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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
武術大会編

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31/57

31話 本戦一回戦バルド・ガルディウス

王都アルシェリオンの闘技場は円形だった。


貴賓席は闘技場正面、高く張り出した石造りのバルコニーに設けられている。


王家の紋章を刻んだ天蓋の下で、王族とその側近、また各派閥の有力者たちが静かに視線を交わす。


やがて、武術大会開会の合図を告げる角笛が高らかに鳴り響く。


一回戦――過酷な予選を勝ち抜いた、名も無き者から名を持つ者まで、すべてが同じ砂の上に立つ。


ここで敗れれば、栄光はない。

ここで勝てば、王都全体が、その名を覚える。




闘技場の内部は、想像以上に広大。


すり鉢状に観客席がせり上がる中心に、砂を敷き詰めた主戦場。


観客席の最下段は騎士や貴族、そして次に富裕層、さらに上段へ行くほど平民の席となり、最上段は立ち見の群衆。


主戦場の周囲には、結界柱が等間隔に配置され、淡く輝く魔術紋が浮かぶ。


聞こえてくる観客のざわめきは、地鳴りのように腹の奥を震わせる。




マリアは予選を全勝で勝ち抜いた。そしてその闘技場に立つ。


観客席の一角にふと目をやる。


貴族席とは思えぬ殺気が、局所的に噴き上がっていた。


珍しく、いや、異常なほどにクラリッサ・グランディールが荒ぶっていた。


ジェスチャーで、器用にマリアに対してメッセージを伝えてくる。


「マリア。あいつだけは潰しなさい!!」


「お嬢様。急にどうしたんですか?なんか殺意が異常に高まっているんですけど!?」


「見なさい、あの対戦相手の身体……!!」

「強そうですね。」


クラリッサは拳を握りしめ、歯を噛みしめる。


「私が!!この私がどんなに努力しても!!どれだけプロテインをがぶ飲みしても!!全然得られなかっかった“見せ筋”を!!あいつは持ってるのよ!!」


闘技場中央に立つ次の対戦相手は、筋骨隆々。

鎧が筋肉に負けて軋み、盛り上がる大胸筋と、浮き上がる腹直筋が屹立していた。


いわゆる――マッチョだった。

マッチョが一回戦の相手だった。


「理由、そこなんですか!?!?」


「絶対に許せない!!絶対に潰す!!!!

そして――あとで接触して、トレーニング内容を全部聞き出してやる!!!!」


首を掻き切って、殺害を示すジェスチャーをするクラリッサに、マリアは遠い目をした。


「あー、はい。」





闘技場、砂地から顔を覗かせる白石の円盤に刻まれた魔術陣が淡く輝く。


その中央にローブを纏った男。


彼の喉元には、鎖で吊るされた小さな水晶があり、声帯の振動を魔力に変換し、闘技場全体へと共鳴させる《共鳴拡声術式》が組み込まれている。


声は、石壁、観客席、結界柱に反射しながら、闘技場全域へと行き渡った。


「――次の試合を開始します!!!

獅子の方角。謎のメイド。グランディール伯爵家所属――名は、マリア。身分はメイド。

予選を全勝で突破。負傷なし。医務室の世話もなし。剣術流派不明。戦い方も不明。以上。評価不能!!!!」


観客がざわついた。


事実だけが淡々と読み上げられるような内容が、かえって、異様さを際立たせていた。


次いで。


「鷲の方角!王都武術会常連。三年連続本戦出場!鍛錬に鍛錬を重ねた肉体!!

背中の大剣の破壊力を主軸とする重戦士!!!――バルド・ガルディオス!!」


地鳴りのような足音。

闘技場が、揺れた。






闘技場の中央で、体格差が誰の目にも明らかな2人は並んでいた。


マリアは、メイド服で華奢で小柄で箒を持っている。

戦士は、マッチョで大柄で大剣を持っている。


二人は、闘技場の中央で向かい合っていた。


軽と重。

小と大。

日常と戦場。


観客席の多くが思った。


――勝負にならない。



砂地に落ちる二つの影は、同じ距離で、同じ高さにある。


だがとはいえ、結果はルールに基づいて導き出されるであろう。


武術会は、体格ではなく、武を競う場なのだから。




「おいおい。こんな小娘が本線に上がってきたのかよ。」


「申し訳ありません。お嬢様に潰せと言われたので、手加減はしませんね。」


「ぶははは!!!聞いたか!?メイドが潰すだとよ!!安心しな。すぐ終わらせてやる。」


大剣を地面に叩きつけ、砂が舞う。





かくして、角笛とともに試合は開始された。






開始と同時に衝撃音。


バルドの体は、闘技場の、場外スレスレの位置にいた。



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