共同なんてしてアゲない
『愛住怜です、生徒会の皆さんのご活躍を拝見したく、見学に参りました』
生徒会長の妹の健気な挨拶に、生徒会のメンバーは歓迎の拍手している、私を除いて。
『では哀抔さんの仕事を見てもらおうかな』
『ちょっと聞いていないのだけれど』
私にだけ聞こえるように耳元にそっとだけ呟かれる。
『これを機にもっと仲を深めてね』
は?もっとっつったかオイ愛住!どこへ行く!戻ってこい!
そうして生徒会室には私と愛住怜だけが取り残されたのだった。
生徒会長の机に悶えんばかりの蹴りをお見舞いしてやった、無論悶えるのは私である。
いずれかあのアホには鉛弾をブチこんでやる必要があるようね。
『兄さんの使用する物に危害を加えるとはお行儀がなっていませんね、それでも副会長ですか』
『アンタにだけは言われたかないわよ』
『なにを怒っているのですあなたは』
『本気で言ってるのそれ』
『わたくしはいつも本気ですが』
タメ息ついでにたしなめ一つ。
『あのね、アンタ私になにしたかわかってんの?ナイフで切りかかったのよ?そんなのとご一緒しろとか言われても出来るワケないじゃないのよ』
意趣返しがてらにタメ息をつかれる、うわぁウザイ。
『この際ですのでハッキリ言いましょう、ガッカリです』
やっぱり......
『あなたは復讐者なのでしょう?それがなんですか、思わぬタイミングで襲われた程度で癇癪を起こすだなどと、貴様程度に合格の烙印を押したわたくしの審美眼が腐り果てたことを認めなくてはなりませんね』
『やっぱりアンタとは相容れない!』
華奢な身体を押し倒し組み伏せる、温和かつ手入れよく施された生徒会室の床に。
『辱しめでも受けるのでしょうか』
『......まさか』
麗しのご令嬢の首からこの世に存在するのに必要な機能を絶させにかかる。
知人の妹を死に至らしめる行為、その親族の顔は嫌でも思い浮かぶ。
だがコイツだけは!
両手に力を籠める。
それでも愛住怜は崩さない。
気高く冷徹な仮面。
先日の殺し合いでは相打ち。
それもお情けでそうさせてもらったに等しい。
今の私が、真の意味でコイツに勝てるのか。
恐れてなんていられない。
勝てるかどうかわからない者を相手取らなくてはならないんだ。
アイツの妹なんかに負ける私じゃない!
『あのー!恋愛相談に来たんですけどー!』
突如発せられたその一言に、私は反射的に身体を起こし、席につくように促して話を聞く体制をとる。
プログラミングでもされているかのように、事務的に。
そして決めゼリフでは放つが如く。
『ではあなたの話をお聞かせください』
『ハーレム作りたいです!』
帰れ。
『帰れ』
しまった、思ったことがそのまま口に出ちゃった。
『良いではないですか、お引き受けしてあげてみてくださいよ』
いつの間にやら私の隣には愛住怜が鎮座していた。
『あんなのまで相手にしてたら際限なくなるでしょうが』
『あのような性欲に支配された殿方がどのような思想をお持ちなのか、わたくし気になります』
イヤな予感しかしないのだけれど、まぁ事件にまで発展したらコイツに責任取らせれば良いでしょう。
『先ほどは失礼しました、改めてお聞かせ願います』
『いやーオレってばいろんな女の子に言い寄られちゃってさー、ホント困っちって、だったらハーレムでも築いてやろうかなって思った次第なんだが!?』
別に失礼でもなかったかしら。
『ここは惚気話をする場所ではないのだけれど』
『いやノロケじゃないんだが!マジメな相談なんだが!』
ホントでしょうね......
『惚気でも良いので続けてください』
『ちょっと勝手に話進めないで頂戴!』
『そこで相談したいんだが、みんながハーレムに納得してくれるかどうか不安で、だがらそれとなくどう思っているのか聞いてきて欲しいんだが』
急に真面目になった......
『あなたに言い寄っているという女の子達の名前を教えて頂戴』
『受けてくれるんだが!?』
『最初はツマミだそうと思ったけれどね』
『ありがとうございます!』
『私が戻るまで生徒会室を出ないで頂戴、良いこと?』
『ハイ!』
『良ろしい』
席を外してさっそく依頼活動開始、なのだけれどまたしても愛住怜が立ちはだかる。
『わたくしも同行します』
『なにか企んでじゃないでしょうね』
『見学に来たのですから、あなたについて回らないと意味ありませんから』
『"見"学であることを強調するわ、余計なことしたらブッ飛ばすから』
『それは上等なことです』
『言ってなさい』
生徒会副会長としての業務を、殺し合いをした者に見られるのは妙な気分だ。
殺し合っておいて平然としてやがって、とも思うけれど。
なんでしょうね。
敵である者に私のパーソナルな部分を目撃されて恥ずかしくなっているのかもしれない。
『一つ質問させて頂戴、愛住怜』
『フルネームですか......』
『見学を提案したのは誰?愛住君?それともあなた?』
『愛住が二人いるのですからどちらにもしたの名前でお呼びしてもらいたいのですが、紛らわしいので』
『あのね、愛住君が女子人気あることぐらい知ってるでしょう?それを相手にしたの名前で呼んだら余計な騒ぎを起こすだけじゃないの、それに私だってモテるんだからより一層ね、あと私の質問に答えなさいよ』
『兄さんをしたの名前で呼んで頂けたら考えます』
『そう出るなら決裂ってことになるのよね、あなたの交渉』
悪意を込めた言葉を交わしながら依頼人の友人を探す。
この女と一緒になって歩いているのも変な感じと笑いたくもなる。
似合いもしない二人で校舎を彷徨う中、耳に障る音を聞く。
物が割れる音。
壊れ行く物が最期に上げる断末魔に反応し、愛住怜はすぐさま走って行った。
事件の匂いがするのならば、じっとしてはいられないのは私も同じだ。
音がした方向へ向かい、広がっていた景色は地獄と呼ぶにふさわしいスポットだった。
狂乱響く教室の中が散乱とし、女子生徒二人が物を投げながら言い争っていた。
『アンタなんかが彼とうまく行くわけないじゃないのよ!さっさと手を引きなさいよ!』
『そっちこそ消え失せなさいよ!』
発砲すれば治まるかしら。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




