キューピッドになんかならない
生徒会室のトビラが開く。
内装自体は特段オカシな所は見受けられないわね。
『会長!その娘なんすか!』
いかにもチャラそうな男が物珍しそうに私を見ている。
恋愛促進を掲げているのなら、こういう男が所属していても不思議ではないけれど......
『ここまでだとは思わなかったわ愛住君、まさか私をヤリサーに入れるなんてね』
『ヤリサーってなに言ってんの!?』
『そうっスよ!ふざけてんスか!?』
あらあらピーピー騒いじゃって盛り猿共が。
『ふざけてんのはそっちでしょうに』
『不躾ですがヤリサーってなんですか!?』
小動物のような可愛らしい女の子が目を輝かせて私を見ている。
『知らなくていいから!』
随分過保護ね愛住君。
『SEXを主目的とした団体のことよ』
『ちょっと哀抔さん!』
私の手を引くなんて大胆なことだわ。
『言っておくけど、ヌクのにだってカネ取るわよ』
『なに言ってんだよ!というかやめてよ変なこと教えるの』
『あらどこがオカシイというの?』
『会長、そろそろその人の紹介をお願いしたい』
私達のじゃれあいを背広な男子学生が止める。
『ああそうだそうだ、本日より我が生徒会に新たにメンバーを迎えたい』
自己紹介を促され、おとなしく従う。
『哀抔符夜雨です』
『生徒会メンバーを紹介するよ、ほら続けて』
チャラ男君が軽くキョドっている、ダメ男オーラ満載ね。
『あっオレっスか!?上谷圭っス!会計っス!』
『俺は大神漆人、書記だ』
さっきの背広な子ね、そして残る一人はヤリサーも知らない幼気な少女。
『わたしの名前は絵園円花です!役職は庶務です!』
『そして僕、愛住恋が生徒会長さ』
誇らしげな言い方をよそに質問を一つ。
『私の役職はなにになるのかしら?』
『哀抔さん、君には副会長をやってもらう』
これが職権乱用ってヤツかしら......
『勝手に生徒会に入れられたと思ったら今度は副会長をやれですって?冗談でしょ?』
『僕は本気さ』
随分真っ直ぐな眼差しですこと。
『貴方以外の意見はどうなのよ?私みたいな新参者がいきなり副会長だなんてそれで納得しているの?』
『言ったでしょ?君のことは説明したって』
本当なんでしょうね?
『まぁオレはカワイければ多少のことは許せますから!』
『別に構わない』
『女子が入ってくれて嬉しいです!それに哀抔さん、副会長にピッタリですし!』
喜ぶ所じゃないわねコレ......
『それじゃ本日は......』
『待って頂戴』
愛住君の言葉を遮り、主張する。
『改めて確認するわ、貴方は恋愛促進活動をこの生徒会が行っていると言ったわね』
『そんな固い言い方じゃないけど、意味合いは同じかな』
『私言ったはずよ、恋愛もラブコメも嫌いだって』
『だからだよ』
思わず怯んでしまったわ、反論を許すだけのね。
『君になにがあったのかは僕の知る所じゃないけど、恋愛を嫌いなままでいるのは悲しいから、それに僕は君を買っているんだ』
『買ってるってもしや売春!?』
チャラ男君はダマってなさい。
『出会ってからまだ時間は経っていないというのに私のなにがわかると言うの』
『君は変に露悪的な態度をとっているけど、それは根っからの物じゃない、僕にはそう見えるんだ』
『知り合ってすぐに私を解ったつもりにならないで頂戴、それに恋愛なんて下らない物に現を抜かしていないでもっと有意義に時間を使いなさい』
『下らないなんてそんな悲しいこと言わないで!』
『そーっスよ!それならオレみたいなモンはどうなるんスか!』
『落ち着いて、上谷君、絵園さん』
愛住君が二人を静止し、私に言い放つ。
『僕は人生におけるもっとも有意義な時間は恋愛をしている時間だと思うんだ、人が恋をして、恋愛に勤しむ姿は素晴らしい、君にもそんな姿を見せて欲しいと......』
『全くバカバカしいことこの上はないわね、恋愛だなんて人間をもっとも暴力的で残忍にする感情じゃない、とても肯定する気にはならないわ』
合致しない私達の主張に呆れるかのように、スマホの着信が鳴り響く。
あらお客さんね、急がなきゃ。
『愛住君、悪いけど急用が出来てしまったわ、今日はこの辺りで失礼するわ』
こんな生徒会、足早に退散させてもらうわ。
『会長、今日はどうするんだ?』
『ああ今日はもう解散だ』
『もう良いのか?』
『僕にも用事が出来たから』
『あの、哀抔さんですか......?』
『ええ、それでは行きましょうか』
今日も私はおじさんと二人きり。
恋愛なんかよりも遥かに有意義なことよ。
『哀抔さん、なにしてるの?』
愛住君!?何故ここに!?
『その人は誰?』
おじさんが申し訳なさそうにしながら帰っていく。
『つけていたの?だとしたら趣味が悪いわね』
『それはコッチのセリフだ、なにをしているんだ君は』
『私にはお金がいるの、それに今後生きていく上で必要なことも学べるのよ?』
『バカかキミは!?』
身が固まるような怒声が響き、私達二人に周囲の視線を向けられる。
『どういう人が来るのかわからないんだぞ!?恋愛をバカにしてやることがそれなのか!?』
私の行動にケチつけるなんて許せないわ。
『なにを言っているの貴方は、アレに恋愛の感情なんて絡んでないわよ』
『似たようなモノだろう!』
『呆れたわ、こんな考えの人が恋愛促進を掲げているなんてね』
『どこに行くんだ哀抔さん!』
『家に帰るのよ、貴方のせいで暇になっちゃったし』
『そっか帰るんだ、でもキミの家はそっちじゃないよ』
『なにを言っているの』
『今日からキミは僕と一緒に住んでもらう』
ホントになに言ってんのかしら......
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




