銃と告白とお弁当
愛住君の家に来てまだ少ししか経っていないけれど、驚かされてばかりね。
まぁメイドさんがいるのも驚き所だけど。
私は今、そのメイドさんに拳銃を渡されている。
『私に拳銃を所持させて貴女になんの得があるというの?』
『これがバレたらクビになるでしょう、でもその危険を犯すだけの価値がある、そう考えました』
『随分と私を買い被っているようね』
『恋様は財閥の息子、いつ狙われるかわかりません、哀抔様には護衛の手段を有して頂きたいのです』
『拳銃は受けとるけれど護衛なんてする気無いわよ、逆に私が愛住君を傷つけるかもね』
『それは大丈夫ですよ、貴女様はそんなことが出来る人じゃない』
『出会ってまだ二日でなにがわかると言うの?』
『貴女様が本当は心優しいお人なのだと』
穏やかな語り口で拳銃と、ついでのようにナイフを手渡し、自分の部屋を去っていく。
心優しい、ね。
『忘れていました、これもお持ち下さい』
『てっきり今日もカップ麺かと思っていたけれど、ちゃんとした朝食だったわね』
『アレは特別な時に食べるって言ったでしょ?』
『私にとっては特別でもなんでもないのだけれど』
登校中の朝、今日もリムジンに乗ってきた後に少し歩いて行く。
相変わらず愛住君は黄色い歓声を浴びているけれど、昨日より男の子が増えてる......?
『貴方男の子にも人気あるの?』
『キミ目当てじゃないのかな、転校生だから』
転校生ってわざわざ見に来る程面白い物かしら?
私のウワサを耳に入れつつ、歩き続ける。
前に通っていた高校と違い、私に好意的な話ばかりだった。
学風の違いか、あるいは転校生効果か、いずれにしても意味の無いことだわ、私は誰のモノにもなる気は無いから。
下駄箱を開くと一通の手紙が入っていた。
私に惚れた旨とその理由、私を賛美する内容、果てに時間と場所を指定し、言いたいことがあると記されていた。
いわゆるラブレターね。
『どうしたの?哀抔さん』
しまった、愛住君にラブレターを見られた。
『ラブレターか、どうするの?』
『振るに決まっているわ、恋愛なんてする気無いんだから』
私に近づいても傷をつけるだけだから。
ラブレターに記されていた場所に足を踏み入れる。
整理された校舎裏に一人、男の子が待っている。
イタズラの線も考えたけれど、そうではなかったようね。
『あっ哀抔さん、すいません急に来てもらって』
どこかオドオドとしていて、可愛らしいけれど、まぁ無理な物は無理だから。
『ぼっボクとつきあっ......』
『ゴメンなさい、付き合えないわ』
『何故です......?』
納得してもらう為に、ここはしっかりキメなければ......
『別に貴方に問題があるワケじゃないわ、ただ......』
首を傾げる男の子に近づき......
『恋愛というモノに愛想が尽きてしまったの、だからゴメンね』
手を握ってその場を後にする。
これであの男の子も諦めてくれるはず、それにこのやり取りを見ている人も私に近づこうとは思わないでしょう、ええカンペキだわ。
そう思っていたのだけれど......
お昼休み、私の回りに人だかりが出来ている。
これは一体どういうことなのかしら......
男の子も女の子もしきりに私を誘っている、どうやら私と食事がしたいってワケね。
でもおあいにくさま、私は一人で食べたいの。
断りを入れようとしたけれど、回りがケンカを初め、それどころでは無くなってしまう。
どうしましょう、このまま放っておくのも後味悪いし......
『『哀抔さん、誰と食べるの!?』』
私に選択を突きつけられる。
しかしその権利は一人の男に捨て去られる......
『哀抔さん、ちょっとコッチ来て』
愛住君に手を引っ張られ、強引にも屋上に連れられる。
『なんの用かしら』
可愛らしいお弁当箱を差し出される。
『キミのご飯だよ』
『菓子パンで十分なのだけど』
『キミには栄養を取って欲しいんだ』
何故なのか疑問には思ったけれど、ロクでもない答えが返ってきそうだから触れないでおいたわ。
お弁当箱を開けると、これまた可愛らしい光景が広がっていた。
たまご焼きにふりかけご飯、タコさんウィンナーにプチトマトなど、もはやあざとい程の具材が敷き詰められていた。
正直、金持ちなんだからもっと高いの入れなさいよ、とか思ってしまったけれど、この温かさには沁みるモノがあった。
というか、結局愛住君と二人で食べちゃってるわね。
『このお弁当は誰が?』
『メイドさんだよ』
考えてみれば当然よね。
洗練されたタコさんウィンナーの中に一つだけ拙いモノが混ざっていた。
『ああそれ、僕がやらせてもらったんだ』
へぇ愛住君がねぇ。
愛住君のウィンナーを口に運ぶ。
『美味しいわ、形は少し歪だけどね』
愛住君てば顔が赤いわ、まるでタコさんね。
穏やかな時間が流れる、こんな時間はなんだか久しぶりな気がするわ。
懐かしい気持ちにもなる、でもいつまでも酔いしれてはいられないから......
放課後に生徒会に呼び出され、愛住君が真に迫る声色を発する。
『哀抔さん、早速だけど今日から恋愛相談の依頼を受けてもらいます』
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




