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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
学校入学。乙女ゲーム開始

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61話 学校生活開始

昼食。

午前の授業を告げる鐘が鳴り終わると、校舎全体の空気が、ふっと緩んだ。


屋上へ続く扉を押し開けると、あちこちで生徒たちが腰を下ろしていた。


マリアはリーシャとそこで、昼食を食べていた。

大きな理由はない。教室での席が隣だったからだ。



視界いっぱいに、高く、澄んだ春の空が広がっており、遠くには王都の屋根や塔が、陽光を受けてきらめいていた。


リーシャは、膝の上に置いた弁当箱を開いた。


木製の蓋を外すと、質素だが丁寧に詰められた家庭的な中身が現れる。


「へー。マリアさんって平民なんだね!」


「そうなんですよ。

グランディール家でメイドをやらせてもらっていて。

運良く少し魔術も少し使えたので、魔術学校に入れました!」


「天才じゃん!

そんな少し魔術使えるくらいで入れるようなところじゃないと思う!!」


「えへへ。そんなことはないです。」


マリアも、感心したように目を輝かせていた。


「リーシャちゃんも、すごいです!!

ここって倍率すごいのに、アルシェリオン魔術学校によく入れたましたね!!」


「うん。故郷の村の助けになれるような、立派な魔法使いになりたいんだ!!」


「へーすごーい!未来の大魔法使いと友達になれちゃいました!!」


「えへへ。

でもみんな貴族様ばっかりだから緊張しててね。マリアさんがいて良かった。

ほら。今も屋上のあちこちで、上品な笑い声が……」

「わかるー。そうなんだよねー。」


二人は、ともに平民出身。


魔術学園の生徒は、ほとんどが貴族だ。

数少ない平民の二人は、確かに「味方」を見つけていた。

自然と気が合うのも必然と言えた。



「あ、マリアといつも一緒にいる人も貴族?

クラリッサさんだっけ。

すごくきれいだよね。

もしかしてご主人様?」


「はいっ!

クラリッサ様とは、小さい頃からずっと一緒なんですよ?」


「へー。すごーい。」


屋上へ続く扉が開き、わずかに歩調を落としたクラリッサが屋上に姿を現す。

春の光の中で、マリア達を見つけると歩いてくる。


心なしが疲れているようで、頬を触って溜息をついていた。


「あ、お嬢様。お疲れ様です。お昼ご飯の用意はできてますよ。」


「ありがとマリア。」


「授業中に呼び出されて大変でしたね。

どうなされたんですか?

難しそうなお顔されてますが。」


「ええ。ちょっとね。

魔王戦線の軍隊編成なんて現場でやりなさいよ。アランの奴。

マルセル司教だって、お金を十分に投資してるんだから、教会勢力切り崩しくらいアドバイスなくやりなさいっての!!

ぐすん。ちょっと寝れないかもしばらく。

ああ、リーシャさん。わたくしもご一緒しても?」


「は、はい!!!」


クラリッサは柔らかく微笑んでいた。

リーシャは、返事はしたものの完全に固まっていた。


……魔王?……教会??……軍隊????


……え?





放課後。


制服のまま寄り道をする者、馬車を待つ者、寮へ戻る者。

授業を終えた校舎から、生徒たちが街へ流れ出していく。


親交を深めるために、三人は王都の街へ繰り出すことになった。


クラスでの席が近いからだ。



太陽はゆっくりと傾きはじめているが、空はまだ明るい。


校舎の石壁は淡い橙が混じり、長く伸びた影が、石畳の上で静かに重なる。

どこかで鳴る鐘の余韻と街から漂ってくる甘い匂いが、時間の移ろいを告げる。


案内していたリーシャは、振り返りながら、楽しそうに言う。


「ここのお店、王都に来た時は家族で必ず寄ってるの!!

すごく美味しいって評判なんだ。

口に合うかは心配だけど。」


「構わないわ。

よく私って、森で捌くから。

獣を。」


リーシャは首を傾げた。


森?


……獣?


聞き間違いかな?

クラリッサ・グランディールといえば、すごく有名な貴族。


流石に聞き間違いだろう。





街角にあるスイーツショップ。


硝子張りの店先は、夕暮れの光を受けてケーキや焼き菓子が宝石のように並んでいた。


一行は席につく。

そしてメニューが差し出された。


クラリッサは、紙面に視線を落とし、指先でゆっくりと、メニューの行をなぞっていた。


「そうね。何がいいかしらね。このメニューだと。」


リーシャはかなり注目していた。


──クラリッサ・グランディールは、きっと凄い高いものを頼むんだろう。


庶民と貴族を分ける大きな違い。

それは金銭感覚だ。


特に貴族の淑女ともなれば、お金をかけてでもいいものを選択する傾向が強い。

(ここって庶民向けだけど、一応は貴族用のスイーツもあるから。)


リーシャの心の中で勝手にハードルが上がっていく。


クラリッサは、手慣れた様子で店員を呼んだ。


「水を。」


「え?」


「水を頂ける?」

(喉が渇いているし、糖質と脂質管理は厳正にしているから。

このメニューだと水ね。一択。)

「み、水……」


「ええ。水道水を。

生ぬるくてもいい。」


そこに一切の容赦と躊躇はない。



「あ、私はストロベリーケーキ頼みますね。

リーシャちゃんのおすすめなんですよね!!」


「う、うん。そうだよ。マリア!」


そして。


店員は、トレイを片手に、客席のあいだを静かに抜けてくる。

(やはり聞き間違いではない。

いや、どう考えてもおかしいけど、聞き間違いではないんだ。)


ケーキも届く。

頼んだから。


──とん。


小さく、乾いた音を立てて、水の入ったグラスがテーブルに置かれた。

頼んだから。


クラリッサはそれを手に取り、何の迷いもなく、上品に口をつけていた。





リーシャは、メニューと、ショーケースのきらきらしたケーキと、もう一度貴族然とした美しいクラリッサを見る。




いたたまれなくなって、リーシャはケーキの皿を差し出す。


「あの、いる?」

「いらないわ。

だってケーキは、カロリーにすると18cm型の8等分で約354kcal。

さらに糖質26g。脂質26g。

たんぱく質だって5gなんだから。

それなら卵一個食べれば事足りるし。

仮にケーキを食べてしまったあとで、300kcalを消費するには、10キロ歩かないとならない。採算がとれないし、合理的とは思えない。」



へー


透明なグラスに注がれた、そんな静かなる水が揺れていた。


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