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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
学校入学。乙女ゲーム開始

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61/80

60話 入学式

アルシェリオン王国魔術学校、入学式

石造りの大講堂。

天井は高く、歴代の魔術師たちの紋章が淡く光っている。


演台を中心に半円。

序列は隠すようでいて、逆に可視化されている。


中央

王家・公爵家・名門魔術家系。

第二王子アルヴェルトを中心に、空間が一段落ち着いている。


右側

伯爵・子爵クラスの実力派。

研究志向、宮廷志望。


左側

古い家系だが没落気味。

焦りと野心が混じる。


そして一番後ろに平民枠。


誰かが小さく、しかし確かに呟いた。


「……平民が?」


平民であるリーシャは、聞こえないふりをした。

聞こえていないわけがないのに。




やがて、クラスごとに分けられ、廊下を進む。


石床に靴音が重なり、まだ身体に馴染まない一年生達の制服の裾が揺れている。


長い回廊の片側には、等間隔に並ぶ窓があり、白い石壁をなぞるその光はやわらかく、埃すらきらめきに変えて、空気そのものを祝福していた。


いた。


リーシャ。


ザ・レイディーファーストの主人公。



教室内の窓からも、春の光が差し込んでいた。

窓の向こうで風が若い木々を揺らし、遠くで鳥の声。


これから始まる授業。

まだ知らない人間関係。

期待と不安が混ざり合う高揚感と誇らしさ。


祝福か、試練か、あるいはその両方なのか、想像もつかない空気の中。


つまりオリエンテーションが手際よく進む中で、クラリッサは、じろじろ隣を見ていた。


──ピンクの髪の平民。

(こいつが、ザ・レイディーキスの主人公リーシャ。

そして同時に、ザ・レイディーファーストキスの正ヒロイン。

覚えてる範囲の設定では、確か平民でありながら、魔術科に入った、才媛。)


クラリッサは激しく思った。

──容姿は上の中って感じか。


つまり言い方を変えるなら、そこそこ可愛いが、普通。

そして体格を見るに筋力はない。 

いや、筋力に関しては軟弱な部類に入るだろう。


──まずは、見極めないとな。


(リーシャは、平民にも関わらず第一クラス。

この点に関してだけは、設定だからといって、流していいとは思えない。

単純に、主人公補正のご都合とんでも展開はありうる。

それならそれでいい。)



オープニング時点──つまり今のリーシャの魔力はしれている。

レベルも低い。確か初期レベルは10。

そして後で覚醒して。最強聖女になる。

攻略対象とキスして。


──キスだって。ねえ、キスだって……

(愛の力で花開くものなんて、人生以外何があるのか。

プラシーボ効果かな?)

なんだかむず痒い気持ちになりながら考える。




まず、セドリックルート。

没落していくグランディール家の中で、最終的にクラリッサが死亡するイベントが発生する。いわゆる没落破滅フラグ。


だがおそらく、グランディール伯爵領が滅ぶことはもうない。没落するにはクラリッサが権力を持ち過ぎている。

よって、このルートはクリア扱いでいい。



聖女証明死亡ルート。

聖女を証明するために、クラリッサが魔王戦線に遠征して死亡するイベントだ。

魔王戦線から自分がここに生きて帰ってきている以上は、それも消滅。

魔王戦線は生還率5%の死地。

普通まず死ぬ。

だが今生きているから。



魔王ルートには懸念が残る。

魔王は倒したが、魔王には倅がおり、その倅は魔王の後継者になりうる、魔王討伐後に倅を探したが、どこにもいなかった。

どうにもきなくさい。

そして、生存していれば、ルートに入ってくる可能性が高い。



主要ルートのいくつかは潰した。

だが危険な分岐は、まだ生きている。


(そして何より厄介なのは、世界が、もうゲーム通りには動いていない!)

──というか、細かい所をそもそも覚えてない!!


どうしたものか。


──いやまあ、どうにもなんないのだが。




クラスの自己紹介はつつがなく進み、クラリッサの順番が回ってくる。


ざわめきの中、クラリッサはそれを言った。




クラリッサ・グランディールです。


趣味は筋トレです。


軟弱なものは嫌いではありません。

なぜなら、全ての人間は軟弱だったからです。


筋トレは、全ての軟弱な者に、自己肯定感と生物としての強さを纏わせます。

なぜならテストステロンは、追い込むほどに生成されます。

そうして危機を乗り越えながら進化してきたのが私達生物です。

そしてすでに変わったもの、筋肉に自信があるもの、それら全てを越えて、真に最強は私だと思います。


よろしくお願いします。



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