表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
ファーストイベント★きらきら★♪ときめき恋の夏合宿編♪ ♥〜ドキドキが止まらないっ〜♥

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/80

67話 海合宿開始

海。


白い砂浜と、どこまでも続く蒼。

古き誓約のように波が寄せては返し、潮の匂いが、夏の始まりを強く主張していた。


夏合宿はそこで行われる。

海にある校舎の別棟だ。


まるで世界の縁に築かれた前哨の砦のごとく、生徒たちを待ち構えていた。


「集合!!」


号令が、海風を切り裂く。


生徒たちは、即座に簡易的に設営された会場に並び、その前に、教師たちが立つ。





教師の話を聞く。


ぼんやりと説明を聞いていると、リーシャに級友たちが話しかけてくる。


「リーシャさん。お疲れ。

この合宿、なんか大変そうだよね。」


声量は大きくはない。

教師の話はまだ続いているからだ。


「うん。大変そう。」

「荷物運びは終わった?」

「うん。そっちは?」


「大体かなー。ねえ。

クラリッサさんとあんな仲良くして、平民だけどリーシャさんってすごいね。」


「え?

みんなもあんなもんでしょ?」


「だって……」

「ねえ。」

「うん。」


「確かに独特の迫力があるし、目力もすごいけど、話してみると普通だから。」

「えーすごーい。」


ざわつく女子たちの中、リーシャは冷や汗をだらだらとしながら思っていた。


──ごめん、みんな!!あの人、一切普通じゃない!!

(一見普通。

でも彼女は、なんかどこかおかしい!!

そして多分、アクセサリーとか男子とかには一切興味がないんだ!!!)


ガワだけの、なんちゃって貴族なんや!!




夏合宿。準備体操。


筋肉の女神を自負するクラリッサは、浜辺の木陰に倒れていた。


強い日差しが、別棟となる校舎と、訓練場を白く焼くなかで、彼女だけが涼やかな影の中にいた。


照りつける日差しの下、他の生徒たちが元気よく準備体操をしているというのに、まるで病弱な令嬢のように、木陰であおむけに倒れていた。


筋肉痛だ。

前日行われた神聖なる儀式の後遺症だった。

筋トレをやりすぎたのだ。


リーシャは気づいたので、声をかけに行く。

すでにクラスの中で、クラリッサ・グランディールの担当がリーシャなのは、暗黙の了解となっている。


「あの……クラリッサさん。どうしたの?

何かすごく……弱っているような。」


「リーシャちゃん。お疲れ様です。

お嬢様は、本当に動けなくなるまで筋力トレーニングを行うんです。

そして次の日、全身ガクブルの状態で授業を受けられます。

なぜなら、お嬢様はあらゆる授業を、筋トレのレストタイムと誤認なさっているからです。」


マリアが困ったような顔で説明する傍ら、日陰でタオルを顔の上に乗せて、クラリッサはノックダウンしていた。


「ふっ……いうようになったわね。

分割法を考えた時、必然的に1日のスケジュールをそう設定せざるを得ないのよ。

一日は24時間しかないのだから。

睡眠を削らず、効率を最大化するなら、授業を“間”に挟むしかない。

ましてやこれから夏合宿よ。どうするのよ。カタボリックしたら。

筋肉が削れるという事は、積み上げたものが失われる事を意味する。やり溜めないと。

あーだる。

きつーい。」


「おの、お嬢様。

顔にタオルを乗せて、グロッキーになりながら講釈を話されても、全く説得力はありません。

それにお嬢様は夏合宿の為の荷物すら運べていません。

予定が崩壊しそうです。」


「ふっ。」


クラリッサは、口元がわずかに緩む。

それは叱責ではなく。対等な者に向ける、短い賛辞。


そのやり取りを横で見ながら、リーシャは、にこにこと微笑んでいた。


なんでもいーや。


荷物運び手伝えばいーのね。


クラリッサは顔からタオルを外すと、手伝い始めたリーシャに気づく。


「ありがと。リーシャ。優しいのね。

ただの筋肉痛よ。少し休めば落ち着いてくると思うから。

リーシャも、私の領地から帰った後に、体が痛くならならなかった?」


「どうだったかなあ……」


リーシャは首を傾げていた。

そして思い至る。

は。そういえばなった!!すごくなった!!


クラリッサは強く頷いた。


「筋肉は、強い負荷を受けると、目に見えないほど細かく傷つき、そしてそれを治す過程で、身体は“炎症”を起こす。

ブラジキニン、

プロスタグランジン、

それからヒスタミン……

そして筋肉は前より少しだけ――強くなる。そういうことね。」


「いやいやいや、あの、微細といっている割にはかなり重症なんだけど……」


「ふっ。」

(炎症のピークは二十四時間後――今日は、捨て日。)


いや、ふっじゃなくて。







教師は、ざわめきの中、スケジュールを説明した。


「では、夏合宿のスケジュールを説明する。

五時。朝食を含めて準備をすます。

六時から浜辺での基礎体力訓練

八時から海中抵抗下での移動訓練。

昼食は、その後となる。」


「午後は、班ごとの課題演習。

魔術、剣術、補助行動、状況判断――

すべて混成で行う。」


「夕刻、自由時間と夕食。

そして座学。

就寝は、21 時。」


教官は、淡々と続けた。


「以上が、一日の基本スケジュールだ。

これを、七日間繰り返す。」





そしてクラリッサは海へと消えた。


とてつもない速さだった。


「あの……マリアさん。クラリッサさんは?」


「基礎体力訓練そして、海中抵抗下での移動訓練。

つまり泳げばいいんでしょう、との事です。そして魚をとってくるとの事です。」


──へー魚……


(波の間をすごい速さで通過して、きっと泳いで取るのだろう。)

──相変わらずすげーや。

……いや、そしてクラスのみんなに、この状況をなんて伝えればいいんだろう。


「はっ。

リーシャちゃんが、すごく、すごく遠い目をされています!!」



――なぜだ。


ノックダウンしていたではないか。


だが、それこそだからなのか。


倒れ、

そして、

海へ還る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ