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月に照らす

 燦然(さんぜん)とした輝きが目映く光る。


新郎になるはずだった人から贈られたパーティーの招待状。


思えばどんな人が来る場なのか、といった部分に考えが回ってはいなかった。


アメリカ式ホームパーティーなワケもないけれど。


辺りを見渡せば、恰幅(かっぷく)の良さそうな紳士淑女が社交辞令を交えている。


どうも愛住(あいずみ)君の親の会社絡みの人達らしいわ。


彼ら彼女らは妙にきらびやかに映る。


着ている服の影響、それはないか、私だって今はそれなりのドレスを着ているはずなのだから。


紳士でも淑女でもなく、愛想にも乏しい私はこの場に浮いてしまっていないか心配だが、心配事はそれだけじゃなかった。


『やっ哀抔(あいなど)さん、楽しんでる?』


新郎だった人と愛住怜(あいずみれい)を引き連れた愛住(あいずみ)君を前に、私は忘れていた在り方を思い出す。


この場に浮くかどうか、関係無いわ。


私は私、どう言われようと崩さず、貫く。


『あらあらこの私を待たせるなんて随分偉くなったわね?』


『そんな感じだった?』


『茶化さないで頂戴』


『数日振りだね哀抔符夜雨(あいなどふよう)さん、迷惑じゃなかった?パーティーの誘いの方は』


『迷惑だなんてとんでもない、お誘い戴けるなんてありがたい限りですよ』


新郎になるはずだった人も負の感情を一切見せていない。


一生を約束した人を失ったというのに。


私はあなたのように強くはなれない。


『ねぇ兄さん、哀抔符夜雨(あいなどふよう)さんとはどこで知り合ったの?』


愛住怜(あいずみれい)が口を開く。


しなやかに伸びる金の髪は砂漠の砂のように美しく、蒼い瞳はサファイアとも引けをとらないほどに、怠慢など感じさせないほどにスレンダーな身体つき、それでいてお人形の如く整われた顔の造形。


天使的麗しさと妖精的神秘さが兼ね備えられたそれが純白のドレスを身に纏い目の前に存在している。


今自分のいる場所が現実なのかすら疑いかからせられる。


『えっ、どこでってそりゃあねぇ?』


狙撃されたところを助けてもらいました、なんて言えるワケもない。


『どこで知り合ったのか、異性間でそんなデリケートなお話、こんな人の多いところで言えるワケありませんわ』


『変に隠されると余計気になってしまうのですけど』


あざとくもふくれっ面を見せる天使か妖精に似たなにか。


その後もパーティーは続いている。


その場にいる者は皆屈託の無い笑顔を見せている。


愛住(あいずみ)君と出会わなければ、今ここには居なかったことでしょう。


パーティー用のドレスも、フレンチ料理も、触れる機会は無かったのでしょうね。


今の私は恵まれている、そのはず。


でも何故でしょう。


彼らと私とでは埋められない絶対的差があるように見えるのは。


私はここに居られて幸せだと思ってはいけない。


そう感じたら初恋の人が自殺したこの結末(ルート)があるべき結果であると私にとってふさわしい未来なのだと。


そんな残酷な答えを示すことになる気がして......


今宵も月は美しく暗い暗い夜に淡い光りを照らしている。


黒く暗い場所にあてがわれる白く明るい光り。


まるで私と愛住(あいずみ)君みたい。


『ここにいたのですね』


パーティー会場付近の外、森林地帯で一人黄昏(たそがれ)ていた私に一つの影が。


イヤ、影と評するには明るすぎた(それ)が忍び寄る。


『どうしたのですか、お一人で』


『少し落ち着かなくて、だから外の空気に当たっていたのよ』


『驚かせてしまいましたか?昨日のこと』


『ええ、妹がいる、だなんて聞かされていなかったから』


『それは申し訳ありませんでした、留学の方を急遽取り止めて参りましたので』


『そこまでするだけの用事があったのかしら』


哀抔符夜雨(あいなどふよう)さん、あなたのことは兄さんから聞かされていました』


もしや私が理由で......?


『私に会いに来てくれたのかな?』


なんて私が年上であると誇示せんばかりに。


『そうです』


あら大胆。


『兄さんに近づく女性はこれまでに何度も見てきたのですが、あなたは違うようですね』


まさか私達の出会いのきっかけを知っている......?


『迷惑ではありませんでしたか?』


『迷惑だなんてそんな、感謝してるわ愛住(あいずみ)君には』


なんせ命の恩人ですもの。


想いを馳せる中、強風が私に注意を引かせる。


気持ちの良いとは思えないほどの夜風に襲われ、私からこの場にいる気持ちを失せさせた。


『そろそろ戻りましょうか、二人共探しているかもしれないし』


愛住怜(あいずみれい)より前に出て室内に向かう。


知り合ったばかりなのに、凛とした姿勢を崩さない。


少しだけ、私の頬が緩む。


だってお兄さんとは全然似ていないんですもの。


好青年的雰囲気を帯びつつも、サディスティックな内面も持ち合わせる彼と、すぐそばにいる彼女は在り方が大分違って見えた。


同居人の親族だからと、私も感情が緩んでいる。


風がまた吹きすさぶ。


木々の揺れを感じる。


軽く驚き足を止める。


愛住怜(あいずみれい)に気をかけようと、話を振るつもりだったが......


一振。


可愛らしく思えた知人の妹が、私にナイフの凶刃を剥きあげる。

この物語はフィクションです。

犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。

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