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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
復興後。日常

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115/126

114話 賭け試合にて

闇の賭け試合の会場。


観客席はぎっしりと埋まり、フードを被った者、貴族風の男、明らかに裏社会の人間まで混ざっている。


中央の闘技場には、簡易結界。


逃げ場はない。


――その光景を見下ろしながら、マリアは観客席の一角で、リーシャに声援がてらに忠告を大声で送っていた。


リーシャは中央の闘技場でびくっと肩を震わせる。


「だから言ったじゃないですか!!

お嬢様の前でなんでもやりますって言葉は、あまりに危険だって!!」


「止めてよ!!!!わかってたなら止めて!?!?」


「止めました!」


「止まってないよね!?」


マリアの、その隣。


クラリッサは椅子に座り、足を組みながら賭け札を指で弾く。


──オッズは100倍。ま、余裕でしょ。


(リーシャの杖は、推奨レべル60オーバー、レヴィヤタンの素材を用いて、水属性を強化した特注品。

深淵王杖レヴィアン・ドミナス》。

リーシャ自身の才能。

それに水精霊の加護。

はっきりいって勝負にならない。)


司会がさらに煽る。


「可憐な少女に対するはぁぁ!!

本日の連勝王!!

殺戮のジョォォォ!!」


対面の扉が開く。

現れた者は、明らかに素人ではない。


全身に刻まれた無数の傷。

手にした短剣は、研ぎ潰され、鈍い光を放っていた。

男は、舌でその刃をなぞる。


「まさか、女が相手とはなあ。」


殺戮のジョー。




そしてそいつは水没した。





──近くの海沿いのカフェ。


「1万枚くらいは儲けたかなあ……

オッズ100倍。100枚×100倍よって1万枚《約3億円》ね。

荒稼ぎしすぎると目を付けられるし、こんなもんかしらね、臨時ボーナスは。」


「もう二度やらない……

死ぬかと思った。

ううん。なんならもう何回か死んでた。」


「お疲れ様リーシャ。

途中から掛けとして成立してなかったからね。」


クラリッサは肩をすくめる。


「歓声も上がらない。

水没したから誰も勝敗を理解できてない。


しかもオッズ100倍。

胴元は、最初から“ジョー勝ち”で回収するつもりだった。

客にジョーへ賭けさせて、まとめて回収。

よくある手口ね。


で、今回はそれが外れた。

しかも、よりにもよって“一番倍率の高いところ”。

つまり私に。」


「……うわ。

それ、最悪じゃない?」


「最悪よ。

胴元からすれば、最悪の展開。お通夜。涙目にもなるかもね。

はい。これお駄賃。

半分で。」


「受け取れないって。

クラリッサさんの為にやったことだから。」


「でも私、観客席から見てただけだから。

命をかけたのはリーシャ。

半分でいーでしょ。受け取らないなら実家に送り付けるだけだし。」


「……わかった。

というか、多いんだけど……」


リーシャは周りを見渡す。


白い石造りのテラス。

すぐ向こうには、穏やかな海が広がっている。

潮風に揺れるパラソルと、静かな波の音。


──今話題のトレザールのリゾート地に、こんなところあったんだ。


(そしてカジノもあるんだ……)


「ちなみにカジノは合法よ。一応。

今後の為のモデルケースってやつ。」

クラリッサは、ストローをくわえたまま、さらっと言う。


「モデルケース?」

リーシャが顔を上げる。


「そーゆーこと。

トレザール領って、今は沖合のこの島をリゾート地への開発の真っ最中。

人を呼び込むには、“理由”が必要なのよ

景色だけじゃ弱い。

聖女バブルはあるけど、信者以外には少し弱い。

だから遊びを用意する」


「……カジノ?」


「金を使わせる場所。

長く滞在させる理由。

それと、大金が動いても“自然に見える”場所。

経済的にはめちゃくちゃ優秀なの。


観光客の移動。宿泊、食事、移動全部に金が落ちる。

カジノ自体でも回収できる。

胴元がいる限り、基本は負けないからね。今回は負けたけど。

金と人が集まる場所には、“情報”も集まる」


「……」


「だからこそ、第二王子アルヴェルト殿下が後ろ盾についてる。

実験場としては、これ以上ないでしょ?

で、それを学校のレポートに書いたのよ、全部。

そしたら赤点よ。

おかしいと思わない?ねえ!?これ考えたの私なのよ!?」


「いや、国の秘密ばらしちゃだめだと思う。

それは私でもわかるよ。」


「でも設計したの私だもん。

産業構造開発の設計者として、この子を愛してるのは私だもん。

ぐっすん。

愛する子供の事を、レポートにしちゃだめなんてひどすぎると思う。」


「いくらお嬢様が設計しても、すでに規模はお嬢様だけのものじゃないですからね。」


「うう……クソ怒られるし……

だから権力っていやなのよ。

くそめんどくさい……はあ……」


リーシャは思った。


(いや、少し考えればわかると思う。

どうやって貴族社会で生きているんだろう。この人って……)

※パワープレイで。


「ちなみに、水精霊への信仰もちゃんと仕込んでるわよ。抜かりなくね。」


クラリッサはさらっと言う。


「仕込むって……言い方……」


「難しいことじゃないからね。

飲み物を頼むときの一言。

乾杯のときに海へ向ける。

お店の入口で手を水に浸す。

料理やドリンクの名前も、蒼流の一杯とか潮の祝福とかね。

夜のライトアップ儀式は、一斉に祈りポーズ。

お土産のは護符やアクセサリーは信仰の拡散。」


ストローをくるくる回す。


「しかも、やるとちょっと得するようにしてる。

割引とか、特典とか、」


「……それ、信仰なの?」


「まあね。観光客はそう思わないでしょ?

しかも自分から喜んでやる。

そのうち本当になる。

水精霊がいるおかげでお得だ。

水精霊の加護があるからこの島にこよう。」


クラリッサは、にやっと笑う。

リーシャは、思いのほか真剣な表情をしていた。


「私も祈っていいかな。」


「そうしてあげて。

乾杯もつけてね。」






食事も終えた頃、リーシャは、ふと違和感を覚えた。


さっきまで賑やかだった店内が、ほんの少しだけ静かになっている。


何人かの客が、店の入口を見ていた。

そこに、場違いな男たちが立っている。

男たちは、ゆっくりとこちらに歩いてくると、リーシャ達が座るテーブルの前で止まった。


「なあ、嬢ちゃん達。

ちょっと来てもらえるか」


「え……」


「いくわけないでしょ?」


クラリッサはため息をついた。


「女子会の最中よ?

ナンパはお呼びじゃないんだけど。」


「ああ!?」


次の瞬間、男の剣が振り下ろされてテーブルが真っ二つに割れた。


クラリッサはそれを平然と見届けた。


「乱暴ね。

はあ……

わかった。

ちょっとタイムを要求するから。それくらいはいいでしょ。」


クラリッサは、男を見上げる。

その視線に、ほんの一瞬だけ男が言葉を詰まらせる。


「く、クラリッサさん……どうしよう。絡まれたんだけど!!」


「食後の運動の時間ね。殺していい!?」


「ダメだから。」


「だって女子会邪魔をされたし。

ねえリーシャ。こういう言葉があるの。

女子会を邪魔するふてえ奴は、犬に蹴られて死んでしまえ。」


「……」


何それ。


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