。


補講案件であり、反論不可であり、弁明無用あった。


ぐうの音もでないとはこの事だ。





リーシャは、トボトボとあるく。

それは、補講指定場所へ向かう学生の足取りそのもの。


そこには羊皮紙の束と、無言で差し出される補習日程表が、目の前に提示されていた。


クラリッサは、心底どうでもよさそうに羊皮紙を眺めながら言った。


「なんか、補講っていうわりには、休んじゃってていいのか疑問よね。

そもそもこの合宿って、戦闘訓練が主な内容じゃない。

デスクワークが補講なら、これって戦闘訓練は、お休みみたいなものじゃない?」


すでに反省の色はなかった。

リーシャは、遠い目をしていた。まじめだからだ。


「色々言われちゃったね。」


「やる時は、まわりが何言っててもやるってーの。

これだから組織は嫌なのよ。いちいち目鯨立てられちゃたまんないわ。」


「いや、わたしが言うのもなんだけど、何も響いてないね。

どうしようもないくらいに、いろいろいわれたんだけど……凹んだ。

クラリッサさんって、よく今まで平和にやってこれたね。


「仮にだけど、もしずっと平和にここまできてたなら、私に仕えるマリアが、あんな強いわけないでしょ。」


「ですよねー。」


因果は、確かにそこにあった。

ただのどうしようもない性格をしているクラリッサは、あくびをしていた。


「ね?」


ね、じゃねー。




補講内容は、夏合宿場の掃除とダンジョンの報告書が中心。


社会性を学べということらしい。


英雄である前に学生であれ。

剣を振るう前に雑巾を持て。

記録を残さぬ冒険は、起きなかったのと同義である、と。


──まあやれって言われるならやるが。


完璧にやってやれ。



本ダンジョンは、潮汐の影響を強く受ける半水没型構造を持つ。

内部は天然洞窟と人工的改変が混在し、戦闘能力のみならず、環境適応力と撤退判断が問われる。


単独行動:非推奨

実践レベル:15以上 踏破を目指すなら20以上はあった方がいい。


本ダンジョンは、特定箇所に強い衝撃、または魔力干渉を加えると構造物変容が比較的容易に発生する。

すなわち、破壊は可能だが、制御は困難。


安易な破壊行為は、周辺環境への被害を招くため、非推奨。

(※実例あり。それで海に沈みかけた学生が三名。)


──他、出現魔物、ボス、推奨パーティー、マップなどを書いて締めの言葉。

なのでダンジョンは崩壊して、海の藻屑になりました。


後世に残すべきダンジョン攻略史料だろう。

ダンジョンが残っていれば。



バリバリデスクワークをこなすクラリッサの傍ら、リーシャは唖然としてた。


そこではマリアが掃除をしていた。

潮風が運ぶ砂。床に残る水気。

地形を制圧する前衛のように、手際よく汚れを刈り取っていく。


「なんかすごく、マリアさんが輝いている。

クラリッサさん。マリアさんって……」


「メイドだからね。

好きなのよ。家事。

ホントは戦いたくないんだって。

でもほら、そういうわけにはいかないじゃん。

まあ安全マージンはとってるし。

本当に嫌なら戦わせないわよ。」


「大変だ。」


「仕えた相手が私だから観念してもらうしかない。

マリアに今更感謝を伝えるのも恥ずかしいし。

今度ご飯でも奢ろうっと」


「わたしも、今回頑張ったと思う。ごちになります。」


「そうね。はいはい。

貴族にたかるとは、以前と比べて逞しくなって何よりだわ。

そういえばさ、リーシャって好きな人とかいる?

ずっと私たちと一緒にいるけど。」


「え?

……あ、ごめんごめん。

クラリッサさんは、なんかそういうの興味ないと思ってた。」


「興味はないけど、第二次成長期において、人間って、構造的に恋愛が気になるようにできてるじゃない。」



リーシャはしばらく考えるといった。


「いないよ。

そんな暇ないから。」


にへへと笑い、リーシャは掃除に戻った。



(乙女ゲームなのにフラグ全部無視してる。なんかイベントあった気が……)

──……あれ?不味くない?これ。



とにかく掃除は終わらせた。


窓から床から、家具がら、排水溝まで全部やった。




ついでにカロリーのために海で魚を取っていた。


学校側から頼まれていた。

経費削減になるらしい。

至極まっとうではある。


「そりゃなるでしょ。

無料なんだし。いいけどね。やるけどね。」


その日の海象は静かで、魚影は濃く、活性も高かった。

水揚げ量も期待できる。

――当たり日


漁師となった時に、クラリッサの漁獲方法は一択。


自分を餌とし、囮となりて、筋肉で刈り取る。


ドンッ。


轟音。


それは遠方まで響くような衝撃音だ。


クラリッサが拳を突き立てると、海に魚雷が直撃したかのように、巨大な水柱が天へと突き立った。

何本も。


海が怯えるように震える。



そしてクラリッサは、巨大な魚を片手に海へ上がってくる。


暴れる魚体。

その鱗が陽光を弾き、光を返していた。

尾がビチビチと空と砂を叩く。


それはクラリッサからしてみれば、海が差し出した供物を回収してきただけにすぎない。


それすなわち握力。


砂浜は静かに輝き、供物はそこに在り、海は与え、人は受け取る。


古より漁の形で繰り返されてきた、人の営み。

ただそれだけの、対等な契約だ。




一通り、終わらせた。


掃除。

書類。

漁業。

海もまた静まり返っていた。


クラリッサは、砂浜を見渡して言った。


「あとはゴミ拾いして終わりか。やりますか。」


白砂の上には、流れ着いた漂流物。

壊れた木片。名もない欠片。


「え?」


突然大波が来て、クラリッサは巻き込まれた、


白い壁が砂浜を呑み込み、風が裂け、水が空を覆った。


クラリッサは、その中心を直撃した。


抵抗する暇も、踏み込む時間もない。


大波が過ぎた後には誰もいなかった。

まるで最初から存在していなかったかのように。


白砂だけが、静かに広がっていた。




「あれ?お嬢様がいない?」


マリアは気づいた。


砂浜。波打ち際。合宿場の建物。一通り探した後で学校に確認を取ったが、見ていないとのことだ。


だが学校は、大事にはしていなかった。

なぜなら、破天荒、規格外、常識の外縁を常に全力疾走するクラリッサ・グランディールだからだ。


行方不明となると補講未完。

学内評価は、壊滅的になる。


確かにその通りだ。

マリアですらそう思う。

理性は結論づけている。

大丈夫だろう。


──きっとどこかで魚でもとっているのだろう。


違和感が首をもたげていた。


(でもおかしい。

お嬢様は、行動は破天荒だが、報連相は、そこそこしっかりしている。)


無断で消える事はほとんどない。

いつもぶっちぎるが。


顎に手を当てて、じっと考え込むマリアに、リーシャは話かけた。


「ねーマリアさん。聞いて!

合宿の最後の夜に打ち上げがあるんだって!!

……マリアさん?」






ポツリ。


雨が、降り始めていた。



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