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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
学校入学。乙女ゲーム開始

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65話 実験

さらに次の休み。


クラリッサは、リーシャをグランディール伯爵領に招いていた。


すでに魔術学校において、彼女たちは「仲の良い友人たち」として知られていた。

伯爵令嬢クラリッサ、その従者にして礼節を併せ持つマリア、そして平民の出でありながら不思議な気配を纏うリーシャ。


容姿は、三人とも目を引く。

魔術適正もクラリッサを除いて悪くはない。

立ち振る舞いも丁寧で言葉遣いも、うわべは穏やか。

学校という小さな社会において、彼女たちは自然と「居場所」を得ていた。


だがクラリッサの視線は、さらに深いところを見据えていた。


友人グループの形成は、大事なタスクだ。

だが、友誼の形成など、通過点に過ぎない。


──リーシャにおける脅威度測定は、急務だ。

(友人関係。友人グループ形成の進捗は、順調とみていい。

だが、そろそろ次の段階に移行してもよいだろう。)


「楽しみだなあ。」


「そうね。」

(ほんわかしているところ悪いけど、全て詳らかにしてあげる。リーシャ。)


クラリッサは、非常にわきわきしていた。

実は筋トレと同じくらいゲームが好きだった。

キャラクターの性能チェックほど、上がるものはない。


リーシャは、威圧感を感じてクラリッサを見た。


リーシャが振り返って見るとクラリッサはいつもの澄まし顔だ。


マリアは戦慄していた。


(あ、お嬢様。またよからぬことを企んでる……)





グランディール伯爵領は、王都から馬車で二日。

すでに彼女達は飛翔魔術でその領地についていた。


整えられた石畳。

等間隔に並ぶ街路樹。

領都へと続く道。


夥しい鶏舎と、羊の群れ。

牧歌と勤勉が同居する、畜産の街並み。


「飛翔魔術も慣れたものね。

セドリック兄上と比べてもリーシャの魔術は、遜色ないように見えるわ。」


「そうでもないよ。

なんか飛んでる時、寒いし。」


それは多分、薄着だからだろう。

魔術とは関係ない。




ザ・レイディーファーストキス。

そしてその主人公リーシャ。


主人公のスケールは、その物語のスケールに等しい。


物語のキャラは、待ち受ける試練に応じて強さを設計される。


10の壁を越えるためには、10の力。

100の絶望には、100の奇跡を。

越える過程は千差万別なれど。


なら。


リーシャの底の深さは、比例する。

今後クラリッサ・グランディールに降りかかるであろう、その破滅の大きさに。



──というか、ごちゃごちゃ考えたけど、要はキャラクター性能チェックだ。


(単純にプレイアブルキャラの成長先を想像するのって楽しいのよね。)





クラリッサは初手で、バーベルに案内した。


中庭。小屋。

クラリッサのラボと化している、ジム。

研究室にして聖域。


鉄が支配する場所。

バーベルが並び、器具が沈黙する。


強さをはかるなら、ここ一択だ。

ここ以外にはない。


「ここは?」

「ジムね。バーベルは国に没収されていたけど、漸くかえってきたの。

まあ、それはいい。

バーベルが貸し出されている間に、マジックアイテム置き場にされててね。ちょっと待っててもらえる?

見て欲しいものがあるの。」


「うん。」


「じゃあマリア。あれを。」


「どれですか?」


「1番やばいやつ。」

「お、お嬢様。本気ですか?

あれはお嬢様が国に提出しないで領内にがめたものです。バレたら」


「バレなきゃ大丈夫よ。

リーシャにはどうせわかんないから。」


「嫌な予感しかしませんが……」


そしてマリアはそれを持ってきた。


それは、まず剣の形をしていなかった。


金属が溶けかけたまま固められたように、歪み、うねり、ところどころが不自然に膨らんでいた。


闇の魔力を孕み、触れれば呪いを受けると誰もが直感する異形。



リーシャはベンチに座り、足をぶらぶらしていたが、それを見て止めた。


「この大剣は、マジックアイテム。これを是非使ってほしいのよ。

あ、近寄らないでね?」


「呪われるから?」


「よくわかったわね。」


「どうやってつかうの?それ」


クラリッサは肩をすくめた。




慎重に、それを扱うための装備をマリアはしていく。


魔法防御に特化した《四精霊装備》――アーク・エレメンタル。

物理防御、魔術耐性、呪詛耐性、精神干渉耐性。

そして高いステータス補正を持つ


クラリッサも手伝った。


「こんなところか。

禁忌の逸品だからね。装備条件厳しすぎでしょ。」


「まあ、魔王戦線の逸品ですからね。これを自在に操っていた高位魔族が恐ろしいです。

……それでは、いきますね。」


「マリア、あなたでも厳しいと思う。」


「存じ上げております。何度か試しておりますので。っ……!」


柄に触れ、魔力を通したその瞬間だった。

空気が沈み、マリアの肩が、わずかに落ちた。


──世界が、彼女の周囲だけ重くなる。


そして剣先を、少しだけふった。


ずん。


低い音とともに剣の先に向かって、空間が歪み、視界が、わずかに引き延ばされた





「……以上です」


魔力を流すのをやめた次の瞬間、重力も解放される。

剣を支えていた腕から、一気に力が抜ける。


がくり、と膝をつく前に、マリアは必死に体勢を立て直す。








その一部始終を見て。


リーシャは、小さく頷いた。


「うん。」


そして杖を振った。


「あ。できた。」


……


神話は、静かに始まった。


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