お熱いコト
インターホンを鳴らし、軽やかな音がする。
家の人が来るのを待つ時間は人になにを与えるのでしょう。
高揚や緊張といった所かしら。
私が与えられたのは後者ね。
そんな圧を上谷君と件の依頼人と私の三人で受けている。
ドアが開く。
『おや遠子の友達?』
近江さんのお母様かしら。
『いえ、本日は遠子さんに謝罪したく参りました』
『......上がって』
『恐れ入ります』
恐る恐る入らせて頂く。
『遠子、お客さんよ』
呼ばれて来た近江さんが目を見合わせる。
『その腕章は......』
『生徒会の哀抔と上谷です、もう一人は依頼人です』
『わたしの部屋に来て』
お言葉に甘えましょう。
『その......ご用件は?』
深々と頭を下げましょう。
『申し訳ありませんでした』
呆けている依頼人にも促しつつ。
『あまりに配慮の欠けた発言をここに......』
『そんな、わたし別に怒ってなんていません、だから謝罪なんて......』
『それでもさせて下さい』
『まぁ急にセックスとか言われたのはイヤでしたけど、あと清楚の下りは一体?』
『私からもお願いするわ』
『その、勝手に近江さんが男遊びをしているのではと想像してしまって、なんて謝れば良いのか』
『別に大丈夫ですよ、あっでもわたしが男遊びなんてしていないというのは念入りに言っておきます』
『はい、胸に刻みます』
『その言葉で十分です』
『オレからも、電話をかけたのはオレだから......』
『それだけでしょ?気に病まないで』
バッグから菓子折りを取り出す。
『これは私のほんのわずかな気持ちです』
『そうですね、受け取らないのもそれはそれで見てられないですし、ありがたく頂戴します』
『それでは失礼しました』
『あっちょっと待って』
依頼人が呼び止められる。
『確かに驚きはしましたが、だからと言って遠慮しなくていいので、気軽に声をかけてくれたら......』
改めて深々と頭を下げる依頼人を連れて部屋をあとにする。
お母様にも謝罪し、近江さんの家をあとにする。
『フヨちゃんゴメン!』
『あらどうしたの?』
『いやほら、本来はオレ一人でやる依頼だったから、巻き込んじゃったなって......』
『気にしなくていいのよ、それに巻き込んだのは愛住君じゃない』
『僕からもごめん!生徒会の皆さんに心配をかけてしまって......』
『私が言ったことよ、気にしないで』
『でも良かったっスね依頼人さん!ちょっとは脈あるんじゃないスか!?』
『不謹慎よ上谷君』
『いやでも嬉しいんスよ!ちょっとは前に進めたって感じで!だって関係が悪くなったままはイヤっスから』
涙を浮かべる依頼人、私も感心しちゃった。
『貴方結構良い奴なのね、チャラいけど』
『チャラくても良い人いっぱいいますよ!?』
生徒会メンバーとの初共同依頼を終えた。
失敗は多かったけれど得る物は確かにあった、そう信じたい。
愛住君の家に帰宅する。
やっぱりまだここを自宅とは言えないわね、いつか慣れるのかしら。
ドアを開ければ愛住君が駆け寄って......
私に抱きついた。
『あの愛住君、これはなに?』
私の身体を力強く、放してやらないと言わんばかりに。
『キミにあの依頼をやらせたのは僕だ、だから......』
『あのビンタは私が頼んでのこと、だから気にしないで』
『それでも、キミの顔を傷つけたことに変わりはないから』
『へぇ?私のキレイな顔が叩かれたのがそんなショックだった?』
『綺麗かどうかは関係無いよ、キミの顔だからだよ』
『なっ......なんて恥ずかしいセリフなの!?』
思わず身体が痒くなるわ......
『哀抔さん約束して、これからは自分の身体を大切にすると』
意外と押しが強いわね......
『ええ、約束するわ、だからもういいでしょ』
『あっごめん!』
愛住君の身体から解放され、軽く余韻に浸る。
なんだか身体が熱いわ、きっと恥ずかしいセリフを聞かされたからよ、決してハグされたからじゃないわ。
『なにイチャイチャしてるのですか?』
『メイドさん!?いつから見てたの!?』
『恋様が哀抔様を抱き締めた所からです』
最初から見られていただなんて恥ずかしいことこのうえないわ。
『にしても成長されましたね、恋様が女性を抱き締めあんな言葉を、感動しました』
『それはいいから!救急箱持ってきて!』
『頬はもう大丈夫よ』
改めて心配されているのを思いしらされた。
私の心を洗うかのようにシャワーから水が降り注ぐ。
自分を大切になんて......
今の私には自分を犠牲にしてでもやらなければならないことがある、愛住君には悪いけど......
『哀抔さーん』
『なにかよう?』
『ケガとかしてないか心配で』
『過保護にも限度があるわ、私は大丈夫よ』
『ごめんシャワー中に』
『一緒に浴びる?』
『なっ......!?』
『冗談よ』
『とっとにかく着替え置いてくから!』
いきなり私を抱き締めた割りにはカワイイトコあるじゃない。
前は避けたけど、流石に慣れなきゃね。
就寝時間、自室のベッドに入るが、突如ドアの開く音が聞こえる。
起き上がるとそこには愛住君が立っていた。
『なにか用?』
『一緒に寝てもいいかな』
『どういう意味?』
『ただ寝るだけさ、どんな意味合いだと思ったの?』
前にもやったわねこれ。
『......どうぞ』
私がいるベッドに人が入ってくる時の感覚はむず痒い、私が入った時も同じだったのかしら。
『理由を聞かせて頂戴、私と寝たい理由を』
『キミの側に居たくて』
私の体温が急上昇するのを感じる。
『性懲りもなく貴方は......』
『キミの側に居ないと、また叩かれるんじゃないかって、気が気じゃないんだ』
ふぅん、ホントに心配してくれてるんだ......
愛住君の胸に顔をうずめ、呟く。
『アリガト、私を想ってくれて、お休み』
体温が高くなったのは私だけじゃないみたい。
『あっそうだ明日は生徒会みんなで全校集会に出てもらうから』
目が覚めること言わないで頂戴。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




