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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
デビュタント

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15/29

15話 5年後2

柵の中にそいつはいた。

柵は、太い丸太を何本も縦に立て、互いに鉄製のリングで補強され、簡単には破れない頑丈さを誇る。


木々は折れ、枝が散乱し、地面には破壊の後が見て取れた。

騎士団が大勢で当たっているが、報告の通り、手こずっているようだった。



剣が木の柵を叩く音が響き、木片が舞い上がる。


衝撃が地面に勢いよく突き刺さり、騎士団の足元に砂利が弾けた。


斧や槍がぶつかり合う金属音も響いていた。



オーガだ。


「うちの奴らをここまで手こずらせるとは……中々ね。」

「ええ。かなりの大物です。森の深層に潜んでいた奴かと。」


「──へえ。面白そう。」


クラリッサは腕と足のパワーアンクレットを外した。


ドゴオ!!


地面がゆらぐような音が響き、衝撃は地面を伝い、砂利や小石を跳ね上げた。


クラリッサは一歩前に出ると、ゆっくりと肩を回した。

筋繊維が伸び、関節が正しい位置へと収まる。


ゴキッ、ゴキゴキッ。


骨を鳴らす。


「さあ、始めましょうか。」


肩を鳴らしながら、囲いに入る。


木と杭で作られた、コンビクトデスマッチ。




クラリッサの恰好は、鍛え上げた筋力に、防具が耐えられなかったので、防具は必然的に最小限のものとなっていた。


上半身は自由に動かせるよう革製の簡素なアーマー。

胸元は戦闘に支障が出ない程度に切り込まれ、軽量化している。


下半身は軽やかな布や皮でまとめられたズボン。


装飾は最小限。伯爵家の紋章がさりげなく刻まれた革のバックルや、戦闘時に邪魔にならない小型の装飾だけ。


「私は……クラリッサ!」

声は低く、しかし森に響き渡った。


「グランディール伯爵令嬢にして……筋肉の高みを目指すもの!」


オーガは気づいた。


姿は10才いくばくかの少女。だがその威圧感は森を揺るがす。


「距離を……取れ!」

指揮官の声が、緊張で震えていた。

騎士たちは後退する。だがオーガはそれを追わない。クラリッサの威圧感に縫い留められていた。


オーガの巨躯が前に踏み込み、両手で握る大剣が高々と振り上げられた。


「■■■■!!!!」


オーガの森を震わす重低音の咆哮とともに、刃が振り下ろされた。

振動が地面に伝わり、砂利が飛び散り、枝葉が一斉に揺れる。


――皮一枚。


刃はわずか数センチの差でクラリッサの肩の横をかすめる。


クラリッサは静かに拳を構え終えていた。


「マッスルストライク──なんてことはない。ただの右ストレートだけど!!!!」


バァァンッ!!


オーガの腹筋の腹筋と内臓が強烈な衝撃で破壊される。



オーガは地面を踏みしめる力を失い、崩れ降ちた。

巨体が地面に叩きつけられ、砂利と土が跳ね上がり、振動が森の枝葉を揺らす。


騎士団は一瞬、息を飲む。


クラリッサは微動だにせず、筋肉を軽くバンプさせる。


「そんな程度の腹筋じゃ、ないと同じ。プランクでもして鍛えてきなさい。」


クラリッサは少女の姿からは想像もできない、圧倒的な破壊力を全身で示していた。


その場に立つだけで、戦場の空気を支配する――それが、鍛え抜かれた戦士、クラリッサだった。



爆発のような歓声。

脇で見ていたマリア思った。


──いや、お嬢様!!あなたは伯爵令嬢なんですけど!!ツッコミたい。非常にツッコミたい!!




朝起きると、クラリッサは迅速に活動を開始する。


身軽なトレーニングウェアに着替え、軽くお腹を満たして筋トレに取り掛かる。


「おらあ!!!!ふん!!!いいねえ!!!」


血管が浮き上がり、鍛え抜かれた筋繊維が光を受けて煌めていた。


フリーラックとダンベルの完成度はかなり高まっていた。

各種マシンはあるが、これはまだ、実用にはいたらない。今後完成度を高めていく必要があるだろう。



優雅に朝食を済ませる。


食事を終えると、クラリッサは書斎に移動する。

机の上には魔術書、領地の資料、戦術書などが整然と並ぶ。

銀縁のペンを手に取り、日誌を書きつつ、書籍を読みといたり、講義を受けたり、魔術の理論を整理する。


「よし!次は剣術ね!!」


午後は、剣術教室の名を借りた筋トレをする。


そしてご飯食って、筋トレして夜食食って寝る。





ある日の事

クラリッサは、鏡の前でポージングをしていた。


オーガを上回ると筋力を持っていると思えない、華奢とも言える体格をしていた。


「もっと負荷を……!!もっと効率的に……!!」


明らかにおかしかった。

筋肉肥大しない。

筋力はオーガよりあるのに。


「マッチョになりたい……なりたいのよ!」


もしかしたら、この世界には、魔力があり、レベルもある。


筋力は、肥大ではなく、別の進化をしているのかもしれない。


首を捻っていると、父エドワードが入ってくる。


「あら、お父様。何か用事ですか?」

「お前もそろそろ12歳の誕生日を迎える。」

「そんなになりますの。」


「舞踏会への参加が決まった。準場しておくように。」


そして父は去った

 





「ぶ、舞踏会……」


「とうとう来ましたね。お嬢様!、晴れ舞台です!」


話を聞いていたマリアは無邪気に喜んでいた。


「……わ、忘れてた」



ここ、乙女ゲームだった。


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