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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
武術大会編

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38/82

38話 闘技場地下

──ドゴオッ!!!!


壁が破壊された爆発音。それが、背後で弾けていた。


振り返る暇はあるまい。


逃げるクラリッサとバルドを追うように、巨躯が、最短距離を突っ込んでくる。


――壁を障害物として認識していないのか、進路にある壁など、紙のように破りながら。


石壁が裂け、木材が砕け、鉄骨がひしゃげた。


「……っ、しつこい!!」


「追いつかれるぞ!!やっぱそいつ捨てろ!!距離が縮まってる!!身軽になった方がいい!!!」


「流石にここまで連れてきて途中で放り出すのはちょっと!!良心の呵責が!!」


「そんな事言ってる場合じゃねえだろ!!それに今更だろうが!!!」


バルドが叫んだ。



次の瞬間、側面の壁が爆ぜた。


ドガァン!!


壁をぶちやぶり、巨躯が姿を現す。

天井に頭がつかえるほどの体格。

筋肉の塊。

鎧とも肉とも判別のつかない、異様な外殻。


目が、こちらを捉えている。


(距離、縮小中。直線勝負では勝てない。通路幅、三メートル弱。天井低い――曲がり角、十五メートル先。)


「バルドさん!!次の角、左です!!全力で!!」


「了解!!」


二人が角を曲がる


そこは柱がいくつも立ち、天蓋を支える、だだっ広い空間だった。





クラリッサが、顔を上げる。


天井を支えるための太い石柱が、いくつも立ち並び、規則的に配置され、地面と天井をがっちりと繋いでいた。

装飾は少なく、純粋に「荷重を受けるためだけ」に作られた構造。


(柱間隔は均等。天井はアーチじゃない。つまり――何点かでも逝けば、連鎖する!!)


「過去、竜を殺したとされるアーダルゲイルが、竜をしとめた場所だ!!この空間に蓋をするように闘技場は作られている!!

とはいえ今は出場者の搬入通路になっているがな!!」


自分たちが来た通路の奥から、赤黒い影が、柱の隙間を歪ませながら姿を現した。


「ち。きやがった。どうする嬢ちゃん!ジリ貧だぜ!あいつの方が足が速い!」


「時間を稼ぎます!!」


「それができたら苦労はしねえんだよ!!」


クラリッサは。抱えていた“それ”を、壁際にそっと降ろす。

雑には置かない。最低限の配慮。そして――


肩を回した。


「さすがに、ここまで来て“完全に逃げ”は無理です!

人間らしい知能に溢れた、ジェンダーレスで男女平等な戦いを見せます!!

バルドさんは、その間に柱をよろしく!!」


「そういうことか!!」


──ドゴオッ!!


クラリッサの踏み込みからの打撃が、オーガの急所に突き刺さっていた。


実際には、拳はわずかに角度をずらし、固い部位を割けるように打ち込まれている。

体格差がありすぎる。急所でも狙わなければ、無理だ。


生物としての構造的弱点。すなわち股間。


(肩が先に沈む。来るのはフック系。リーチ長い。――避ける。いけ。)


オーガの豪腕が、空を裂き、その内側へ、再度クラリッサが滑り込む。


──死ね!!くそオーガ!!!むうん。男女平等パンチ!!


常に半身。

常に、逃げ道を確保。そして股間へ。

蝶のように舞い、蜂のように刺す。





オーガの打撃を巧みに避けながら、普通に肉弾戦をしているクラリッサに、バルドはひくつく。

(マジで殴り合ってやがる……!!オーガの異常種だぞ!!本当に人間かよ!!)

「……急ぐか。」


バルドの大剣は振り下ろされた。


狙いは。柱。


――ドゴォン!!!!


衝撃。


爆音。


石柱が“切れる”のではなく、火の魔力の爆発で砕け、圧倒的な力で、建造物そのものが破壊される。


──ドガァン!!


バルドは、迷いなく踏み込み、再び――柱を叩き割った。二本目。


粉塵。

落石。

空気が、震える。


三本目に、狙いを定め、剣を振り抜く。


――終わりだ。


何本目か数える事を忘れた頃、柱が倒れ、天井を支えていた“均衡”が、音を立てて連鎖的に崩壊する。


石、鉄骨、瓦礫。

重力という、最も公平で、最も暴力的な力が

空間そのものを押し潰す。


崩落の中、ブラッドオーガは吠えていた。そして咆哮もろとも、圧し潰されていく。



クラリッサは、崩れる瓦礫から縫うように逃げながら、ただ一言、漏らした。


「これが知性の力よ!!!死ね!!股間にでかい物をぶら下げたまま進化を止めた野蛮人め!!」


「嬢ちゃん、ツッコミ待ちかよ!!!!」


クラリッサは、どや顔で言った。


「人は衣類を着る事で文明を築いてきた!!

その股間を覆わなかったのが貴様の敗因だ!!くそオーガ!!創造の前には、破壊があるという事を知りなさい!!!!」

  

「だから意味がわからねえ!!!!」




瓦礫を跳び越えながら、二人は転がるようにして、安全圏へ飛び出した。


やがて瓦礫の崩落が終わる


轟音が、完全に背後を塞ぐ。


一瞬の沈黙。


狙い通り瓦礫にオーガは、押しつぶされていた。


巨体は石と鉄骨の下敷きになり、さきほどまでの咆哮は、もう聞こえない。


「……」


「終わったのか?」


「わからない。どの程度の耐久力があるか次第。骨格が人型なら、もう動けないはずだけど……」

(自重、推定1トン。瓦礫の体積はそれより甚大、落下の高さも十分。もろに直撃してるけど……)


クラリッサは、その光景を見つめたまま。ようやく、そう答える。



石と鉄骨が折り重なる瓦礫の向こう、崩れた天井。さらにその向こうに空が見えた。


地下にいるはずなのに、光が差し込み、粉塵がきらきらと舞っている。


――そこはちょうど闘技場の下。天蓋は闘技場そのものの床にあたる。

それが、壊されたのだ。


壊れた地下から、地上をぬけ、空がのぞいた。




「お嬢様!!!!」


崩れた天井。

見えた空の脇から、ひょこっと影が差し込んだ。


瓦礫の縁に、必死にしがみつきながら――顔を覗かせたのは、クラリッサの見知った顔だった。


「マリア!!!!」


「ご無事ですか!?!?生きてます!? 腕とか欠損してません!? 骨、何本あります!?!?」


「ええ、生きてますし欠損もしてませんし、骨は206個程あるから全部ありますね!!!」


「良かった……!!」


マリアは、張りつめていた空気が、ふっと緩むよつに、思わず息を吐いた。


「闘技場が急に揺れて!!闘技場が崩れ始めて!!

そしたら地下に穴が開いて――!!そしたら、そこにお嬢様が!!!」







マリアは、下を覗き込み、瓦礫と崩壊の先にそれを見た。


「……オーガ……?」


赤黒い巨体が、瓦礫を押し除けて立ち上がり、言葉を失う。



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