表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
エルフ領

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/130

118話 許可証

森が剥がれ、視界が開けた。


景色が反転し、同じだったはずの木々が、まるで幕のように左右へと開き、歪んでいた空間が一気に正される。


一行は息を呑む。


そこにあったのは、エルフの森ではあったが、森ではない。


宙に浮かぶ大地。


根を張ったままの森。

削られていない地層。

滝が空へと流れ落ちる。


巨大な“島”が、そのまま空に浮かんでいた。





クラリッサは、頷いた。


──これが迷いの森か。よくできている。

──構造は単純。


(まずは来るもの全てを迷わせる、エルフの迷いの森の迷路。

生物は本来、完全な直進ができない。

視界が遮られる森では、無意識に円を描いて歩き、やがて同じ場所に戻る。


森に足を踏み入れた瞬間に、違和感はなかった。

むしろ多少整備されて歩きやすいまであった。

下草は短く刈られ、足を取られることもない。

木々の間隔は一定で、視界もほどよく開けている。)


何秒かに一度、視線が数度だけズレる。


──今ズレた。

──これは、マッスルコントロールに卓越していなければ、到底気づかないだろう。

※マッスルコントロールに卓越していても気づけない。


(その上、森の中ではそのズレを修正する手段がない。

太陽は見えづらく、

景色は似ており、

音は信用できない。


その数度のズレを積み重ねていくことで、意図的に“似た景色”が連続する。

そうして記憶による位置把握を、破綻させていくわけだ。)


生きた森そのものを、術式の構成要素とするエルフならではの、生体共鳴型魔術。


許可証がなければ、永遠と森を、彷徨う事になる。

許可証を用いて森を抜けると、今度は島ごと大地を浮かす超魔力による、浮遊大陸。


そしてその上の都市。

それが首都アルヴェイン。


これがエルフ領の構造だ。


浮遊大陸の麓には、巨大な岩塊が幾層にも連なる。

そのすべてが宙に浮く。


滝が浮遊大陸の上から落ちており、夥しい水の量だが途切れることはない。

自然ではありえない流れが当たり前のように成立し、循環できる仕組みがあると考えられた。


ただ、問題があった。


──エルフと言えば、くっころよね。

──どうしよう。本場のくっころが見たい。


すごく見たい。


クラリッサは馬車の中、人知れず拳を握り、決意した。


今度、誰かに言わせてみよう。





島の大きさの空中庭園の麓には、街並み。

差し詰め城下町といったところか。


リーシャは馬車からそれを見る。


「これがエルフの森。

そしてエルフの首都、空中庭園アルヴェイン……」


「リーシャ。

今回は、あそこにはいかないよ。

あそこはハイエルフ達の住処だ。

ハイエルフ達は、真のエルフとして世界を睥睨する。

事実、魔王も手を出せなかった。

世界とは基本関わらない神の如き存在たちだ。」


リーシャも、多少はハイエルフについて知っていた。

学校で習ったからだ。


──かつて世界の半分が焼けた。

──同時に嵐の神が狂い、七日七晩、海が陸を呑み込もうとした。


空は煤に閉ざされ、酸のまじる嵐は止まず、

大地は荒み、生き物は死に絶えた。


彼らが少しだけ、世界を冷ました。


「いい人達なのかな……会ってみたいな。」


「違うよ、リーシャ。

……行ってはいけない場所なんだよ、あそこは。」


アルヴェルトは、小さく首を振る。




アルヴェインの麓。エルフの森。


街並みは大陸の上に生育する森の木々と、家々が一体化していた。


巨大な古木の幹をくり抜いた住居。

枝と枝を渡すように架けられた橋。

苔むした屋根。

煙突から立ち上る細い煙。


子供たちが、枝の上を跳ねるように軽く走っている。

非常に危ないが、落ちる気配はない。

近くの大人のエルフが、やんわりと声をかける。


「ほら、そっちは若い枝ですよ。」

「あ。ごめんなさい。」


一人のエルフが、祈るように木の幹に手を当て、目を閉じてじっと動かない。


やがて、その手の先で、幹の一部がゆっくりと形を変え、滑らかな棚のような形になる。


そこに、器が置かれ、水差しで水が注がれた。



どこか素朴で。

どこか懐かしくて。


──なのに、世界のどこにも存在しない光景。




案内役のエルフの指示に従い、一行は進んだ。


エルフの街の広場の向こう。

エルフの建築物しては、大きな建物があった。


魔術学会会場。


魔術大会は、各種族から代表者を出し合う。


人間族の代表の1人は、クラリッサだ。




馬車を止める。


「もう集まっているね。」


「へえ……世界っていうわりには、そんなに人数は多くないんですね。100人くらいかな……」


「世界は、まだ魔王が死んだ傷は癒えていないからね。

それにしても思い切ったものだ。

魔族がいる……」


「魔族……」


人間の形に、角と翼が自然についている者がいる。

(多分、あれだ。はじめてみた。)


リーシャが見ていると、アルヴェルトが言う。


「クラリッサは、魔王を殺した。

そして魔王領と世界連合における対話の公約を結んだんだ。」


「……初耳なのですが。」


「知っておくといい。

筋肉は、魔王を殺しうる。

もちろん、それだけではない。


聖女セレスティア。

各国連合の軍事力。

世界中からの補給。

多くの支援があった。

だけど、それら全てをもってしてもできない事を、ただ筋肉一つで成し遂げた。

それがクラリッサだ。」


「……頭おかしいですよね……

なんで学校なんかに通っているんでしょうか……」


「さあね。

狙いがあるんだろう。

セレスティアの指示だとも聞く。」



エルフ

ドワーフ

獣人

人間


そして魔族。


見慣れない意匠の馬車が集まる。

異なる文化。

異なる魔術体系。

それらが集まる事を意味している。


世界は移り行く。


『確かにそうなの。

クラリッサ・グランディールを、なんとか殺す術を考えないといけないの……

一刻もはやく!!』


──いや、殺しちゃだめだからね!?!?

ずっ友だから!!



ドワーフ。


低く、重い車輪の馬車。

その馬車は鉄で補強された構造。

降りてきたドワーフは、地面を一度踏み鳴らす。

ゴン、と鈍い音。

「……ここ、柔らかすぎるな。」



獣人の一団は、さらに分かりやすく視線が、常に動いている。

血の匂いを確認していた。



人間たちは、その中で最も普通だ。


アルヴェルトを見ればわかる。


整えられた衣装。

紋章入りの外套。

形式的な挨拶。


クラリッサは、見知った顔を見つけて声をあげた。


「あ。羽虫だ。

おーい。」


「え……え……?」


「殺す。クラリッサ・グランディール!!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ