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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
ファーストイベント★きらきら★♪ときめき恋の夏合宿編♪ ♥〜ドキドキが止まらないっ〜♥

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70話 階層主

天井は高く、岩は黒く、空気は古い。

幾千の挑戦者の恐怖と祈りが、岩肌に染みついた沈黙の広間。


――本来、英雄だけが立つ場所。

――本来、伝説だけが刻まれる場所。


その手前。

その決闘場のような広間を臨める通路の中央に、学生が3人ほどいた。


クラリッサは腕まくりした。


屈伸。肩をまわしたり、腕を組んでのばす。

そしてストレッチだ。


それは、血統と才覚と制御されぬ狂気が混ざり合う儀式でもあった。



鼻息一つ。

不敵に笑いながら言う。


「じゃあ、ちゃっちゃといきましょう。

筋肉痛に少し慣れてきた。

少しなら全力出せるから、それで地盤を破壊するから。」


意味の分からない発言が聞こえた。

学徒としての最後の理性に従い、リーシャは理性の最終防衛の為に手をあげた。


「はいっ!!」

「はい。リーシャさん。」


「さすがにツッコミが必要だと私は思うの!

ここはダンジョン。そして階層主の間。

そこで地形を破壊するとか、何からなにまでおかしいと思う!

そして筋肉痛がとれたとは!?!?」


クラリッサは首を傾げた。


「何言ってるの。全くおかしくないから。

面白い事聞くのね。リーシャったら。」


「いや、おかしいからっ!!そして何も面白くもないから!!

なんで学生がダンジョンの奥深くまで来てるの!?!?

そんなの一部の冒険者とか英雄がやることじゃん!!

学生じゃん!!私達って!それも夏合宿!!」


「リーシャ。

人はいつまでも学生じゃいられないの。

人はどこかで漕ぎ出さないとらならない。人生という大海原に。」


「いや、あの……そういう抽象的な事じゃなくて。」


「あなたもわかっているでしょう?

ダンジョンを制覇すれば、あなたの目標とする。偉大なる魔法使いに近づくわ。

あと合宿の探索のコマで、高得点取れる。」


「……そうかもしれないけど!」


「じゃあいいじゃない。

ダンジョンボス攻略のための、ブリーフィングを行いましょう。」


「なんにもよくないんだけど……!?

く……なんという同調圧力……!?」


「筋肉痛すごいけど。」


「だから意味が……」


理性は屈した。

運命は走り出す。






階層主の前。最後の確認。


マリアは、偵察の結果を告げた。


「階層主はオオトカゲですね。

この階層に出てきた、潮爪獣リッパー・オブ・タイドの上位個体。

全長は潮爪獣の3~4倍。殻のように硬質化した外骨格。爪は巨大な鉤爪一本ずつ」


クラリッサは頷く。

──鎧を着たロ●ルドロス的な感じか。だけど鎧が邪魔で多分泳げない。陸上に特化している。

(※注。モ●ハン。)


「問題なさそうね。

重複になるんだけど、本格的に戦闘をするとなると、今のコンディションだと、全力は数秒が限度。

その数秒で地形を破壊するから、アタッカーとフィニッシュは、マリアとリーシャにお願いすることになる。」


「そちらも問題ありません。」


リーシャも諦めて頷く。

──もはやリーシャは、ツッコミを諦めた。

(地形を破壊?へえ……地形を破壊。

地形って破壊できるんだ。)


問題しかねーよ!!!!


わかったつもりになって頷きまくる。

理解。なんと儚き響きか。


「ふっ……。リーシャ。いい覚悟ね。心強いわ。」

「ワタシ、ガンバル。」


「観念したのね。」

「わかってるなら聞くなっ!!!!」


──やったるわよもう!!よくわかんないけど!!!!


クラリッサは、楽しげに肩をすくめていた。





クラリッサが、しっとりと湿る岩盤の床に手をついた。


心無しか、普段より息が深い。

表情もひどく威圧感がある。


ダンジョンボスの広間より、かなり前。

広間まで距離は、十分すぎるほどある。


リーシャは、なんとも言えない顔でそれを見ていた。


(クラリッサさんが床に手をついた。

そして表情がいつも以上に怖い。殺気だってるって感じ。

何するつもりなんだろ……

絶対にロクなことにならない……絶対に……)


ひどく今すぐ止めたい。

ひどく!!


「オーケーね。それじゃ最後の確認。戦闘準備は?」

「問題ありません。」


「リーシャは?」

「やれるよ。」

(問題しかないけど。)


「並列魔術の種類は?」


「バフと回復だけ。」


「いや、バフだけにしなさいよ。もったいないから。」

「う……そうする。」


リーシャの杖の光が一つになる。

クラリッサは頷いた。


──知らんけど、これでいいようだ。


「――よろしい。んじゃいくわ。」


低く、短い言葉。

そして、再度短くつぶやく。ささやくように。


──『≪ライウェイ≫(※クソくらえ)。』

次の瞬間。




地盤が崩壊した。







「ええええ!!!!!」


クラリッサが手をついた地面から岩盤が放射状に割れはじめ、ボスのいる広間の床にひび割れが拡がっていく。


ひびはすさまじい速さで、走り、跳ね、広間へと侵食。


そして。


水の音。

海水が、牙を剥く。

外海の濁流が、ダンジョンへとなだれ込み、潮は、階層主を巻き込んで広間を蹂躙する。


「リーシャちゃん。行きましょう!!!」

「マリアさん!!何が起きたのこれ!!!!!」


「お嬢様がおっしゃっていた通りです!!」


轟音に負けないようにマリアは叫ぶ。


「お嬢様は、そのたぐいまれな筋力によって地形を破壊し、階層主の動きを地形破壊効果で阻害!!

そして海底から流れ込んだ海水が、戦闘領域そのものを更新しました!!!!」


「馬鹿じゃん!!!!」


「事実ですからっ!!!」


言われた通りの光景が、リーシャの目の前に広がっている。

説明されてもいまいち言葉の意味と、目の前の光景が繋がらない。

だが、現実だ。


岩盤が崩壊し、海水が流入したその不安定な地形を、マリアは風のように走った。


理解不能な戦場でマリアは、風となり、波を蹴り――


どごおおおお!!


階層主にマリアの一撃が直撃する。



「リーシャちゃん!!!!」


「や、やってやるわよ!!!!もう!!!!っ……!」


リーシャは杖を掲げ、そして結界が展開された。






光り輝く結界が、階層主ごと覆い、その悲鳴ごと、閉じ込める。


結界は二層。

階層主の周囲の結界。

そして階層に流れ込む海水の圧と、水を断つ結界。


リーシャの結界が、崩れた岩盤にふたをするように圧と水を完全に遮断し、内部だけを、静止させる。


巨大な水球の中で、階層主がもがく。




一連を確認したクラリッサは思った。


やる。


リーシャは、階層主の拘束と地形の安定化を同時にやってのけていた。


重力魔術。元素を操る精霊魔術。そして結界術。

得意のマルチタスクによる離れ業だ。


──制御はすでにバケモノレベルだ。

(しかも、これで序盤だってんだから嫌になる。)


クラリッサは軽く首を振る。

まあ、考えても仕方あるまい。



「リーシャはそのまま結界の維持。

それじゃ、とどめね。マリアよろしく。」


「はい。」





すごい。

――やった。


リーシャは階層主を倒した事に飛び上がりたいくらいうれしかった。


(……倒した)

あれほど暴威を誇った存在が、今は静かに、沈黙している。


「クラリッサさん!!やった!!」


「見事ね。

セドリック兄様でもこうまでいかないと思う。」


「うん!!みんなすごい!!」


恐怖。

混乱。

意味不明な指示。

地形破壊。

海水。

重圧。


すべてを越えて――

自分は、やり切ったのだ。


杖を握る手が、震えている。

だが、それは恐れではない。


熱と高揚。


「そ。良かったわ。じゃあ、逃げましょっか。」

クラリッサはいい笑顔で言った。


「え?」


「ちょっとダンジョン壊しすぎちゃったっ。

ここ崩壊すると思う。えへへ。」


「ええええええ!!!!!!!」






崩落から避けた先でクラリッサは言った。

「ふう。危なかったわね。ちょっとオーバーキルだったみたい。」


地形に対して


そして帰り道が塞がれた。

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