本格的に新生活
ここ最近の私を取り巻く環境はある種、目まぐるしい所があったわ、でも今度はなに?私と愛住君が一緒に住む?冗談もいい加減にしなさい。
『なんで私と貴方が一緒に暮らさなきゃいけないワケ?納得のいく説明を頂戴』
『キミは放っておくとなにをするかわからないからな、だから目の届き安い所に居てもらう』
『勝手にも程があるわ、私は貴方の所有物ではないのよ』
『僕の条件が飲めないのなら、キミの秘密を公表するまでだ』
あまりにも真っ直ぐな眼差し、その瞳は断ったら本当に公表しそうだと思わせるような物だった、だけど引っ掛かることがある。
『私の親には説明したの?』
『快く受け入れてくれたよ』
表だっては言えないような手を使っていないか、気にはなるけどそれを探っていたらどうなるか......
『わかったわ、貴方のモノになってアゲル、さぁ行きましょう』
愛住君の自宅の連れられ、改めて感嘆とさせられる。
『ここを見るのは今朝ぶりだけれど、慣れる気はしないわね』
荘厳にして美麗、それが愛住君の自宅に対する感想である。
『まぁでも悪い気はしないわ、ここに住めるのは』
愛住君もまんざらではないようね、少し機嫌が良くなってる。
それがなんだか面白くて思わず笑っちゃったわ、でもそれがウカツだったわ、愛住君にイジラレるんですもの。
『キミにもそうやって笑うことが出来るんだ、良い物見れたよ』
『それはいいから、早く私の部屋に案内しなさいッ』
私が使う部屋のドア既に私の名前が刻まれたネームプレートが掛けられていた。
『用意周到なのは良いことだけれど、これに関しては気持ち悪いわね、いろんな意味で』
『うん、存分に見習ってね』
『それは私が荷物を持ってきていないことへの当て付け?』
満面の笑みでの皮肉にはカチンとくるモノがあったのよ。
『仕方ないじゃない、唐突な話だったんだから』
『別に深い意味は無いよ、さぁ入って入って』
『急かさなくても入るわよ』
ドアを開けた先にはピンク色の家具で敷き詰められていた。
『正直私の趣味じゃないんだけれど』
『そう?気に入ってくれると思ったんだけど』
『私そんな風に見られていたのね、軽くショックだわ』
『それじゃしばらくこの部屋で待っていてね』
『何故待たされるの?』
『とっておきの料理を振る舞うよ』
愛住君が部屋を後にし、一人取り残される。
落ち着ける時間が久しぶりにやってきた気がする。
ベッドや机に椅子までもがピンク色、なぁにこのわざとらしい部屋は、ウサギのぬいぐるみまで置いちゃって。
私はもう少し暗い色の方が好みなんだけれど、それにこの色調は昔の私を思い出して悲しくなるから出来るだけ見たくないのよ。
初恋の味に酔いしれていた私とその相手......
昔の記憶が甦る。
初恋の人が私に笑い掛けてくれたり、私の誕生日にプレゼントにアクセサリーをくれたり、私が落ち込んでる時には慰めてくれたり、私に彼女がデキたとノロケてきたり......
今はもういないあの人を思い出し、感極まってぬいぐるみを抱き締める、涙を流しながら。
『なんで一人でいってしまったの......』
『お待たせ!準備出来たよ!』
勢い良く入ってきた愛住君に驚き、ぬいぐるみを放り投げる。
『そのぬいぐるみ、気に入ってくれた?』
『バカ言わないで、私が気に入るワケないじゃない』
またニヤニヤしちゃって、全く忌々しいわ。
『あれ哀抔さん、目が赤いけど大丈夫?』
『別に平気よ』
『そう?それじゃついてきて』
シックな椅子に座らされ、愛住君と向かい合う。
『一体なにが始まるのかしら』
『きっと腰を抜かすよ』
なんか絶妙にヤな言い方するわね、なんて考えていると、メイドさんが料理を運んでくる。
『さぁ召し上がれ!これぞご馳走!カップ麺!』
どうやら歓迎されていないみたいね。
『アレ、食べないの?』
『私をバカにするのも大概にしなさい』
『バカになんてしてないよ、特別な物さ』
全く呆れるほかないわ、金持ちがカップ麺を物珍しく見ているというのは本当なのね。
『特別ってのはタンドリーチキンとかホールケーキとかそういうのでしょう』
『その発想カワイイ』
言うに事欠いてそれ?
『というかこれだけは言ったおきたいんだけど、カップ麺は料理じゃないわよ』
『そうなの!?』
かつてない驚き顔を見せているわ。
『貴方こそ可愛らしいわね』
荘厳にして美麗な家の屋根の下で、男の子と二人でカップ麺を啜るなんて、全くなにやってんのかしら私は、でも良いわ、貴方の笑顔に免じて許してアゲル。
お風呂を済ませて後は寝るだけ。
だけど見ておきたい物がある。
『愛住君、貴方の部屋を見せて頂戴』
急なことで少し戸惑いながらも案内してくれたわ。
『どうしたの?哀抔さん、急に僕の部屋を見たいなんて』
明るい青を基調とした落ち着いた部屋、これなら......
『愛住君、単刀直入に言うわ、私と一緒に寝てくれない?』
『なに言ってんだよ!哀抔さん!』
顔を真っ赤にして大きな声を出しているわ。
『こんな夜に騒がしいわね』
『そんな簡単に身体を許しちゃ......』
『寝るってそういう意味じゃないわよ、この盛り猿が』
キョトンとする愛住君に事情を説明する。
『ただ私と眠って欲しいと言っているの』
『それはまたなんで......?』
『私の部屋は昔を思い出させるから......』
『そっか、それじゃおいで』
愛住君に手を引っ張られ、一緒にベッドに入る。
『どう?寝心地は』
『悪くないわ』
微笑んだ愛住君におやすみを言って眠りにつく。
『起きてくださーい』
眠い目をこすっていると、メイドさんがいるのに気がつく。
起きた愛住君が着替えをするので私も自分の部屋に戻るが......
『哀抔様、少し話が......』
それに応じ、自分の部屋に入ってもらう。
『なにかしら?話って』
『これを渡しておきたいのです』
メイドさんの手には拳銃が握られていた。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




