表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/46

喰ってやろうかな

 雲一つ無い爽やかな青空。


照らし出される太陽が私達の領域(テリトリー)を暖かな温度にバランスの舵を切る。


こんな日の登校の時間は、さぞ気分の良い出だしになることでしょう。


だが私の場合は違っていた。


多少なりとも時間が立ち、いつもの道という認識になってきた通学路を、昨日殺し合いをした愛住怜(あいずみれい)と共に歩いている。


本日転校する彼女は同じ高校に通う者達にとって注目すべき話題の種である。


『なぁ哀抔(あいなど)さんの横の子誰?』


『綺麗だなー、ちょっと私物とかくれないかなー』


他愛の無い噂で持ちきりなのは私の時と一緒ね。


しかしそれを気にするでもなく涼しい顔をしている。


『慣れっことでも言いたげな顔ね』


『その通りです、読心術を心得ているのですね』


イケ好かない子ね。


『キャー!見てあの二人、対照的でステキ!カップルかな?』


耳を疑う発言が飛び出して来たけれど、これ私達のことじゃないわよね?


爽やか朝に爽やかでないことが、すねに軽い痛みが生じる、すねゲリを仕掛けたのは当然......


『ちょっとなにすんのよ』


『少し離れて歩いてください』


その澄まし顔崩してやるわ。


『あらどうして?理由を言いなさい』


制服の裾を掴まれ、身を引き寄せられる。


『言っておきますけどわたくしの方が上ですから』


思わず私も相手の裾を掴んでいた。


『あらあら張り合っちゃって可愛いじゃないの』


『まだやられ足りないのですか?お望みならいつでも再戦を受け付けていますけど』


『アンタこそイタぶって欲しいならそう言いなさいよ』


お互いの牽制は周囲を焚き付けるばかり。


『おいなんか掴み合いのケンカしてるぞ』


『画になるわねー、あの二人』


『ヤられ足りないだの、イタぶるだのもしや痴情のもつれ!?』


私達のじゃれあいは周囲を騒がせるのには十分な火力を持っていたようだ。


『おーい!哀抔(あいなど)さん、(れい)!』


愛住(あいずみ)君の声が耳に入り、とっさに裾から手を離し平静を取り繕う。


『もう二人きりで登校なんて、仲良くなるの早いね』


『あら面白い冗談ね』


『いくら兄さんでも言って良いことと悪いことがありますのよ』


『息ピッタリだね、そうだ執事さんから聞いたよ、ケガは平気?』


『わたくしは大丈夫です、転んだだけですし』


『私もどうってことないわ』


ナイフとか拳銃持ち出して殺し合いしてました、なんて言えるワケもない。


『こうして兄さんと登校するのも久しぶりですわね』


『あの時は驚いたよ、いきなり留学するって言い出して』


『これからはずっと一緒ですよ兄さん』


兄妹の仲睦まじい会話に、知り合って日の浅い私の付け入る隙は無かった。


遠巻きに黄色い声援を上げている高校生と今の私は、兄妹との物理的距離は違っているのに、そことは別の距離では大差があるようには思えなかった。


それにこの兄妹の談笑を見せつけられてか、はたまた軽くないがしろにされているからか、私の精神(こころ)に冷たさと熱さを兼ね備えた重しが積み置かれる。


切ないって言えばいいのかな。


なんでこんな気持ちに......


哀抔(あいなど)さん?どうしたのボーッとして』


『いつ私が呆けたと言うの、というか私が呆けたことなんてあったかしら』


しまった、喋り過ぎた?


『うん、大丈夫そうだね』


特に心配されることもなく、そのまま校舎についてしまった。


寂しさなんて、私の精神(こころ)から消えた感情のはずなのに。


精神(こころ)が締めつけられて、苦しかった。




気だるい昼下がりの休憩時間。


転校してきた愛住怜(あいずみれい)の話題で持ちきりである。


こんな時は空き教室で一人飯にでも耽るのがちょうど良さそうね。


菓子パン持って席から立てば、立ちはだかるは愛住(あいずみ)君。


『どこ行くの哀抔(あいなど)さん?』


『これからお昼食べるんだから邪魔しないで頂戴』


『へー?手に持ってるのはなに?』


『菓子パンだけれどそれがなに?』


『栄養偏るからお弁当食べてっていつも言ってるよね?』


『確かに私は同じ屋根の下に住んでいるけれど、私の食事にまで口を出して欲しくは無いわ』 


愛住(あいずみ)君に腕を掴まれる、私を捕食でもするかのように。


私がお昼ご飯だなんて贅沢甚だしいわね。


普段よりも冷ややかな眼差しを見せた愛住(あいずみ)君の影が、インモラルな雰囲気を帯びただせる。


『僕らのお弁当が無いと生きてイケないカラダにしてアゲようか?』


獲物を刈り取る狩人を想わせる眼差しが、不必要に大きく見える影に縮こまった私に向けられる。


もはやその眼差しだけで取って喰べられてしまいそう。


私の中から乙女的情緒を引き出すほどに淫靡なモノを、教室内という人の眼の憚れる場でさらけだされる。


『そうなりたくないから断ってんでしょうが』


『怖いんだ?(とりこ)にされるのが』


このままじゃダメ、喰べられちゃう!


『普段の何者にもなびかないって雰囲気はどうしたの?今は随分可愛らしい佇まいだけど』


これ以上調子に乗らせるワケにはいかない!


『それよりあなたの妹はどうなのよ、うまくやってんでしょうね』


『そうだ言うの忘れてたよ』


『そういうの多くない?』


『今日は(れい)が生徒会の見学に来るから!』


よし、援交しよう。

この物語はフィクションです。

犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ