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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
乙女ゲーム開始前

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11話 ある日の風景

その日の食事は普段と違った。


肉厚のステーキが、皿の中央で静かに湯気を立てていた。


脂が表面で細かく揺れ、ナイフを入れる前から、その柔らかさと密度を主張してきていた。


思わず息をのむほどの“異質さ”。


噛んだ瞬間、肉の繊維がほどけ、

じわり、と――久しく忘れていた“動物の力”が舌の奥に広がる。


エドワードは困惑する。

いや、エドワードだけでなく、マルグリッタも、セドリックも困惑していた。


「王都なら、金貨が飛ぶぞ……」


「んー。ソースの仕上がりが少し甘いですね!」


完全に独り言。

完全に理解不能。


「ミディアムレアの最適温度の63°を超えるとタンパク質の変性が進んで硬くなるから、肉質を保つためには63°を超えないようにしたいけど、明確な温度計がないから、ギリギリは難しいし……温度計の開発か……できるかなー。いや、無理ね!」


「何か知っているのかい?クラリッサ。この素晴らしい肉料理について。」


「この肉ですか?Tボーンステーキですけど。」


「いや、そうではなく、それも気になるが。」


「領内の大型魔物ですよ。猪風情が栄誉ある伯爵領で顔をきかせていたので、森へ行くついでに討伐したので、ついでに」


「は……?森だと……!?それは虫を取りに行く話ではなかったのか!?!?」


「ついでですよ。お父様。ついでです。

なんかきたので、倒しました。倒した後で高級食材であることがわかりましたので。折角なので家族でいただきましょうと。」


「ついで……?」


エドワードは口をつぐむ。


──いや、森の主の大猪といえば、何人も騎士や領民を殺している、悪名高い魔物。

討伐隊の派遣すら、もはや賭け事のようになるほどに。


エドワードとしても悩みの種だった。


家族が沈黙していることにも気づかず、ニコニコとしながら、クラリッサは、猪のステーキをほうばっていた。


「そんなことより父上。鶏肉を食べたいのです。鶏肉は100gで23gのたんぱく質を摂取できます。」


「う、うむ。そうか。」

「資料を用意しました!!」


「し、資料……」


バンッ、とテーブルの端にびっしりと数字の書いた紙束の資料が置かれる。


クラリッサは、輝くような笑顔で説明を続けた。


「鶏の生態については調べました。メス1羽が年間100個の卵を産むとして、卵の孵化率60% だとすると、ひよこ60羽は1年で60羽。

成長したひよこの50%が産卵可能なメスになり、孵化後の性比はおおよそオスメスが50%ずつ。」


さらに資料をめくる。


「つまり1羽から15匹の鶏が生まれます!

次の世代では、その15匹からさらに鶏が15匹。理論上は225匹です。相談に乗っていただきたいのは、まさにここです。

領内に鶏を普及させたいのです。親鳥配布の数字によっては、数年で領内全体にいきわたりますが、経験が足りません!!どうしても成功させたいんです!!」


まさに有無を言わせぬ勢いでクラリッサはまくしたてた。


「交配を重ねて新たな品種を作り出してもいいかもしれません。

おそらく、飼育条件を魔術などで調整することで、年間に卵を産む個体を増やせる可能性もあります。

資料を書庫で見つけたので、後でご案内します!!!!」


一切ブレない体幹と、強い瞳をしていた。


父、エドワードは心の奥で静かにそう思った。


──病はクラリッサを変えた。


元々マイペースだっだ

そのマイペースという基盤の上に、熱意と気合と根性と狂気が上乗せされていた。


クラリッサはすでに食堂から去っていた。


食堂の静けさが妙に煩い。


「あなた。どうするの?」


「凄まじい……」


思わず、エドワードは口ずさむ。

全く同じ事を思っていたマルグリットも強く頷く。


「エドワード。少し、心配が」

「それはなんだい?」


「あの子、社交界ではどうするのかしら。舞踏会とか……」


「うぐ……次は何をしですか……我が娘ながら、全く想像がつかん。」

「……」


エドワードは苦いものを噛み潰した感覚をあじわわざるを得なかった。

マルグリットは答えなかった。

マルグリットとしても、全く同じ気持ちだった。


「鍛冶屋の紹介をおねだりされたの。断れなかったけど、手配するわね?」


「ああ、頼むよ。とはいえ……」

「そうね。」


マルグリットはエドワードの言葉に合わせるように強く頷いた。


絶対に何かやらかす未来しか見えない。

戦慄していた。






その鍛冶屋は、広いホールに足を踏み入れるなり、胸の内で小さくつぶやいた。


(……すげぇ所に呼ばれちまったな。)

広間は光を反射する大理石の床、天井に届くほどの高窓、壁には代々の肖像画が並ぶ。


緊張が金槌より重く肩へのしかかる中、侍従が丁寧に頭を下げた。


「本日はお越しくださり感謝いたします。伯爵令嬢がお待ちです。こちらへ。」


(伯爵令嬢? お、おう……?)


小さな応接室の扉が静かに開き、そこに座っていたのは、髪を緩く結い、淡いドレスに身を包んだ少女。


クラリッサ・グランディール伯爵令嬢。




応接室に案内された鍛冶屋に向けて、クラリッサは言った。


「バーベルを作ります。資料を用意しました。プレゼンしますね。」


サンプルと、精緻に描かれた設計図、用途の解説、そしてメリットを詳細にまとめた資料が用意されていた。


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