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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
武術大会編

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37/80

37話 対ブラッドオーガ戦

それは闘技場地下の奥深く、魔法陣と鎖で半覚醒状態に拘束されていた。


オーガとは違った。


皮膚は血を塗り固めたように暗く、太い血管が脈打ちながら外に浮き出ている。


大量殺戮や魔力汚染を経て生まれるオーガの異常個体。

血のように赤い皮膚をしている事から、ブラッドオーガと称される


皮膚が赤黒い鋼鉄のようなものに変質している。



――地鳴のような振動とともに、鉄骨が曲がり、石が砕け、そこから現れた。


執事は震える手で、拘束具の封印杭を一本、引き抜いた。覚醒を促し、魔術的な封印を解く為の杭だ。


眠っていた怒りが、瓦礫の向こうから目を覚ます。




「嬢ちゃんもう一度言う。今すぐ逃げろ。」


「あらバルドさん。あなたは私の敵なのでは??契約の関係で!」


「うるせえ。早くしろ。

俺が命じられたのは人質の拘束と見張りだ!!命を奪うのは契約に入ってないんだよ!!

くそが。あれを使って、ここら一体の人間を皆殺しにする気だ!!!」


「単なる大型魔物では?」


「バカが!!異常種だ!!一度戦場で見たことがある!!大型魔物とは一線を隔すバケモンだ!!

奴からすれば嬢ちゃんの持つ、帳簿が日の目に出た時点で終わりだ!

全部ぶっ壊しにきやがった!!」




天井に頭がつかえ、肩を揺らすだけで梁が悲鳴を上げる。

筋肉は膨れ上がり、皮膚の隙間から血のような魔力が滲んでいた。


「はははははッ!!」


執事の嗄れた笑い声。


彼は取り乱しており。狂気と安堵が奇妙に混ざった声が、空気を、震えわせた。





バルドの全身を走る魔力が、赤。橙。そして、深紅の三層に重なって輝いた。


――戦闘用エンチャントと、自己強化バフの同時解放。

それぞれの色は、筋力強化。

反応速度増幅。

耐久補正を意味する。


「――魔剣解放」


バルドが呟いた瞬間、大剣に刻まれた刻印が明滅し、それは振るうたびに灼熱と衝撃を同時に叩きつける、純然たる破壊兵器へと変じた。


「うおおおおお!!」


バルドの踏み込み。

一歩で間合いを詰め、横薙ぎに、剣を振るい、炎と衝撃波が空間を引き裂く。


――轟ッ!!

「……っ!?」


バルドは、歯噛みする。

ブラッドオーガの脇腹が、抉れ、焼け、肉が飛んだ。だが、斬った感触が、骨まで届いていない事を伝える。


「無駄だ!!裏賭博の“保険”。運営の金で飼ってた――ブラッドオーガ。オーガの上位種だ!!そんな攻撃がきくかよ!!

どのみち失敗すれば俺はおしまいだ!!……もう終わりなんだあ……!!全部ぶっ壊してやる!!!」


巨躯の腕が、振り上げられ、振り下ろされた。


「ぐっ……!」


剣で受けたが、バルドの身体が、後方へ吹き飛ぶ。


立ち上がろうとして、石の壁が崩れるほどの衝撃に片膝が落ちると、深紅の魔力が、揺らぐ。

ダメージは甚大。


「……くそ……」


バルドは、歯を食いしばった。


「……クソが……」


血走った眼がバルドを捉え、その頭蓋を砕くために腕が振り上げられた。






そのブラッドオーガの腕を、クラリッサは、受け止めていた。


衝撃で床が、円形に陥没する。

石畳が蜘蛛の巣状に割れ、粉塵が舞い上がった。


「むうん……!!」


歯を食いしばる。


腕が、痺れる。

肩が、悲鳴を上げていた。



オーガの圧縮された鉱物のような骨格。

筋繊維の密度。

魔力を媒介にした収縮効率。


どれを取っても、人間の設計には納まらないということか。


──羨ましい!!とうかずるい!!!!無理!!純筋力勝負は、話にならない!!

(体重、最低でも1トン級!いや、魔力込みならもっと!!

関節トルクが想定上限ぎりぎりで、肩があと一発で壊れる!!

止めるんじゃない――減速させろ!!終わる!!)


力は相殺されていない。

ただ、地面に逃がしているだけだ。


バルドは間抜けな声をあげた。完全に終わったと思っていたからだ。


「……は?」


「お、重っ……!!重いんですけど!!!すでに私の筋力はゴリラの2倍なのに!!測定で証明できてるのに!!あの時の私の喜びを返せ、こんのクソオーガ!!!!空気読め!!!!」


「いや、嬢ちゃん、ブラッドオーガと比較できてる時点で人間じゃねえ!!」


「テストステロンが高い人ほど「地位を守る行動」を取ります!!

よく誤解されますが、テストステロン = 短気・暴力的ではない──やっぱりマッチョは、心が優しいということです!!」


「すまん!!嬢ちゃん。意味が!!」


「筋トレや高強度運動は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった感情制御に関わる神経伝達物質を安定させ、自己肯定感を高めます!!

つまり筋肉量が多く、テストステロンが安定して高い個体ほど、弱者や仲間を守る行動を取りやすいんです!!!」


「おおおおおお!!」


次の瞬間。クラリッサを回り込むように、バルドの側面からの一撃が、ブラッドオーガを吹き飛ばす。

大剣が、地を擦るほど低く構えられ――

一気に振り抜かれた。


――轟ッ!!


魔剣解放状態の一撃が、ブラッドオーガの脇腹を再度直撃する。


炎と衝撃が同時に炸裂し、巨躯が――横殴りに吹き飛んだ。


壁に叩きつけられ、石と木材が崩れ落ちる。


「「地位」とは 信頼される、頼られる、仲間を守る、といった社会的評価を含みます!!

オーガとバルドさん。あなた方は、なかなかのマッチョです!!

とはいえ、この場で一番のマッチョは私だ!!!!絶対的に私だ!!!!そこだけは譲れない!!!!」


バルドが肩で息をしながら。呆然と声を漏らした。


「嬢ちゃん!逃げるぞ!!!」


「……ちょっとだけ待って!!!まだ、話が終わってないんだけど!!!」


「どうでもいい!!それに野郎に大したダメージはない!!よくぶっ飛んだが、それだけだよ!!!!走れ!!」


煙の向こうで、ブラッドオーガが、ゆっくりと立ち上がる。




「ひゃははは!!!!終わりだあ!!!」


クラリッサに担がれながら、執事は笑っていた。


──すごく取り乱している……この人、メンタル弱くない??

「いい感じに、混乱できるって、幸せよね!」


「お。おい、そんな奴捨てとけよ!!」


「闘技場賭博における貴族とのつながりを示す、証拠品だもの。帳簿とセットにして提出するから置いてかない!!」


「証拠品……。人間扱いではないんだな……。ならいいのか。」


バルドは首を傾げた。


いいのかな?





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