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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
荘厳の議会

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54/82

54話 クラリッサの、楽しい聖女見習いの仕事。

後日。事情聴取。


関係者――貴族、教会、王国側の監察官が一堂に会し、「レベル上昇の秘術」について正式に共有されることになった。


クラリッサは席に座りながら、内心で頷く。

(ふむ。ちゃんと専門家をそろえてきたみたいね。準備の良いこと。まあ、数値が異常なら、まず測定環境と再現性を疑うのは当然ね。


そもそもザ・レイディーファーストキスではレベル35は中盤。

なんか思ってたより、強くなっちゃったけど、戦闘経験の少ないマリアだったし、まあいいかなと……でもアウトだったのね!!どんまい!私!!!)



「小聖(※聖女見習い)クラリッサ殿。君はレベルをあげられる。それは再現性がある。そう言ったね?」

「そうですね。普通ですね。」


「「「どこが普通なんだ!?!?」」」


監察官達のツッコミが合唱のように重なり、クラリッサは肩を竦めた。


「控えめにやりましたし。」

「「「控えめ……? あれで控えめ……!?」」」


情報漏洩対策の契約魔術は、彼らはすでに済ませている。

レベル上げの秘術は王命であり、その役目は重たい。


貴族側。老獪な交渉を生業とする監察官

王族側。数々の異常事例を処理してきた重鎮。


そして教会側。神学と禁忌に精通した立会い高位司祭が、顔面蒼白のまま震える声で口を開いた。


「過去にドラゴンを討伐した国の英雄と、同じレベルなのですよ!?控えめとは一体……」

「そんなの、基準が単純に低いのでは。」


沈黙。


逆に驚いた顔をするクラリッサに、観察官たちは額を押さえた。


――こいつ……自分がそこまで異端であるという自覚が無い……!

――しかも、悪意ゼロで事実だけを淡々と語っている……!



クラリッサは、その時、先日の議会での事を思い出していた。

――思い出される台詞。

「クラリッサ嬢を、聖女候補とする!!」


思い出される、第一王子レオナールと、教皇代理エルンストのしてやったり顔。


バキっ


思わず椅子の手すりを握りつぶす。


聖女候補認定──これは絶妙にこれからの活動を縛る妙手だ。

(表向きは名誉ある称号、だけど、権威があまりに大き過ぎて、あらゆる監視の目が集まってしまう!!)


そうならないように、目立たないように、石鹸の資金を使って教会連中を少しずつ順次、買収する予定だったのだ。


――そして教会への影響力が目標に到達した時点で、レベル制の本格的な拡大や、ボディビル大会開催のための教義改変に手を出す算段だった。


(だがそこに聖女の肩書きがあれば、動きは筒抜け。

知らぬうちに“見えない鎖”として、全ての行動を制約されてしまう。

というか、奇行を重ねて教会から破門されたら、それこそ教会への影響力が失われる!それはボディビル大会開催の失敗を意味する!!)


──聖女という権威で完全に縛られた!!これでは、教会の意向を無視できない!!


まさに妙手!!


バキバキ!!!

クラリッサが手すりを再度ぶちこわす。


「ひいい!クラリッサ殿!?どうなされたのだ!?」


聞き役の一人が悲鳴を上げた。


「ひええ!!」

(──怒らせてしまったのか!?我らはクラリッサ殿を怒らせてしまったのか!?)


(クソがあ……しまった。完全にやられた!!聖女認定!?その手は完全に抜け落ちていた!!

魔王討伐の提案で、メリットを提示しすぎたんだ!!最後の最後で、詰めを誤った!!なんでそんな事で聖女認定なんてするんだ!!)


グランディールを中心に活動を始めて、やがては国中に筋トレを布教する。

クラリッサの中の、筋トレアルシェリオン王国布教計画がガラガラと、崩れる音が聞こえた。


クソ第1王子レオナール!!そしてクソ教皇代理エルンスト!!貴様らの顔は覚えたからな!!

覚えとけよ!!老害どもが!!




グランディール領の教会へ顔を出す。


クラリッサの到来に、教会がにわかに騒ぎ出す。

奥の告解室の方から、年老いた神父が杖を鳴らして現れた。

司祭マルセル。


クラリッサが、ちょいちょい買収している仲の良い司祭で、普段であれば、目が合えば苦笑いの一つも交わす相手。

だが、その司祭の顔が敬意と同時に、測りかねるものへの警戒が混じっていた。


「よ、よくおいでくださいました。小聖クラリッサ。」


「司祭。こちらを。」


「小聖の証……。本物でございますね。もちろん疑ってなどおりませんが。

白金に近い光沢を持つその証。間違えるはずもありません。」


「私は先日より教会に所属する事となり、今までのように喜捨はできなくなってしまいました。

ですが、この身は神に捧げる所存です。

今まで以上に、粉骨砕身にて活動しなくてはなりません!!」


「お、おお……それでは。」


「まずは教会の決算報告を。

そして業務フローチャートを全て組み直します。」


「……は?」


「神聖法第三百十二条。

教会に属するすべての司祭・助祭・修道者・並びに管理職は、当該聖女の指示・勧告・判断に対し、正当な理由なくこれを拒み、遅延し、または無視してはならない。


これに違反した場合、当該命令の履行を妨げる一切の慣例、前例、内部規則は、聖女の裁量により停止、改定、または破棄され得る。」


すらすらと読み上げる。






「聖女のお願いは聞かないとですね?司祭様っ!」


にこやかに笑う、名伏し難い悪魔が降臨した。

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